禁忌に触れしもの
電脳兵のセブンはフライングユニットを装着し、
ステルスモードで静止衛星軌道上から
巨人族の移民船を目指して降下していた。
成層圏に入った時、電脳内にメッセージが入った。
『セブン、
移民船の内部の情報なのだけれど、
事態は最悪よ。
電脳化された魚人兵がひしめいているのだわ。
巨人族の兵士はバグドローンを見つけては
壊して回っているのだわ。
電子眼を備えていることから彼らも
電脳兵化されているみたいだわ。
最悪の情報なのだけれど、プロフェッサーがいるわ。
電脳兵化を推進しているのは確実ね。
長距離型のミサイルの開発が進行中よ。
弾頭に何を積んでいるのかまでは不明なのは、
巨人族の護衛がいるからなのだわ。
当然なのだけれど、彼らもステルスモードは使えると見て
慎重に破壊工作することをお勧めするわ。』
『あー、またあいつか。
手の内知られ過ぎててやりにくいな。
サラ、またぶっ倒れたら悪いけど
調整ポッドに放りこんでくれるか?』
『お断りよ!
また法門を開くつもりなのでしょう?』
『まぁ、多分大丈夫だと思うんだけど。
実はさ、世界樹のところで法門の向こうに
行けたんだよ。いや、呼ばれたってのが
合ってるか。
俺の力を使えとか、我こそとか、
余がしばいてやるとか、物凄い怖い方々に
囲まれてさぁ、マジで生きた心地しなかったよ。
で、今回も使わせて貰おうかと思ってさ。』
『上級神の力を頼るのは危険だと思うのだわ。
この世界ごと壊せる力を持つ方も
いらっしゃるでしょうから。』
『ああ、とびっきりにヤバい方もいたよ。
おっと、シールドにかかるところだった。
カミュールさんに貰った闇魔法の魔石の力で
潜入するよ。』
『了解。
もうそこには兵士と武器しか存在しないのだわ。
手加減無用よ。』
(見えた!あの影に移らせてもらおう。
シャドウ トランジット!)
闇魔法の一つ、目視できる影を介して転移する移動魔法だ。
無事に移民船のシールドを越えて内部に潜入したセブンは、
暗殺モードで船内の移動を開始した。
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「陛下、異界召喚魔法の発動準備が
整いましてございます。」
「大儀であった。
出迎えに参る。」
アトランティス帝国では、巨大な青龍を媒体にした
異界召喚魔法が使われようとしていた。
元国王一行が魔法陣の見えるところまで歩み進むと、
魔法陣を一定間隔で取り囲んでいた術師達が、
合唱魔法を唱え始めた。
魔法陣の下からフワフワとした光の粒子が立ち上り始め、
中央に置かれた青龍の体も輝き始めた。
一際周りの粒子が強く輝いた時、
青龍の体が焼失し、黒い巨体が入れ替わるように
魔法陣の中央に立ち尽くしていた。
『このフリュムを混沌から呼び出したのは貴様らか?』
問いかけて、返事が来る前にその巨人が軽く手を振った。
一瞬の出来事であった。
その一瞬でその場には巨人以外いなくなっていた。
いや、正確には膝から下の足らしきものだけが、
そこから上の体が失われたことに気付いていないかのように
その場に立ち尽くしていた。
巨人はそこから歩み出る時に、
魔法陣の外に黒い炎を揺らめかせる剣に目を止めた。
『これはレーヴァティンか、よし、
神共が作りしこの世界、焼き滅ぼしてくれよう。』
巨人はその部屋を抜け出ると、
帝国内のあらゆるところに向けて手を振っていた。
その衝撃波だけで様々なものが塵と化して消えていった。
数時間の後、アトランティス帝国は
瞬時に黒い炎で焼き尽くされ、
全ての命が失われたという。
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白い靄の中で苦悶の表情を浮かべるものがいた。
「やってくれたわね、
ついに他の世界の神の禁忌に触れてしまったわね。
もう後戻りは出来ないのだわ。
彼の力が本物なら、もしかすると
抑えられるかもしれないわね。
まぁ、彼も似たようなものなのだけれど、
心の持ちようが異なるわ。
頑張ってね、武人。」
靄の中から期待を込めた目で下の方を見つめる、
綺麗な瞳の女神の姿があったという。




