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女神達の戦争

綺麗な月が輝くパティシエの街には

秋の夜の帳がすっかり下りていた。


そんな風流な雰囲気を台無しにするような喧騒が

あろうことか厳かであるべき神殿内を満たしていた。


 (いや、満たすとか満たさないの話じゃないだろ、

  これ。

  どうなってんだ、これ。


  エレシュキガル奥様に腕を握り締められてなかったら

  とっくにステルスモードで逃げてる状態なんだけど。


  どっちか選べとか、シャレにならないんだけど。


  いいよな、ハーデス。

  じっくり酒の飲み比べしてやがる。。


  ・・・そっか。)


ほんの一瞬だが、悪い笑みを浮かべたセブンが

旨そうにカクテルの風味を味わっているハーデスに

話しかけた。


 「俺だけの基準で選ぶのがもったいないと思うんだけど。

  ハーデス的にはどっちが好みなのかな?」


ギョッとした顔でセブンの方に向き直り、

お前、巻き込みやがったな!後で覚えてろよ!

と言う言葉を目から放ちながら、

ハーデスが優雅にグラスをカウンターに置くと

甘い香りを漂わせた口を開いた。


 「ふむ、それはこの場にいる全ての女性とも比べてどうか?

  と言う意味合いで良いのだろうか?」


強烈な爆弾を吐きやがりました。

神殿の中に静寂が戻り、エレシュキガルが咳払いをして

場を進めよう口を開いた。


 「それはいい案なのだわ。

  でも、それは悪手なのだわ。

  この冥界の美の化身とまで言われる私と比べるのは

  間違いなのだから。

  比べるまでもないでしょう、セブン?」


恐ろしい圧を放ちながら、美女のトップの座に座らずに、

片足を乗せて君臨しそうな女帝が現れた。


 「何を惚けたことを言うのかえ?

  美しさとは内面から醸し出される溢れるばかりの

  慈悲の心の持ちようで決まるものぞえ。

  私以上に内面の美しきものはおらぬ。」


 「いや、それは違うな。

  美とは強さ。

  どんな状況であろうとも決して折れぬことのなき

  強き体と精神が女の美しさを際立たせるのじゃ。

  バルキュリヤ最強の私こそが最強の美の化身なのじゃ。」


 「随分と楽しそうな話になってるわね。

  バルキュリヤ最強はこの私スクルドでしょ?

  となれば、私が一番ね。みんなオッケー?」


 「「「「ありえない(ねぇー)(のだわ)(のじゃ)」」」」


急に現れたスクルドに向かって全員が反論を始め、

より一層収拾がつかなくなってきた。


 「なんの騒ぎだ?」


寝ぼけ眼のネルガルがそうハーデスに問いかけた。

事情を話すとなんだそんなことかと呟くと、


 「なら、美女コンテストとやらをやれば良いではないのか?」


ピタッと喧騒が収まり、全員の目がネルガルを射抜いていた。


 「あら、さすがあなたね、いいこと言うのだわ。

  早速この場にいる女性の美を競うコンテストを開くのだわ。

  異論はあるかしら?自身のない方は辞退されてよろしくてよ。」


 (やばいよ、これ!最初よりはるかにやばいよ!)

 「どうすんだ、ハーデス!

  お前が爆弾ぶちまけたんだろうが。(小声)」


 「いや、大丈夫だ、セブン。

  ここに神すら酔わせる極上の神酒がある。

  これの飲み比べで皆に沈黙してもらおう。(小声)」


 「潰すのかよ、お前悪い奴だな。いいな、その手に乗った、(小声)」



気合を入れて悪巧みを提案しようとセブンが席を立った時、

神殿の奥から光がこぼれ出してきた。


 「あらあら、今夜は神界の門が開きっぱなしになるのかしら。

  スクルド、ちょ~っとこっちにいらっしゃい。」


怖い笑顔を浮かべたウルズがスクルドに向かって手招きしていた。


 「おお、初めてお目にかかる運命の女神ウルズ。

  冥界神のネルガルだ。こことは違う世界の冥界の神だ。

  今度ともよろしく。」


酔っ払いのおっさんと化したネルガルが色白の女神、ウルズの手をとって

挨拶し始めた。


 「あなた!何を鼻の下を伸ばしているのかしら!!

  そんな病弱そうな女に色目を使うなんて

  目が見えていないのかしら?」


 「なんですって?

  あら、土の下から参られた冥界の門番のエレシュキガルさんね?

  顔の土を落としてからこられた方がよろしくてよ。」


 (ダメだ!女神戦争が始まっている!

  もう口だけの攻撃で互いのHPを削り始めてる。

  これ、巻き込まれて死ぬパターンだな。)


 「セブン、ここは事態の収拾を優先するのだわ。」


 「そうだよ、ここはあたいと一緒になるからって宣言してくれたら

  丸く収まるっしょ。」


 「何を言っているのかしら、さっきから言うように

  セブンにそんな甲斐性はないのだわ。

  ずっと私が面倒を見るのだわ。」


 「それ、独り占めっしょ!分けてよ!」


 「ものじゃありません!分けるとかありえないのだわ。」


事態がさらにややこしくグダグダになりそうになってきた。

そこへさらに神殿の奥から顕現してくるものがいた。


 「はいはい、美の比べ合いなら、

  このアフロディーテが審判を務めますわ。


  そうですね、公正にくじ引きで一対一の

  比べ合いのトーナメント方式で競いませんこと?」


見るものを蕩けさせるような美しい笑顔と

心に染み通るような涼やかな声音が刺々しくなっていた

皆の精神を落ち着かせたのだった。


 「「「美しい!!」」」


思わず、セブン、ハーデス、ネルガルもそう口にした。

その一言で我に返った女性陣は敗北感も覚えたのであった。


 「さて、神界のお仕事がまだ残っていたのだわ。

  スクルド、戻るわよ。

  エレシュキガル神、ご機嫌よう。」


 「そうね、私たちもそろそろお暇するのだわ。

  ウルズ神、ご機嫌よう。

  ネルガル、ハーデス戻りましょうか。」


美のファイナルウェポンの登場で大炎上していた場が

完全消火され、神々が神殿奥に消えていくと、

シヴァやサラ達は魂が抜けたような感覚で脱力してしまった。


 「あらあら、皆様どうされたのかしら?

  楽しそうな催しだと思ったのだけれど、

  残念なのだわ。

  また開く時が来たら、声をかけてくれると嬉しいわ。

  では、私も戻りますね。皆様ご機嫌よう。」


最後まで美しさを纏いながら美の女神も戻っていくのだった。


 「さて、一から女を磨くことにするわ。」

 

 「あたいもそうする。」


 「うむ、もっと鍛えねばあの女神の足元にも及ばぬな。」


 「私も内面の美に磨きをかけるとするかえ。」


皆それぞれ研鑽の気持ちを新たにするのを耳にして、

にっこりと笑顔を浮かべたカイの横顔が

少し眩しく見えたセブンであった。

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