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プライド

影人のシャルマンは焦っていた。

異界からの渡り人だというメフィストと共に

移動しているだけで、何もやることがないのだ。

途中で迫りつつあった砂嵐を外らせる

影の壁を建てた以降は

一緒にいるだけの存在となっていた。


 (何て魔力だ。

  砂の中に潜んでいる相手まで

  見つけ出して使役している。

  索敵能力も高いな。

これだとここにいる意味ないな。

  何かやることないかな。)

  

この世界の地理にも疎いメフィストからすれば

この砂漠まで影転移で連れて来てくれただけで

十分なのかもしれないが、

シャルマンも魔族の戦士として戦いたいという

思いは強く持っている。


索敵だけでも広範囲に広げて

ここを抜けていくものがいないように

魔力の網を広げることにしたシャルマンであった。




 「忌々しい戦士だ。

  余の覇道を横槍を入れるどころか、

  一旦下がらされてしまうとは。


  正面から打ち滅ぼしたいところではあるが

  ホルス神の御使い様方の意思だ。


  異論はないが、

  王である前に戦士でもあるのだ。

  戦わずして勝利はない。

  この手で勝ち取りたいと願わずにおれようか。」


二体のホルス神の御使いが放つ権能の力で

迫りくる戦士に、絶え間なく黒い戦士達が

襲い掛かり続けている。

そこに加わりたいと手にする半月刀が

ぎりっと音を立てるほど力を籠める

クフ王であった。




 (もっと早く!もっと神気を込めて斬る!

  もっとだ!まだ足りておらん!

  あの輿に乗っておる者たちは強い。

  これでは届かぬ。もっとだ!)


神刀に神気を込めて振るい続ける卜伝は、

この息をつく間もない戦闘の中にあっても、

さらなる鍛錬の場としているようだ。


この剣士、卜伝は、前の世界で

神への祈りが届いたのかわからないが、

気が付くと森の中に立っていたのだ。


さらなる剣の高みを目指せる世界に

来れただけでなく、全力で戦えた頃の

若い体に戻っていた。


祈りを捧げた神にさらなる感謝を捧げつつ、

即座に周りの魔物との戦闘を開始した卜伝は、

途中助けた冒険者たちからの勧めのまま

ギルドに赴き、この世界で生きる術を得ていた。


この森の中に、まだまだ強敵はいるとは思えたが、

平原の魔物や山の方にいる魔物、砂漠にいる魔物の

話をギルドで耳にするたびに

戦わずにおれなくなっていた。


獣人族の戦士達との模擬戦では

空中で身を翻す身体能力に目を見張り、

自ら習得するまで鍛錬していた。


本人の気が付かぬところで風魔法の類を

使えるようになっていたようだ。


魔力の高い魔族との模擬戦では、はじめのうち

気配を全く読めないことがほとんどで

冷や汗を流し続け、辛勝したものの

己の未熟さを思い知らされたのだ。


この苦い経験から

森の中での索敵能力をあげる鍛錬も行い

迷うことなく世界樹の森の中を

歩き回れるようになっていったのだ。


そう、今の卜伝は、この世界にあっても

自己鍛錬を継続してきた努力の積み上げで

様々な能力を身につけてきたのだ。


激闘を続ける卜伝は

この戦闘の中でさらなる風魔法系の

能力アップを身につけ、

より早く移動することが

出来るようになっていた。


にもかかわらず、まだ早く、強くなりたいようだ。

彼の剣士としてのプライドが立ち止まることを

満足することを許さないのだろう。




 (あの剣士は人族のはずだが、

  今の移動速度は人の域を越えている。

  あの魔族の女王が見込んでいた通りか。


  非常に興味深い。

  ただの人の身でありながら、

  あのような魔族と対等以上に

  戦える力を身につけるとは。


  この影人の転移距離も素晴らしい。

  この世界、存外奥深いものがある。


  まずは、湧き出でるホルス神の戦士だが、

  私の力でどれだけ使役化できるか

  限界まで挑むというのも愚策だ。


  ふむ、ここではない闇に

  送ってみるとしよう。)



それは不思議な光景であった。

黒い戦士達が湧き出る黒い靄の外を

取り囲むように吸い込まれそうな濃さの

闇が広がり、飲み込み始めていた。


 (うむ、これを正解としよう。

  後は単純な繰り返しとなる。

  あの兜を被った戦士に並列術式の

  行使を組み込んで専任させよう。

  

  よし、これでここから離脱できる。

  さて、ホルス神の使徒がいたな。

  どれほどの手のものか、

  観察させていただこう。)


メフィストは先の方で砂塵を立てながら

後退して行く金色の輿を見やると

何かの力を使っているのか、

目を細めるのであった。




 『『我らが四方陣にさえ戻れば、

  新たな魔神を呼び寄せられる。


  それでこの世界は我らが主のものとなろう。

  それまではこの依代を持たさねばならぬ。

  我らが悲願何としてもこの世界で成すのだ。』』


黒い犬のようなホルス神の御使いとも使徒とも

呼ばれる二体の存在は、どうやら彼らの主の命を受け

クフ王を守っているようだ。

思考も同調した存在なのかリンクしているようだ。


その時、進行方向から凄まじい勢いの砂嵐が

地表を舐めるようにして襲い掛かってきた。


とっさに魔法陣を張って防御したのだが、

彼らには腑に落ちない事があった。


進行方向には何者の気配もなかったはずなのである。

嫌な予感が二体の頭をよぎった。




砂嵐が去った後、進行方向の先に巨大な穴が開いていた。

ちょうどピラミッドがあったあたりだ。



 「ヤベっ、地下は空洞があったのか。

  大穴開けちゃったよ、冷凍弾で凍らせて

  応急処置とするかな。


  クロ、横のミサイル打つから耳を塞いで。


  いいかな?

  地表すれすれの高度5mで自動起爆セット。

   冷凍弾 発射!」


青空になじむスカイブルーのフライングユニットから

数十mの範囲を氷漬けにする冷凍弾が発射された。


先ほどの超重量弾の時と同じく地表に落ちて行くミサイルを

興味深そうにクロの目が追っている。


 「クロ、注意しないと閃光で目がチカチカするよ。

  もう後ちょっとで炸裂するよ。」




 『『何だこれは!我らの四方陣が、ピラミッドが

  跡形もないではないか!

  あの大穴の下に落ちたとでもいうのか。


  ええい、このまま進んでゆくまでだ!』』




 「あ、セブン!

  何か金色の板みたいなのが近づいてるよ!」


 「あー、もう無理。間に合わん。

  誰か知らんけど、許せよ〜。

  後で完全回復でなかったことにして貰うかな。」


そんな気楽な感じで返答したセブンですが、

普通冷凍されたら死んじゃうと思います。

完全蘇生が必要になるでしょうね。


ボーーンッ!!


という炸裂音と共に金色の輿ごと氷漬けになったそうです。

ホルス神の使徒とクフ王の氷像が

このようにして完成したのでした。。。



卜伝さんは手にした剣をどうした物やらと困った顔をして佇み、

その後ろの方では、これはこれで歴史的な価値があるなという

鑑定士のような顔で値付けをする目で見つめる

メフィストがいたそうです。

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