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いきなりのはじまり

よくある勇者ものですが、主人公が生き生きと描ければと思っています。どうぞ暖かい眼で見守ってください。

 それはなんてことない普通の日だった。

 いつものように友達とバカして、授業中居眠りして、買い食いしながら帰っていた。

 

 足元が光って、景色が一瞬で通いなれた道から、まったく知らない暗い場所に変わった。






 腐った果実は、早々に腐った部分から切り落とさないとどんどん腐っていき食べれなくなる。そう学んだのは、まだ3歳の頃だった。確かメイドが話してくれたよう気がするが、まぁそれはどうでもいい。今問題なのは、この国の腐った部分をどうするかだ。

 ガーネット・ハプスブルクは実に冷めた眼で、その三文芝居をみていた。

 はじまりは頭の沸いた王女の発言だ。なんでも夢で女神が出てきて勇者を召喚してブリトン国を救いなさいとお告げを受けたと騒いだ。

 現国王は孫娘の発言に訝しげな様子だが、建国より女神のお告げは国家の問題。無視もできず聖教国の教皇に確認を至急取った。

 結果は、事実。

 王女アリステルは自分は聖女に違いないとまで周囲に言いふらし、勇者を召喚して国を救うと騒いだ。

 だが、勇者召喚は聖教国の司祭が居なくては行えない決まりであり、とても重要な神事になる。それ相応の準備というものが必要であり、一国の王女の判断で行えるものではない。

 きゃんきゃんと躾のなっていない犬のように騒ぐこと3ヶ月。準備が整い勇者召喚の儀は執り行われることとなった。

 儀式に参加したのは、国王、司祭、王女、ガーネットたち貴族数名と騎士たちだ。本来ならブリトン国五大貴族の姫であろうと、関係者以外は呼ばれない厳粛な儀式にガーネットが呼ばれたのは、国王からの勅命であった。



 儀式当日、ガーネットは他の貴族と共に儀式の参加するため登城した。

 心配する侍女を別室でまたせ、儀式の間へと向かった。侍女が心配するのは、儀式の事だけではなく彼女がいるからだ。ガーネットも肩でため息をし、儀式の間に足を入れた。その瞬間、目敏く見つけた問題が飛んできた。アリステルが早々に噛み付いてきたのだ。

「なぜ、貴女がここに居るのです。ここに居ていいのは関係者だけ。私は女神様に選ばれたけれど、貴女は違うのです。出て行きなさい」

 この二人は同じ歳で同じ五大貴族ということもあり、何かと周囲に比べられてきた。そのため、アリステルはガーネットに対し常に敵愾心を持っている。

 ガーネットは視線を一瞬を向けるがすぐにそらし、迷いなく王の前に行き礼をとった。アリステルが騒いでいるが無視だ。

 王は呆れた眼を孫娘に向けるが、すぐに余裕のある笑みでガーネットに声をかける。

「よくきてくれた、ガーネット。余はそなたを呼ぶことをここに集める者たちに周知していたはずだが、すまぬ。気分を害してしまったな」

「とんでもございません、陛下。此度の儀式が滞りなく済むように願っております」

「うむ。まぁ、何があってもそなたが居れば余は安心だがな」

「恐れ多いお言葉です」

 アリステルがさらに喚こうとするが、祭司にさえぎられた。


「これより勇者召喚の儀を執り行います」


 司祭たちにより儀式は進み、他の者たちはみているだけ。

 ガーネットは他の貴族や騎士たちと共に王の近くに居たが、王女だけが近づけるぎりぎりの所で行く末を見守っていた。

 光が魔方陣からあふれて、人影が浮かぶ。

 魔力の波動で風が起こり、前がより見にくくなるがなるべく視線をはずさぬように前を見据える人々。

 光が収まり、そこに居たのは二人の少年だった。



 

 

 何が起こったんだろう。

 その場に座り込んでいるオレに、何人ものヒトの視線が向けられていた。

 絵でみたような服をきたヒトたち。暗い広間なような所。立ちたくても立てそうになかった。

「まぁ! 勇者が二人もなんて、聞いていないわ。どちらが本物なのかしら」

 背後から、一際高い女の声がして振り向くと、いかにもお姫様といった容姿の少女がいて、こちらを見ていた。

「なんだ、これ」

 今度は右から声が聞こえて向けば、そこに居たのはうちの学校一の文武両道のモテ男で有名な田中晴翔たなかはると

 少し安心したが、さらにお姫様は捲くし立ててきた。まず、田中に近づきその容姿を見て絶賛する。

「あら、貴方はとても素敵。まるで伝説から出てきたようだわ。貴方の様な方なら、勇者でも不思議はありません。私はアリステル。貴方のお名前は?」

「あ、た、田中晴翔。ハルトです」

 いきなりのことで田中も軽く引いていたが、お姫様の容姿に見惚れているようでもあった。

「ハルト、ハルトね。憶えたわ。――貴方は」

 そして視線がこちらに向くと一気に期待はずれといわんばかりの顔をされた。

「なぜ、貴方のような方が?」

 このお姫様、顔で選んでやがる。

 名前を聞くどころか、不審者を見る眼でみられ、どうすればいいのかわからない。下手をすれば、何をされるかわからないのだ。一気に不安に襲われる。


「いい加減にしろ」


 凛とした声が響いた。

 視線を向ければ遠くに人だかりがあり、そこには盾を構える騎士と役人のような男性たち、見えにくいがさらに奥に椅子に座った老人が居た。

 盾を構えた騎士たちの間からお姫様に比べてシンプルな姿をした、それでも彫刻のような言葉では言い表せない綺麗な女性が出てきた。

「ずいぶんと失礼だな。アリステル。もう一度、作法の家庭教師に一から学んだらどうだ。まぁ、今はもう口を開くな。隅でおとなしくしていろ。大事な客人に国の恥を晒されるのはごめんだ」

 女性の静かではっきりとした言葉は、拒否権など求めてなく、それは命令だった。お姫様は顔を青くして、睨みつけながらも下がっていく。

 さっきの声はこのヒトだったのか。

 近づいてきた女性は、警戒心など解けてしまう優しい微笑で声をかけてきた。

「はじめまして。私はガーネット・ハプスブルク。ガーネットと呼んでください。ようこそ異界のお客人。我々はあなた方を歓迎いたします」

 思わず背筋がピンと伸びてしまった。

 視線だけ向ければ、田中も同じようで緊張しているみたいだった。

「お二方ともお疲れでしょう。部屋にご案内いたします。ハルト殿と貴方は……お伺いしても?」

 田中に視線を流し、オレを見つめた。

 星屑を集めたような不思議な綺麗な瞳。怖くない。ただガキの時、本物の星空を見たときみたいな気持ちだった。

「――オレは高倉透(たかくらとおる)。トオルです」

 少し声が上ずっていた気がするが、彼女は聞き取れたのか微笑んで呼んでくれた。

「トオル殿ですね。―――立てますか」

 彼女が振り返ると奥の老人がうなずき指示を出す。すると騎士たちが近づいてきて、オレたちに手を差し伸べてくれた。

 完全に場を制しているのは、このガーネットという女性だ。さっきのお姫様なんて、あっという間に空気になっていた。

 オレたちはお礼を言って手を借りた。何とか立ち上がれたが、まだ心もとない。

 騎士たちに「こちらへ」と声をかけられてゆっくりと歩き出した。逃げようとか、怖いよりも、疲れたという気持ちが大きい。幸い悪い空気はない。そのままどこか、彼女のいう部屋に案内してくれるようだ。牢屋とかだったらどうしようかと思うがもう今は何も考えたくなかった。



 ――俺と同じ制服のぱっとしない男が騎士たちと場を後にした。

 俺の名前は田中晴翔。普通の高校生だ。といっても周りに奴は俺を勝ち組という。

 親は医者と弁護士で家政婦を雇う余裕のある裕福な家庭に生まれ、成績もいつもトップ。容姿も悪くないため女に困ったこともなく、友人関係も円滑に行えていた。

 友人たちはうらやましいというが本気で言っているのだろうか。――こんなにつまらないのに。

 部活の帰り、いきなり足元が光だし気がつけばこんなとこに来ていた。

 わけのわからないことを騒ぐ、やけにキラキラした格好をした女、確かアリステルとかいう女が『勇者』とかゲームのようなことをいっていた。

 何かに巻き込まれたことはわかる。目的は『勇者』。様子を見る限り、今すぐに俺たちをどうにかする気はないようだが、いつ気が変わるかわからない。幸い言葉がわかるのが救いだ。なるべく情報を集めて、必要であれば逃げなくては。

 一番いいのはあのガーネットという人物だ。何者なのか。どう考えても格が違う。

 騎士たちの様子からして、奥に座っている老人が一番権力を持っているようだが、その老人は判断を彼女に任せている。老人の周りにいる男たち役人のような奴らも、司祭のような格好をした奴らも何も言わない。それどころか彼女を信頼しているのか実に冷静だ。

 思考の海に漬かっていると、同じように騎士たちが案内をしてくれるようだ。

 できれば話しを聴きたいが、ここで焦っては功を仕損じる。あきらめて、騎士たちに付いていこうとするが、後ろから腕を引っ張られた。

「貴方は、私が面倒見て差し上げますわ」

 あのキラキラ女がいた。騎士たちがたしなめるがキンキン声で制してしまう。

「まったく。なぜ皆、ガーネットなどに。彼女は社交界でも浮いていますのよ。此度のことも彼女は関係ないというのに陛下に取り入って、この場に参加したのですよ」

 癇癪を起こしたとは思えない表情。甘い砂糖菓子のような微笑を曇らせて話しかけてくる。現代に居たときにも見たこびる表情。正直、離れて欲しい。

「ガーネット、よろしいわよね。今回の召喚の儀は私が女神様にお告げを頂き行ったこと。勇者が二人も召喚されたことは驚きましたが、貴方はそちらの方を見てください。ハルトは私が責任を持って保護いたします」

 腕を放さないキラキラ女は勝手なことを叫んだ。品のないことだ。できれば俺はあちらの女性に世話になりたい。

 ガーネットは考えるようなそぶりを見せると、再び視線を老人に向けた。

 座っていた老人は立ち上がり、はじめて言葉を発した。

「よかろう。ハルト殿はアリステル。トオル殿はガーネットが補佐につくがいい。必要であれば考える」

 その言葉にアリステルは満面の笑みを浮かべるが、ガーネットは静かに一礼をする。

「陛下の許可もおりました。ハルト行きましょう。私が案内いたします」

 騎士たちを押しのけて女は俺の腕をつかんで無理に引っ張った。

 嫌な奴に目をつけられたと思い肩でため息をついた。




 アリステルに引っ張られ、退出した少年を見届け、王たちは肩でため息をついた。

 家臣たちは孫姫の振る舞いに頭痛がしてくる。

「陛下。やはりアリステル様は王位継承者からはずした方がよろしいのではないでしょうか」

「そうです。たとえ順位は低いといえど、あのような振る舞いをなさる方が継承者の一人であるとするのは、国の名に泥を塗ることとなりましょう」

 家臣たちの進言は正しい。今回の振る舞いはいかに王族にふさわしくないかよくわかる。

 戻ってきたガーネットは、表情を変えず、家臣たちの話も聴いていないといわんばかりだ。

「陛下。私はトオル殿の世話役ということで本当によろしいのですか」

「あぁ、アリステルに対抗できるのはそなたぐらいだ。世話をかけるがたのめるか?」

「陛下、それはいささかずるいです。あのように公言されてしまえば、私に断るという選択肢はありません」

「すまぬな。あれのことだ。今後、自分の勇者が本物だと騒ぎ何かしでかすだろう。そなたなら、騒ぎを大きくせずに片付けられると思ってな」

「はぁ、面倒の押し付けですか。わかりました。これは貸しにしておきます。―――司祭殿」

 今回の召喚に携わった司祭たちに鋭い視線を向け、ガーネットは口元だけ笑みを浮かべる。

「今回の勇者召喚について女神がどのように考えているのか想像できませんが、国へお帰りになり報告をなさるときにお伝えください。「次はないといった言葉を忘れたとはいわせない」と」

 司祭たちの顔が一気に青ざめる。

「こちらも二人召喚されるとは思っても居ませんでいた。今後はお二人の様子を観察し、そちらに報告させて頂きます。ですので、今日はゆっくりと休まれ、どうぞお帰りください。―――それでは陛下。私はトオル殿の様子を見に行きます。何かあれば、ご遠慮なくお呼びください」

 優雅な一礼であとにするガーネット。王以外だれもが息が詰まりそうであった。

 王はひざ掛けに肩肘をつけ豪華に笑った。

「さて、どうなることやら。皆の者、決して気を抜いてはならぬ。ガーネットが容赦がないことは皆知っているであろう」

 家臣たちは、苦笑いをした。

誤字や言い回しなどご意見がありましたら、ぜひお願いいたします。


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