クロ
身長60cmくらいのお腹がポッコリとした微笑ましい幼児体型の
クロネコがしっかりと二本の足で立ち上がっている。
「クロ、あなた普通のネコではないとは思っていたのだけれど、
センサーで見える骨格は人型に近似した構造だから、
そもそもネコではないのね?」
電脳兵セブンのサポートアンドロイド、サラが解析結果から
そう話しかけた。
「そうなんだ。ボクはケットシ―っていう精霊種族なんだよ。
もうダメかなと思っていた時にセブンに助けてもらったのは
分かるから感謝しているよ。
でも、どうしてあの世界にいたのかは覚えてないんだ。
あ、もう少しクッキー欲しいな。」
「そう、精霊種族っていうのね。会話が出来るのは何かと便利なのだわ。
さっきの話は 聞かなかった ということにしておいてくれると
助かるのだけれど、お願いできるかしら。
クッキーは口止め料と受け取ってくれてもいいのだわ。
椅子は高さ調整機能あるから、テーブルの方で頂きましょう。
私も少し頂こうかしら。」
この後、セブンは魔力切れで行動障害に陥ったが、サラの送り込んだ
フライングユニットで大回りしてから拠点に舞い戻るのであった。
「あー、まだ体だりぃわ。セブン帰還しました~と。」
「「お疲れ様!」」
えっ?
テーブルで小さな幼児のようなネコらしきものと
サラがお茶をしているように見えるのだが、
気のせいだろうか?
うん、まだ本調子じゃないようだ。
久しぶりに調整ポッドでメンテでもするかな。
「現実逃避は時間の無駄なのだわ。
クロが普通のネコではないとあなたも分かっていたでしょう、セブン。
ケットシ―という妖精種族だそうよ。
ここは異世界なのだから、理解して受け止めることをお勧めするわ。」
いやいや出来ねぇーよ!
ねぎらいの言葉かけてくれるネコなんて見たことも聞いたこともねーよ!
って、それ俺の!俺のクッキーだから!!普通の顔して人のもん食うなよ!
泥棒ネコかよ! あ、サラ先生、取り上げないで!
置いといて!それアイテムボックスの標準装備だから!必需品だから!
あー、サラ先生のバックパックに詰め込まれた~・・。
よし、こうなったらクッキー求めて街を探すぞ。きっと何処かにあるはずだ。
え、メンテ先にしろって?いやー、体丈夫だからさ、もうピンピンしてるんだけど、
すぐにでも出ていけそうなんだけど。だめ?だめですか、そうですか。
あー、フライングユニットのカーラだけど、俺のメンテの間だけ警戒モードで
単独飛行に出そうか。この世界で初のバグドローンとの連携訓練もかねて、どうだろ。
魔獣探査を重点に置く方がいいって?そういやそうだな、じゃあ早速。
「カーラ!
警戒モードで単独飛行に出てくれ。
魔獣探査が主任務だ。頼んだぜ。
じゃあ、俺は寝るわ。」
眼内モニターを通して、カタパルトにセットしてきた
フライングユニットの上に3Dホロナビゲーターの
カーラがぼわっと浮かび上がるのが見えた。
『怠慢の極みなのです。
パワハラといも言えるのです。
業務改善を要望するのです。』
そういうと、ツーンと横を向いてしまった。
「いやいや、寝る必要ないからほんとは調整だから。
サラは拠点内専用のアンドロイドだから、屋外の活動には制限がかかるんだよ。
今この拠点の防衛はカーラにしか頼めないんだ、頼むよ。」
「その問題はクリアされていると考えるのです。
何故なら、”禁則事項”の内容がカーラが認識できてしまったから、
ザックバーン社の制限はすべて無効化されていることになるのです。」
「そうね、確かにカーラの認識で合っていると思うわね。
クロの気分転換にもなるから、一緒に外で活動してみるわ。
その前にカーラ、”禁則事項”の内容について、
確認が必要だと思うのだけれど、カタパルトに行くから、
オハナシしましょう。
さ、セブンはリンク切ってポッドで調整よ。急ぎなさい。」
『あ、今日が命日になる気がするのです。
すぐにでも単独飛行に出ていきたい気分なのです。』
うなだれるカーラの姿を最後に映し、可哀そうな姿を見る趣味はないので
眼内モニターもオフにして、ポッドに横になるセブンであった。
(禁則事項ってなんだろ、まぁ、俺には関係ないだろ。)




