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古代エジプト軍 VS 剣豪

世界樹の森を卜伝に先導してもらいながら、

ベアトリスとヴァーレンは無事に森の外に出られた。

その足でギルドに依頼達成の手続きに向かった。


ギルドの大きな扉を押し開けて、中に入ると

昼を過ぎていることもあって、横にある食堂には人影がなく、

受付カウンターにもどうしたことか人影がなかった。


 「あら、ベアトリスさん、ヴァーレンさん、

  一晩しかたってないのに、もう採取出来たのかしら?」


 「うん、ちょっと色々あったんだけど、

  なんとか持って帰って来たよ。」


 「はい〜、森の中で男性メンバーに襲われかけました〜

  でも、こちらの卜伝さんに助けてもらいました〜

  森の中からすぐに出てこれたのも

  卜伝さんのおかげです〜。」


 「あら、ほんとだわ。

  お久しぶりです、卜伝さん。

  お元気にしておられましたか?

  この子達を助けて頂いたそうで、

  ありがとうございました。」


人当たりの良い笑顔が似合う森人族の受付嬢が

軽く会釈をしながら礼を述べていた。


 「いや何の何の、軽い準備運動のようなもんじゃよ。

  そうじゃ、ここへ寄ったついでと言っては何だが、

  魔物の肉やら魔石やらを買い取ってくれんか?」


 「はい、喜んで買い取らせていただきます。

  卜伝さんの討伐された魔物の肉だと、裏手の

  解体作業場の方がいいと思いますので、

  そちらに回っていただけますか?」


 「ああ、かまわんよ。

  じゃあ、お嬢さん方ちょっと失礼するよ。」


そう言うと卜伝はカウンター横の通路から

裏手の解体作業場へ足を運んで行った。


 「はい、確かに。

  これで依頼達成ね。

  じゃあ、いつも通り

  ギルドプレートに入金でいいのね?


  そうそう、あなた達、あの卜伝さんと

  森の中で会えたなんて運がいいわね。


  あの人、剣の腕前もだけど、

  世界樹の森の中の道先案内人としても

  一流なのよ。」


 「でしょうね。

  あの硬い世界樹の木を一振りで両断してたし。」


 「森に入った時より出てくる方が早かったです〜。

  ところで、他の方は何処にいかれたんでしょう〜」


 「あー、海辺の方で大きな魔物が出たから、

  緊急クエストで出払ってるのよ。


  しばらく採取依頼も出なくなるわ。」


 「そうですか〜、依頼がないと厳しいです〜。

  私達の村から近い北部のギルドに戻ってみます〜」


 「そうね、ここはしばらく討伐依頼だけになっちゃうから、

  その方がいいと思うわ。

  北部のギルドに依頼の取り置き頼んでおいてあげようか?」


 「お願いします〜。」


そんな会話をしている間に、卜伝の方の用事も済んだようで、

裏手の方から戻ってくる姿があった。


 「お嬢さん方、北部のギルドに行くと聞こえたが?

  ついていっても良いかの?

  神龍様のお山の近くの魔族の国に行ってみたいんじゃ。」


 「こちらから頼みたいくらいでした〜。

  よろしくお願いします〜。」


 「うん、お願いします。

  あたしたちの村は魔族の国に一番近いところにあるんだ。

  北部のギルドからだと、途中で寄っていけるところにあるよ。

  村には酒蔵があって出来立てを飲ませてもらえるよ。

  是非、村まで来て欲しかったから、ちょうどいいかも。」


 「うむ、正に渡りに船というところじゃな。

  前は急げじゃ、早速行こうか。」


受付嬢に挨拶をしてギルドを後にし、

3人は北部を目指して移動し始めた。


 「おや、お嬢さん方どっちにいかれておる?

  メトロの駅は向こうじゃろう?」


 「メトロは高いので乗れないです〜」


 「あたいたち村の家に仕送りがいるから

  節約しないといけないんだ。

  格安の乗り合い馬車で帰るんだ。」


 「それなら心配無用じゃ。

  森から出る道中で狩った魔物を売った金がある。

  3人でパーティを組んでおったのじゃから、

  この金は3人で分けるものじゃ。


  ほれ、これがお嬢さん方の取り分じゃ。

  メトロ代はわしに出させてくれんか。

  使い道がないんじゃ。

  いつもは孤児院に寄付するしかないのでな。


  今回はお嬢さん方と楽しい旅行じゃ。

  これもいい使い道じゃな。」


 「こんなに貰えません〜

  多過ぎます〜。」


 「そうだよ、金貨って久しぶりに触ったよ。

  貰い過ぎの上にメトロ代までなんて

  厚かましすぎるよ。」 


 「何の何の、気にすることではない。

  可愛いお嬢さん方に囲まれて

  楽しい旅ができるんじゃ。

  迷惑料みたいなもんじゃと思うてくれ。


  さっ、急いで参ろう。」


清々しい笑顔でそう言い放った卜伝に連れられて

メトロ駅へ向かうのであった。  

  



磁鉄鉱の砂漠の中を黒い軍団が、

4分割された綺麗な正方形の陣形で

西に向けて移動していた。


その黒い軍団はよく見ると、

細長い顔の犬人族の戦士のようだ。

冬が近づいてきているとはいえ、

まだ日中は気温が高い砂漠の中で

真っ黒の服装で汗の一つもかかずに行進していた。


この黒い軍団は、ここに至るまでに

オアシスを取り囲むように発展していた街を

一つ殲滅している。


かなりの激戦であったはずだが、

陣形に歪なところがないことから見ると

兵の消耗はなかったのかもしれない。


この黒い犬人族らしき戦士達をよく見ると、

皮膚の表面が蠢いているようだ。

高倍率の電子顕微鏡があれば、その蠢いているもの全てが

黒い甲虫型のナノマシーンであることが分かったかもしれない。


 「クフ王陛下、砂嵐が迫ってきております。

  この辺りで結界を張り、やり過ごしたいと考えます。」


一人だけ兜を被った戦士がそう進言をした。


クフ王と呼ばれた、がっしりとした体格の浅黒い肌の男は

金色の輿に乗り、両脇に耳の長い黒い犬を従えている。


 「良かろう、このまま野営の用意を始めよ。

  今日の進軍はここまでとする。」


 「御意。」


輿を運んでいるのは体高3m近い大きさの

ライオンに似た魔物のようだ。

額に宝石のようなものがついており、

目が三つあるように見える。


戦士団は一つの大きな円の陣形にかわり、

何やら呪文のようなものを唱え始めた。

空中に紋様が浮かび上がり、

やがてそれらが立体的に蠢き始めると

強い光のドームが完成した。

すると、磁鉄鉱の砂が生きているかのように

ドームを登り始め、みるみるうちに覆い尽くしてしまった。

この砂のドームの中で野営をするようだ。


この様子を千里眼の魔法で観察するものがいたようだ。


 「どこの部族かは知らぬが、変わった魔法を使う奴らだ。

  総勢4万の軍勢か。急ぎ、報告に向かわねば。」


声はするが姿は見えない。いや、よく見ると

砂漠の上を滑るように移動する影があった。

魔族の中でも斥候に適した影人のようだ。


突然その影に黒い槍が突き立った。

数キロ先にいたはずの黒い犬人族の戦士が

砂の中から現れ、攻撃を加えてきたようだ。


黒い槍は影の足の部分に突き立っていた。


 「グッ、・・・うわー!!」


我慢強さにも定評のある影人の口から

悲鳴が溢れてきた。


見ると、黒い槍が影の足の部分に溶けるように

入り始めていた。


侵食される恐怖より自害を選ぼうとした時、

何か光のようなものが横切っていった気がした。


その瞬間、槍が消え去り、侵食が止まっていた。


横を見ると、先ほど砂の中から現れた

黒い犬人族の戦士がボロボロと黒い砂になって

崩れ落ち始めていた。


駆け寄ってくる女性がいた。


 「大丈夫?影人の戦士さん。

  あ、あたいはこの先の村のヴァーレンっていう

  冒険者なんだ。


  怪我してるんなら、魔族用のポーションあるけど。」


 「ヴァーレン?そうか、酒蔵のボルドーの娘か。

  助かったぜ、ポーションあるなら分けてもらえると

  有難い。


  それよりあの槍と黒い犬人族の戦士を倒してくれて

  ありがとう。ほんと、助かったよ。」


 「あ、それはあたいじゃないんだ。

  こちらの剣士、卜伝さんなんだ。」


 「これは失礼、ご助力ありがとうございました。」


男らしき影人が礼を言うと、

大小二振りの剣を腰にさした男が

遠くを見据えたまま頷いていた。


 「いや何、お嬢さん方の村までお邪魔する道中でな。

  不思議な気配がしたので駆けつけた次第じゃ。 


  あそこにおるのがさっきの連中か。

  かなりの大軍じゃな。


  ろくでもなさそうな気配じゃな。

  どれ、お前さんの礼をしておくか。

  届くかな。いや、届かせてみせる。」


卜伝はそう言うと、遥か先の方角を見据え、

腰を少し落とし、抜刀する気合いを高め始めた。


周りの空気が冷えてゆく。

いや、動けばキレそうな空気が辺りを占め始めていた。


 「むんっ!」


と掛け声がしたかと思うと一瞬光が走ったかのように見えた。

しばらくすると空気を切る音が遅れて聞こえてきた。


影人の男は慌てて千里眼の魔法を使い、

先ほどの砂のドームを見てみた。


砂のドームの上半分がきれいに切り取られ、

黒い靄が立ち上っていた。


 「すごい!なんて技だ、聞いたことも見たこともない。

  それとも、その剣が魔剣か何かなのですか?」


 「いやいや、それほどでもない。

  空間を切ったまでじゃ。


  この剣は我が家の家宝の剣じゃよ。

  魔剣とは違うと思うのじゃ。

  自信はないがの。」


そう言って軽く笑う男に畏怖の念を覚えるのであった。  


 「お嬢さん方、村の方に急ぎ戻るのじゃ。

  ここは戦が始まる。

  逃げられるものは逃げるよう伝えてくれ。」


 「えっ?卜伝さんはどうするの?」


 「危ないです〜、相手は軍団なのでしょう〜?

  一緒に村で防衛戦の用意をしましょう〜。」


 「わしはここで迎え撃つ。

  防衛戦か、そうじゃな、わしのやり方なら、

  あえて攻め込んで守る。と言うところかの。


  これでも今まで無敗を誇っておる。

  負けるつもりは毛頭ない。


  行くのじゃ、お嬢さん方。」


卜伝の目に強い光を見たヴァーレン達は急ぎ足で

村を目指すのだった。

影人の男も魔族の国の方へ移動していった。


 「先ほどの手応えは機械仕掛けじゃな。

  面妖な奴らよな。

  まあ、この世界にはどこを見ても

  面妖なものしかおらぬようだがな。


  飽きぬな、この世界。

  さて、久々の戦じゃ。

  我が命この剣に乗せて戦うまでじゃ。」


黒い軍勢が凄まじい勢いで迫ってきていた。

4万の大軍を前に怯むことなく、笑みを浮かべた剣士は

大声で名乗りを上げて、迫る軍勢に向け駆け出した。


 「塚原卜伝、参るっ!!!」

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