第5話 派手なプレイが妬まれそうです
「最近は子供が小さい頃からヴァーチャルリアリティ時空間で英才教育を施す例が後を絶たなくて危険なのよね。子供たちは平気でそのあとVRMMOで遊んだりして長時間に渡ってヴァーチャルリアリティ時空間を利用するかもしれないの。しかも幼い彼らに与える影響なんて未知数だわ。」
ちょっと待てよ。3歳の頃からヴァーチャルリアリティ時空間に慣れ親しんできた僕は過剰にヴァーチャルリアリティを利用してこなかったか?
耐性をあげるために限界までVRMMOでヴァーチャルリアリティ空間で過ごしたこともあったような気がする。もしかしてそれが原因か?
まさかね。
子供だもの成長期の睡眠は十分に取っているはず、大人みたいに睡眠4時間でも平気なんてことは無いはずだ。チビだけど。
「どうしたの。黙り込んで私のことを見つめたりして。ダメよ。管理者権限で干渉しているとはいえ、ほらこちらの世界では実体を持ってないの。」
何を勘違いしたのか。抱きついてキスしようとしてくるが身体が重なって見えるだけでリサの言う通り実体を伴って感じられなかった。
「あう。」
「何よ。真っ赤な顔をして、女の子に触れたことが無いのね。そう言うことなら通常空間で迫ってみようかしら。キスをすれば、地球連邦軍に入ってくれる?」
ああビックリした。リサって大胆だな。流石はハーフ、キスは大したことは無いらしい。恥ずかしく無いのだろうか。
「止めてくれ。入らない。絶対に入らない!」
同級生たちの前でそんなことをされたら、学校の男子高校生全員から総スカンを食らいかねない。
「奥手なのね。なら、こういうのはどう?」
いきなり、リサがブラウスのボタンを外していく。第2ボタン・・第3ボタン・・露わになった部分から小ぶりだが谷間がシッカリと自己主張している。
見てはいけないと思いつつも視線が外せない。
思わず生唾を飲み込んでしまった。
「フフフ。ゴメンね。触れないのよ。見るだけね。」
いつのまにか腕が空中をさまよっている。見られた。なんて恥ずかしい。
触れないとわかっているせいか。スカートから太ももを見せたり、リサがドンドンと大胆な格好を始める。
「ダメだよ。そんなことをしても地球連邦軍に入らないってば。」
僕は後ろ髪を引かれる思いでリサから視線を逸らして後ろを向いた。惜しかったかな。
「チッ!」
舌打ちされてしまった。誰だこんな誘惑の仕方を教えた奴は。
☆
「迷惑を掛けて済まないね。一緒に乗っていって欲しい。」
学校の前に高級そうな自動車が横付けされていた。リサが近付いていくと運転席から運転手が降りてきて観音開きになっている後部ドアを開けにくる。
都市部は完全自動運転制御になっており、周囲の自動車や人や自転車などの動きに応じて制御される。高級車には故障した際に外部からリモートコントロールできるようになっており、安全装置が幾重にも掛かっている。
それでも地震・雷・火事・頭の可笑しいオヤジなどの外的要因による事故が年に数回ある。滅多に見ないが本物の金持ちは運転技術を持った人間を座らせるというのは本当らしい。
後部座席に座っていたのは、地球連邦の那須新太郎議長だ。
「はいっ。失礼します。」
思わず知らないはずの敬礼をしてしまった。
20世紀に走っていたロシア製のジルという車だそうで防弾性能は当時他に類を見ないほど凄かったらしい。今でもスナイパーが見ただけで狙撃を諦めるのだという。
「まあその車に改造を加えたので今でも世界最高水準を維持しているんだけど。さあ立ってないで乗って乗って。」
リサは何処か不満そうな顔をして先に乗り込んでおり、その隣に滑り込む。向かいは那須議長だ。
「オリハルコンですか?」
彼がテロリストを撲滅したというのは、伝説の鉱物であったオリハルコンを見つけ出し、繊維状態にした防弾スーツを装着したという。
「良く知っているね。僕がテロリストを撲滅したかのように世間では言われているけど、同じ防弾スーツを各国の特殊部隊が使用したからなんだ。僕はただ特殊部隊を持たない国々の依頼を幾つか受けただけなんだよ。」
「誰でもできることじゃないです。」
例え死なないとわかっていてもテロリストの前に立ちはだかるなんて誰にも出来ない。それも軍人でも無い一般人が。
「ねぇねぇ。随分、態度が違うじゃない!」
「だって! 伝説の人物だよ。教科書にも載っているんだよ。」
自分で興奮しているのがわかる。
「じゃあ。シンタローが命令すれば地球連邦軍に入ってくれる?」
自分の父親だからって呼び捨てかよ。
「・・・・・・。」
その当人は目の前でニコニコと笑っている。
どう考えても断る自分が想像出来ない。これでチェックメイトかな。
「ダメだよ。自分で説得する約束だろ。」
ホッとしたような惜しいことをしたような不思議な気分だ。
「チッ。」
またもや舌打ちをされてしまった。
「この子はもう・・・渚佑子さんの悪いところばっかり真似して。ダメだといつも言っているだろう。」
舌打ちは他の女性の真似らしい。
「そんなことを言って。本人の前では言えないくせに。今度泣き付いてみようかな。『シンタローが虐めるの』って。何よそこまで真っ青になることなの?」
「ホント。止めてください。お願いします。」
突然、親子の関係が逆転する。余程、怖い人らしい。
「まあいいわ。でも、シンタローが言っていた。れいなさんが使ったという誘惑方法を使って迫ってみたけどダメだったわよ。」
おそらく『西九条れいな』のことだろう。映画俳優だったころの那須議長と親交のあった女優で度々噂になった。女優が亡くなった後の話では肉体関係は無かったというが誘惑はされたらしい。
「元が違うじゃないか。」
「ヒドイ。やっぱり、渚佑子さんに泣き付いてみようかしら。」
「だから止めてください。服部くん。塾に着いたようだよ。後で渚佑子さんに迎えに行かせるから、一緒に帰ってくれるかな。」
親子漫才が繰り広げられているといつの間にか塾の前に到着していた。
「いえいえ。ご心配なく、一人で帰れますから。」
興味はあるが那須議長が怖がる女性と帰るなんてとんでもない。それこそ命が幾つあっても足らなさそうだ。それに子供じゃないんだから一人で帰れる。
「1週間ほど経っても何もなければ引き上げさせるから。」
リサと接触したことで狙われることがあるそうだ。まあ既に学校の男の妬みは買っていそうだけど。渚佑子さんという人の顔写真を見せて貰い、塾に入っていった。