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育む思い

巨大大陸を揺るがす一大イベントの準備が

着々と進められている。

神界でもこのイベントは話題に上っており、

天界と冥界の神による試合も

執り行われることになっているほどだ。


神々が顕現しやすい様にと、

競技場内には神殿も作られることになっている。


何でもありの総合の部の人気が異常に高く、

出ては行けない人達の名も見受けられる程だ。


ただし、同時開催で大陸一の美女を決めるコンテストが

開かれるため、どちらに出るか悩む美女たちもいる。


迷うことなく、総合の部に出ると即断した者の中に、

獣王ドゥルガー、魔族の女王カミュール、人族の女王フレイヤの

3種族の王がいる。

他にもセブンの知った名前が並んでいる。


人族の騎士団長テュール、龍人族の戦士長ベンゼル、

森人族の族長グラン、天翼族の戦士長ヤバル、

天界からトール、ロキ、スクルド、

冥界からハーデス、ルシファー、メフィスト、

名乗らない赤い龍人族の戦士も出るとのことだ。

ハーデスからはなぜ出ないのかね?と煽られそうになったが、

ギルド長の思惑を話すと、その力は頻繁には使ってくれるな、

と釘を刺されてしまった。


本来この世界にはない魔法なので

この世界のバランスを崩しかねないからだと

神妙な面持ちで言われると確かになと思うセブンであった。


ただ、この大会においては、冥界の神王の計らいで

競技場内のみを死なない異空間に変えてくれるそうだ。


卜伝さんからも誘われていたこともあって、

出ようかなと思い始めたセブンであった。



パティシエの街の拠点に戻り、サラにそのことを話すと

怒られてしまった。


 「セブン、あなたは美女コンテストの

  重要な審査員になるのだわ。

  何のために・・・いいえ、少しは女性の中身を

  見る力をつけるべきなのだわ。

  

  そうそう、当日は審査委員長として顕現される

  アフロディーテ様のお相手をしっかりお願いね。

  神力が使える貴方なら問題がないはずなのだわ。」


 「あーその神託の件すっかり忘れてたよ、そうだった。

  残念だけど、次回の大会に向けて精進しますかね。


  そういや、サラとパイロ以外は

  この街から誰が出るんだ?」


 「意外にもブリュンヒルドさんとカーラも出るのだわ。

  それとファーラさんとカイも出るそうよ。

  シヴァ様は審査員をされる予定だったのだけれど、

  エレシュキガル様とウルズ様が神界から参加されるので

  急遽参加になったのだわ。


  あら、エレシュキガル様には反応するのね、やっぱり。」


 「ち、違うよ、それ気のせいだから。

  前にあんなことあったから気まずいだけだから。」


 「人の奥様にあんなことをするのは許されないことなのだわ。

  思い出す度にまたお説教したくなるのだけれど。


  隙が多いのが問題なのだわ。


  あら、また緊急討伐の要請が入ったのだわ。

  北のダンジョン近くで大型のサンドワームが暴れているそうよ。

  地上に出ているようだから、周りの安全を確保して電磁砲を

  使うことをお勧めするわ。」


 「了解、じゃ、ちょっと行ってくるよ。」


 「・・・待って。これはおまじないよ。」


そう言うとサラはセブンの額にキスをした。


 「また子供扱いかよ。

  これでも普通に生きてたら

  300歳超えてるおじいさんなんですけど。

  いつまで経っても小さい弟扱いのままって。」


 「これはもう変わりようがない事実なのだわ。

  永久にセブンは私の可愛い弟なのだわ。

  無事に帰って来てくれることを願う姉の立ち位置も

  永久なのだわ。

  無茶はしないでね、セブン。」


 「はいはい、行ってきますよ、お姉さま。」


そう言うとセブンはフライングユニットを装着し、垂直上昇し

北のダンジョンを目指して飛び去っていった。


見送るサラの頬は少し赤らんでいた。



白い靄の中で唸る声がした。


 「うーん、まどろっこしいなぁ、もう。

  サラも押し倒しちゃえばいいのに。」


 「女神の発言とは思えなくてよ、スクルド。

  純粋な姉と弟の思いを

  ゆっくりと育んでゆくのをそっと見守るのが

  一番いいのよ。


  あの二人にはこの世界で

  人ではないけれど、人らしく生きてほしいと

  心の底から願うのだわ。


  前の世界では、私達の選択ミスで

  あの子達の運命の歯車が狂ってしまったのだから。


  いいことスクルド、手を出したくなっても

  見守り続けることが私たちの果たす責務なのだわ。」


 「わかってるよ、お姉さま。

  でも、もっと幸せになってほしいんだけど。

  急いじゃダメってことなのかな?」


 「そうよ、思いはゆっくり熟成することもあるのよ。

  だから、今はじっと見守ってあげましょう。」


白い靄の中から暖かな光が地上に注がれているような気がした。

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