祟り神の呪詛
北のダンジョンを攻略するセブンの前に
2mサイズの黒い亀と蛇のキメラのような玄武が
立ちはだかった。
ずんぐりとした体系ではあるが、力強い佇まいから
武闘派の気配がにじみ出ている。
「ここで貴様は死ぬ運命だ。
俺に物理攻撃は通用せん。
水魔法系統しか使えぬ貴様には
俺は倒せん!
さぁ、どうする?
足掻いてみせるか、異邦人よ!」
(何か、やたら煽ってくるな。
俺、何か地雷踏んだんかな?
って、水魔法系統しかって・・・。
あー玄武って水の神でもあったっけ。
氷漬けにも対応してますって事ね。
うーん、確かに俺には
水と氷系の魔法しかないな。
・・・魔法ね、そっか。)
「水魔法かけたらどうなるんですかね?」
「バカめ!魔力を吸収して
ダメージ与えるどころか、
回復するのも知らんのか?」
「じゃ、攻撃してみていいですか?」
「愚かにも程がある。
死にゆく者への手向だ。
好きにするがいい、無駄だがな。」
ニヤッと嫌な笑い方をした玄武に向かい、
同じく嫌な笑顔を浮かべたセブンが、
奇妙な手の形をして、力を行使した。
「陰陽術には、お前と同じ北の守神は、
二柱いてな、一柱は金剛夜叉明王だ。
もう一柱の神の力で勝負だ!
神鋼の金剛陣!
オン シュリ マリ ママリ マリシュシュリ ソワカ
烏枢沙摩明王よ我に力を!
不浄潔金剛炎殺」
玄武の周りを虹色の球体が取り囲むと、
玄武の体の中から劫火が溢れ出て、
球体の内部を埋め尽くした。
「悪いな、神鋼の金剛陣は魔法の類は通さないが、
陰陽術は素通りするんだよ。
きっちり焼かれて、浄化されてくれ。」
呻き声ひとつあげることなく、玄武はこってりと
焼き尽くされているようだ。
炎が治ると、そこには黒い灰しか浮かんでいなかった。
その灰をセブンはアイテムボックスに収納した。
ダンジョン内が静寂に包まれていた。
(弱点の魔法じゃなくて陰陽術だけど。
一撃でいいのか。。)
終わったと言うよりも終わってしまったと思った
セブンであった。
これにより巨大大陸には
4つの資源ダンジョンが出来上がり、
ギルドと冒険者の懐具合が
向上していったのだそうです。
海底に控える異質な空間。
アトランティス帝国の本土。
大きな魔法陣が描かれた薄暗い空間。
その魔法陣の中央には、
青い細長い巨体が供るように
置かれていた。
「これでいよいよ我が悲願の神が呼べる。
急ぎ召喚魔法の使い手を揃えよ。
して、プロフェッサーよ、
件の兵士の増員は進んでおるのか?」
壮年の男の声が後ろに立つものに声をかけたようだ。
「クックックッ、どちらも順調ですよ。
陛下も機体との調整が
うまくいっておるようで何よりですよ。」
後ろを振り向く陛下と呼ばれた男も、
プロフェッサーと呼ばれた男も、
同じ金色に輝く瞳を持ち、
その瞳の中では小さな画面が
いくつも映り込んでいた。
その画面の中には、
細長い管の中で蠢く丸い卵のようなものや、
数万単位の凄まじい数の縦長の青い培養槽の中で
立派な体格の魚人兵が眠っているようであった。
培養槽から太い配管でつながる先には
丸い棺型のポッドがあり、
これも数万単位で並んでいる。
この棺は場所によって大きさが
半分以下のものがあった。
その棺からエアー開放音が響き、
ゆっくりと蓋が持ちがると、
中から魚人兵が姿を現した。
これまでの魚人兵とは異なる姿であった。
頭の部分が普通の人族のように丸く盛り上がっている。
何より、見開かれた瞳は金色に光を放っていた。
この瞳の中には 逆像の文字が浮かんでいた。
initialize complete
その兵士を専用調整ポッドに誘導する同じ姿の兵士がいた。
そのような光景がその空間では至る所で行われていた。
アトランティス帝国はクローン魚人兵を造り出し、
さらに電脳兵化までしているようだ。
洗脳の魔法は浄化魔法で解かれてしまうが、
電脳兵にしてしまえば、決まったプログラムの
指示の下で戦闘継続できるだけでなく、
不得意であった空中戦闘も電脳のAIサポートと
リンクすることで飛躍的に強化が可能になるのだ。
天翼族に見切りをつけた帝国の取った策は、
やはり非道な手段であった。
「クックックック、異なる時代の二人の私が
ここに召喚されたのが幸いしましたねぇ。
魔石を原動力にした新型電脳兵達、
魔力さえ供給すれば、再利用が無限に可能な
戦闘兵士達の量産が軌道に乗ってきましたねぇ。
これで、この世界も血で血を洗う楽しい風景が
見られるようになりますねえ。
子供型の自爆攻撃用兵士も
量産開始できたことだし、
この世界でも精神崩壊する敵の兵士も
増えていくでしょうねぇ。
いいですねぇ、狂って暴走する兵士達の
死にゆく姿、人の世にはお似合いですねぇ。
さて、次は放射線で遺伝子をいじって、
変異型電脳兵も作っちゃいましょうかね。
ハッハッハッハッハー!」
命を命と思わぬ、倫理観を全く持ち合わせていない
狂科学者の異常な執念は、祟り神の呪詛の如く
この世の全てを憎んでいるかのようであった。




