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第7話 パイロット候補生たちのコンビネーションは絶妙です

「あゆむくん。ご飯お代わり!「あっ。あゆむくん。こっちもお願いね。」」


 夕食のお膳を各部屋に持って行き、内線電話で呼び出されるのは大変なのでリサの部屋で一緒に世話をする。リサはむくれているが仕方がない。


 僕以外にも旅館のスタッフが控えているのだが、僕にばかり声が掛かる。


「少しは遠慮しなさいよ。あゆむくんが食べられないでしょ。」


 自分が我が儘を言えない所為かリサがイラついているみたいだ。


「心配してくれてありがとうリサ。でも厨房でつまんできているから大丈夫だよ。」


 アチコチから呼ばれて世話を焼くのも大規模な宴会を経験している僕にとっては大したことは無い。それにリサ1人相手のほうが我が儘放題で手が掛かるのだ。


 それに皆さん、親の教育方針の違いなのか自分のことは自分で出来るから助かる。ジョージは幼少期に身体が弱かったというが独立心が強く甘えたがらない。ウォルは逆に全てを召使い任せにしていたが軍閥ということもあり早くから軍人としての共同生活のなかで培ったらしい。


 千尋・千春姉妹は姉が妹が、妹が姉を世話を焼くためかそれほど大変じゃ無いのだ。


「あゆむくん。ここに来てお酌してくれないかな。」


 中田教官が甘えた声を出してくる。軍隊の中で上官の命令は絶対だ。本当は旅館スタッフがお酌することは禁止されているのだが逆らえようはずも無い。


 でも僕がお酌をしにいく度に嫉妬の視線と敵意剥き出しの視線と羨望の視線と軽蔑の視線が飛び交っている。


「おい雅美。旅館スタッフのあゆむくんをそんなことに使うんじゃない。」


 案の定、この中で一番短気なリサが真っ先にキレた。2人っきりのときはジュースだが平気で頼むくせに。


「なんなら女装してお酌して貰っても構わないよ。コンパニオン代出すから。」


 余程、酔いが回っていたらしくセクハラ発言まで飛び出した。ここまで来ると軍務規律違反だ。


「「「「女装?」」」」


 彼らも例のパーティーのときにあの場に居たはずだが僕が女装をしていたことは知らなかったらしい。


「そうよ。物凄く可愛かったんだから。」


 真っ先にリサが裏切った。ネットニュースで出回った写真画像を皆に見せて回る。


「えっ。あの娘がそうなの。てっきり中田教官の側室候補かと。」


 世間でそう思われているらしいことは知っているが面と向って言われるとヘコむ。


「ちょっ。「もちろん俺のモノさ。」」


 中田教官がさらに悪乗りして横抱きしてくる。男の姿でもいいらしい。


 バシっ。


 思わず平手打ちしてしまった。冗談だと解っていても顔を近づけられると恐怖だったのだ。


 ガシっ。バコっ。ドカっ。ベシっ。パっカーン。


 『グレイトノンキャリア』の面々の攻撃が中田教官に炸裂する。


 リサは頭を肘鉄、ジョージは腹を殴り、ウォルは背中を膝蹴り、千尋はスリッパで千春はどこから出したのかハリセンで叩く。息の合ったコンビネーションプレイだ。


「渚佑子さん。相手は一般人です。止めてください死にます。死にますから。」


 いつのまにか現われた渚佑子さんが中田教官に攻撃しようとするのを羽交い絞めで止める。


「ロリコン死すべし。」


 渚佑子さんはロリコンに余程恨みがあるのか憎しみの表情を浮かべていた。


     ☆


「あゆむくん。痛いです。」


 軍の訓練で鍛え上げた中田教官の身体にはコンビネーションプレイによるダメージは少なかったようだが長時間の正座は耐えられないらしい。


「渚佑子さんの攻撃とどっちが良かったですか?」


 渚佑子さんには離れの廊下で一晩中正座させることで手を引いて貰った。


「どっちも嫌ですよ。」


 結構、余裕の表情だ。意外と懲りてないのかもしれない。


「じゃあ、幸子さんと奥様とどっちに報告されるほうが良かったですか?」


「どっちも嫌です。止めてください。お願いします。ごめんなさい。もう致しませんから。」


 今度は必死になって縋りついてくる。


「今更、謝って貰っても遅いですね。リサが報告していましたよ。」


 僕がそう言うと中田教官の顔が真っ青になってしまった。

やばかったぁ。

応募既定10万字突破しました。

でもキリが悪いですよね。

次話が間に合えば、最後のどんでん返しが決まる。

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