傀儡に非らず
巨大大陸の北部に広がる砂漠地帯に突如現れた
ピラミッドは跡形もなく破壊され、
ナノマシーンで体を構築されている
黒い戦士達も異界の闇に飲み込まれ、
彼らを統べていたクフ王とホルス神の使徒も
氷像と化してしまっていた。
彼らによる異界からの侵攻もこれで終焉かと思われたが、
ホルス神の使徒達の目に怪しい光が灯ると、
氷は一瞬で霧と化した。
『『よくも我らが悲願の邪魔をしてくれたな。
我が身を媒体に四方陣を再生してくれる!』』
そう言って使徒の一体が闇に飲まれた時、
クフ王が輿から飛び降り、卜伝に向けて歩き出した。
『『何処へ行く!?クフ王よ!!
そなたはここにいるのだ!戻れ!』』
「もはや従えぬな、御使い様方。
余はこの戦士と雌雄を決したいのだ。
余は御使い様の傀儡ではない。
王としてのあるべき姿、力を見せずして
王に非らず。
戦士よ、余の力思い知るがいい!!」
そう言い放つが早いか、クフ王は
ホルス神の加護の力か、卜伝に勝るとも劣らぬ速さで
接近し、半月刀を振り抜いた。
そのクフ王に向けて卜伝も加速をかけ、
下段の構えから掬い上げるように振り上げ、
瞬時に振り戻した。
二人の戦士は交錯し、互いに振り向き様に
切り掛かった。
ドッ!
クフ王は振り向き様に半月刀を横振りし
卜伝を切り裂く剣筋を放ったが、その位置に卜伝はおらず、
下腹から背中を刀で貫かれた。
卜伝は身をかがめ、左手一本で持った神刀を突き上げたのだ。
半月刀は右手にもった小太刀で受け止めていた。
卜伝は身を返す動きと共に左手に持った神刀を横に振り抜き、
クフ王の心臓を切り裂いた。
「見事である。」
ニヤリと笑みを浮かべながら、そう言い残して
クフ王は倒れていった。
『『役立たずめ、もう一度復活の陣を回すのだ。』』
「無粋な。
名誉ある戦士の決闘を汚すつもりか。
ホルス神の使徒とは思えぬな。」
そうメフィストは言い捨てると、クフ王の遺骸を見つめた。
クフ王の遺骸の周りに深い闇の渦が起こり、
遺骸はスッと沈むように落ちていった。
『『貴様!何をするか!!』』
「どれ、お主らもこれで眠りにつくが良い。」
卜伝は神気を最大限まで高め、光の刃を放った。
頭の部分を消し飛ばされた二体の使徒は
その場にさらさらと砂となって崩れ落ちていった。
「復活など許せぬな。
闇に溶けるがいい。」
使徒達だった砂の山の下に闇が渦を巻き、
飲み込んでいった。
「ふむ、どうやら、これで終いのようじゃな。
助力の方感謝致す。」
「いえいえ、こちらも素晴らしい戦いぶりを
堪能させて頂き、良い勉強となりました。」
「あのーメフィスト殿。
使役されておられる戦士達はどうされますか?」
「王都の警護担当として
役に立つと思うのだが、
如何だろうか?」
「いや、どうなんでしょう。
というか、自分には
採用権とかないので、
戻って聞いてみましょう。」
その場を後にする前に、卜伝とメフィストは
ほぼ同時に空の高みを一度見上げた。
メフィストとシャルマンは影転移の魔法で
魔族の王都に戻るそうだ。
卜伝はヴァーレン達の村に立ち寄ってから
王都に向かうことを話すと、
シャルマンから女王から面会の要望が
あると思うので、その時は
声をかけさせてもらいますとのことだった。
卜伝は堅苦しいのは苦手なんじゃがな
と言って高笑いしながら歩き去っていった。
「やるなぁ、あの二人。
この高さにいる俺に気がついてたよ。
さ、戻ろうか、クロ。」
青空に溶け込んだスカイブルーの機体から
そんな声が溢れた。
「・・・・・・・・・・!!」
冥界の深部で血管を浮かべたあの方が
またもや激怒されていたそうです。
異界からの得体の知れない戦士達が
無数に送り込まれて来たとか何とかで。
その前で額を押さえるハーデスの姿が
あったそうです。




