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天高く女神肥ゆる秋?

巨大大陸は緩やかに季節が移り行き、

森の木々の中には赤く染まるものが出始めていた。


その日、パティシエの街は血のように

赤い夕焼けに包み込まれていた。


薄紅色の神殿は何やら賑やかなことになっているようだ。


 「うむ、このきな粉を絡めた団子とやらも

  美味であるぞえ。」


 「この砂糖と醤油を絡めたのも

  絶妙だな。」


 「カーラは蓮のおすすめの餡子たっぷりの

  団子がお勧めなのです。」


 「そうよね、お団子といったら餡子だわ。

  それに餡子のお団子は今夜のお月見の

  定番だからね。」


 「今日は趣向を変えて、抹茶をたてております。

  流派は存じませんが、身なりもありますが、

  このようにテーブルでいただくような作法で

  問題ないのでしょうか?」


 「あら、カイはお茶のことを知っているのね?

  私の習っていたのは、日本だけでなく海外でも

  気楽に頂けるように作法が緩くなっている、

  不白流だったから、気楽にいただけばいいものって

  習った記憶があるのだけど。

  まぁ、いいんじゃないかな、ここは異世界だから。」

  

そうは言ってもすごい違和感のある絵面である。


神々しい神殿の入り口に、場違いなテーブルと椅子のセットが

置かれて、神官の女性陣も含めて、シヴァ神、

ブリュンヒルド、カーラ、パイロ、カイ、蓮が

ワイワイと話し込んでいる。


テーブルの上には、パイロと蓮が作った団子が

到底食べきれそうにないほどの山積みになっており、

メイド服のカイが魔法具の薬缶で沸かせたお湯で

抹茶をたてるというどこの世界か分からない様相だ。


発端は、昨晩の月が綺麗であったことに始まる。

蓮がこのくらいの季節だとお月見団子が食べたいと

話したことから、ならば神殿の催し物にしようと

なって、こうなったようだ。


午後から始めたお月見の催しは、

テーブルの周りに街の子供達が集まり、

シヴァとパイロからお月見団子を貰って

笑顔の花が咲いていた。

二人は街の守り神様として子供達から崇められている。


夕刻になると子供たちも家路につき、

空は不安になる程赤く染まっていった。


そんな赤い夕焼けの向こうから歩み寄るものがいた。


 「あの〜、急にお邪魔してごめんなさい。

  お月見団子を分けて頂けないでしょうか〜?」


 「そうじゃないわ、ヘル。

  ここは女神へのお供えとして

  分けてよねって頼むところよ。」


どうやって来たのかよくわからないが、

二人は神界にいるはずのヘルとスクルドのようであった。


 「あ、スクルド様?ヘル様もご一緒なのですか?

  どうやって下界に顕現されたのですか?


  お団子はまだまだありますので、

  器に入れてお持ちしますね。

  カイさん、頼めるかしら?」


 「あーここで頂くから移さなくいいよー。


  ここにはっていうか、今日はお彼岸だから

  向こうから繋がりやすい日だって

  ヘルに教えてもらったんだよね。


  しかも、夕焼けに染まると門が開くから

  出入り自由になるんだって。

  

  みんなが美味しそうなことしてたから、

  ヘルと一緒に門から来たんだよ。」


 「え!?門って、あの世の門?

  出入り自由はやばいっしょ?」


 「その点は大丈夫です。

  門番にヘルハウンドを待たせていますので〜」


そこからは綺麗な満月が昇るまで

女子会が続いたのだそうです。


 「・・・あの、スクルド様?

  あれからもう一週間くらいになりますけど

  ここにいらっしゃってよろしいのですか?」


ヘルは翌日の夕刻、ロキ達へのお土産も持たせて貰って

厳つい顔をしていたが、団子の匂いで尻尾を

千切れそうなくらい振っていたヘルハウンドを連れ立って

門の向こうへ帰っていた。


 「だぁーって、スイーツが美味しすぎるんだもん。

  帰る気になんないよー。」


食事らしい食事をとらずにひたすらパイロのスイーツを

バイキング方式で食べるまくる姿は誰の目にも女神に見えない。


 「あー、これ言っていいのかな。

  スクルド様、ちょっとカロリー取り過ぎっしょ。

  お腹のとことかヤバくない?」


 「ヴッ!

  こ、これは少しむくんでるだけだから、

  気にするレベルじゃないから。」


 「おお、そうじゃ、スクルド様。

  ここはその腹の解消も兼ねて、カーラも交えて

  訓練をしましょう!!」


 「え“っ!

  あー、神界に用事を思い出したのだわ。

  ちょっと戻って来るねー」


というが早いか、ブリュンヒルドの横を通り抜けて

神殿の奥の女神像のあたりへ駆け込むと、

光の粒子になって消えて行ったのであった。

 

 「さすがスクルド様、いい動きをしておられる。

  よし!カーラ、訓練の時間じゃ。」


 「えー、師匠、まだ私焼き鳥焼いてるんですけど。」


 「食べ過ぎじゃ!そんなに鶏肉ばかり食うと、

  しまいに羽が生えてしまうぞ!」


 「いや、そんな人見たことないっしょ。

  って、二人とも元から羽あるじゃん。


  ・・・共食い?」


 「我らは鳥ではない!

  ・・・いや、面白いな。

  よし!カーラ、良い訓練方法を思いついたのじゃ。

  すぐに神殿裏に集合じゃ!」


 「あーー私の炭火焼き鳥が泣いているのです。」


少しお腹周りが育った感のあるカーラは

それからみっちりしごかれたのだそうです。


ちなみに、白い靄の中で正座させられて

しっかりとお話をされていた女神様は

涙目になっていたそうです。



この時はまだ誰も気付いていなかった。

夕焼けに染まる門の向こうから、

この世に来てはいけないものが

入り込んでたことを。

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