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第10話 家族を紹介してくれたようです

「ねえチイちゃんの家族って。」


 これからアンドロメダ銀河帝国の皇帝・・・つまりチイちゃんのお父様に会いにいくところだ。僕に何かを聞きたいらしい。多分『ミルキーウェイ』のことなんだろうな。


「父はとっても優しい方よ。母は私にそっくりだからすぐにわかるわ。8歳離れた兄に6歳離れた姉がいるの。4つ上にも兄が居るんだけど庶子だから、今から行くところには居ないはずよ。」


「随分と家族が少ないんだな。」


 同じ王族の『Y1』と比較すると随分少ないと思ったけど、あの人は別の理由で子孫を増やしているんだっけ。


「そうね。歴代の皇帝の中では少ない方かな。仲の良い家族よ。」


「その仲の良い父親がスパイなんて仕事に良く出してくれたね。」


 それ以前に皇女がスパイだなんて考えられない。


「皇帝の娘というのは政治の道具なの。余程重要な任務を与えられないかぎり、嫁がなくてはならないの。あんなタヌキ爺のところに嫁ぐくらいならスパイの方がマシかなと思っただけよ。父もそう思ったから出してくれたんじゃないかな。この部屋よ。謁見の間ほど形式ばった席じゃないから安心してね。」


 タヌキなんだ。


 皇帝が万が一、子孫を残さずに亡くなった場合のことを考慮して、2つある公爵家のどちらかに嫁がなくてはならないらしい。


 扉をくぐると廊下に出た。左右に沢山の部屋の扉が並んでおり、突き当たりにはリビングルームのようだった。その手前にご夫婦が並んで立っていた。


「お母様。ただいま。」


 まるで子供が自宅に戻ったような雰囲気だ。皇帝の住まいとは思えない。


「ネ、ネ、その人がそうなの? 背が高くて格好良いじゃない。羨ましいわ。」


 本当に良く似ている。特に胸が・・・何を考えているんだ僕は。不敬罪だろ。


 でも背が高くて格好良いなんて初めて言われた。僕の身長でも十分に高いらしい。めちゃくちゃ嬉しすぎる。ここで生活するのも良いかもしれない。


 お父様も温和そうな笑顔を向けてくれている。娘を孕ませた男に対して何か思うところがあるかもしれないけど。


「はじめまして。服部あゆむと申します。」


 僕は恐る恐る話し掛ける。


「なるほど、わしに似て温厚そうな顔をしておる。」


 僕はチイちゃんと顔を見合わせる。そんなことを言われたのも初めてだ。ああ、父親に似ていると思いたいんだな。突っ込まないでおこう。


 僕は家族の会話を邪魔しないようについていく。これが意外と難しい。遅れるようなら早歩きすればいいが遅く歩くのは難しいため、自然と周囲の装飾品や絵画に目が行く。きっとどれもが目玉が飛び出るような金額なんだろうな。さっぱり、わからないや。


 それが悪かったのだろう。扉から出てきた人とぶつかりそうになってしまった。


「ごめんなさい。・・・申し訳ありません。」


 どう考えても、よそ見をしていた僕が悪い。その人と目が合う。チイちゃんソックリだ。でも男性が着る服で何しろ胸が無い。恐らくチイちゃんのお兄様なのだろう。ということは皇太子様だ。


 とにかく膝をつき謝り倒す。これで礼儀作法にあっているのか。さっぱりわからないけど。


「どなたかな?」


 ジッと顔を見られたあと聞き返された。渋い声だ。しかも耳元だったためか。ゾクゾクっとした。


「僕「お兄ちゃん。この人は私の旦那様のあゆむくん。」」


 凄い勢いで僕と皇太子様の間に入り込み紹介をしてくれる。何を焦っているのだろう。


「アルだ。長い付き合いになるが、こちらこそよろしく頼む。」


 アル皇太子様と握手をする。気さくな方のようだ。


「よろしくお願いします。」


「父上をお待たせしているようだし、さあ行こうか。」


 促されるままに歩き出すと居間に到着する。


 居間というには広すぎる気がするが中央付近にある大きな机を囲み椅子が置いてあり、スミの方にはカウンターバーらしきものやソファーがあったりするのだから居間だ。まあ呼び名は何でもいいんだけど。


 さらに隣には仕切り板が大きく開け放たれていて、大勢の人が何かを取り囲んでいた。


「セシルお姉ちゃんとロバート公爵だわ。」


 これで皇帝一家揃い踏みらしい。チイちゃんの説明では彼がセシル皇女が嫁いだ公爵家の当主らしい。キツネ目の男で僕と同じくらいの身長ということは高いほうなのだろう。


「やあロバート。お前も来ていたんだな。」


 アル皇太子様はロバート公爵の方へ歩いていくが間にセシル皇女が割り込む。


「久し振りなのに私は無視なの?」


 こちらの皇女はチイちゃんを上回るぽっちゃり体形でさらに身長が低い。地球人の僕の基準ではかなりブサイクかもしれない。


「ゴメンゴメン。見えなかったよ。」


 何かがおかしい。ライバル同士火花が散っているような雰囲気だ。


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