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番外編 お正月あそび

今日の投稿分はこれが最後です。

と言っても番外編ですがお送りさせて頂きます。

「あゆむくん。帯をしっかり持って。」


 今日はお正月ということで一時的にそれぞれの実家に戻ってきたのだがリサはまだ怒っているらしく『織田旅館』に滞在している。


 別棟の離れで至れり尽くせりのお正月を迎えているのだリサが。


 僕は疲れているのに大晦日から休み無く働かされて大変だ。特に今年は蓉芙コンツェルンのお客様が多く女将以上に各部屋を回らされている。


 まあ大半が女性で僕の顔を見たいだけだと解っているのでウォルにするように近付いて微笑むだけで満足してくれるから楽だけど、時折大胆に抱き締めてくる女性も居たりする。たったそれだけのことで多くのチップが頂けたりするから嬉しかったりする。


 余り相手が出来なかったので不満に思ったのか正月3ガ日はリサが占有するらしい。


「はいはい。」


 リサには珍しく朝から振袖を着ていたのだが昼食の御節料理を食べ終えると満足したのか帯を解き出したのである。ぐうたら生活を再開するつもりらしい。


「さあいくわよ。思いっきり引っ張って。」


 何故引っ張るのか分からないが逆らっても面倒なので言われた通りにする。


「あ~~~れ~~~。」


 リサがクルクル回り、声をあげる。どっかの勧善懲悪モノの時代劇で見たようなシーンだ。


「これがどうしたんだ?」


「面白い! 面白いわねコマ回し。お正月遊びなんでしょ。」


 誰だ。こんなことをリサに教え込んだヤツは。まあ1人しか思い浮かばないけど。


「さあ次は下帯ね。」


 リサはお気に召したようだ。まあ後で教えてあげればいいか。


 何重にも重ねられた帯を1つずつ解いていくと真っ赤な長襦袢姿になった。色っぽいな。


「次のお正月遊びは姫始めね。」


 これをお正月遊びと言っていいのだろうか。確かにお正月にするものなんだろうけど。


 リサはその姿のまま、抱きついてくる。長襦袢の下は当然何も付けていない。僕も男の子だ。そんな姿に反応しないわけではなく、リサの唇にキスを落とすとご要望どおり姫始めに勤しむのだった。


     ☆


『成田山新勝寺から中継でお伝えします。なんと現代のプリンセスとの呼びごえの高いリサ・ローランド・那須様が振袖姿で到着されました。なんとお美しく神々しい姿なんでしょう。』


 昨日、この振袖姿で悪代官ごっこもしたし、姫始めもしたけどね。


 何処からか情報を入手したテレビ局の放送車のアナウンサーの声が響き渡っている。


 公私混同じゃないだろうかと疑うほどの地球連邦軍の制服を着た軍人が大本堂の境内までの道を作ってくれている。


「あの男の子可愛い。小姓さんかしら。」


 周囲から歓声があがる中、リサの隣を歩いている僕の噂をしている声が飛び込んできた。僕もリサに合わせて紋付袴姿な所為で小姓に見えるらしい。どうせ恋人には見えないですよ。


 しかし、凄い人だ。その凄い人だかりの中、総門の前で軽く頭を下げる。


 リサは参拝の手順を知らないらしく素通りだ。慌ててリサに追いつく。


「可愛い男の子が少し遅れてる。あっ追いついた。」


 いやいや実況中継はテレビ局だけで十分だから。それに僕が参拝の手順通り頭を下げているとは思っていないらしい。まあ現代の日本人なんだから仕方が無いよな。


手水舎(ちょうずや)の前です。たった今、リサ様の神々しいお姿が見えました。』


 一体、何台の中継車が来ているんだか。しかし、仏閣で『神々しい』を連発していいものなのだろうか。仏陀が怒るぞ。


『リサ様が厳かに手を洗っておいで・・・でございます。』


「リサ。違う。こうだ。」


 手水の中に手を突っ込みやがった。大雑把にも程があるだろう。アナウンサーも正しく伝えろよな。見ている人間が真似したらどうするつもりだ。


 手桶で水を掬いあげてから外で左右の手の平の上に水を掛ける。流石にうがいはしたくないので口に入れる振りだけで、手で口元を隠して吐き出した振りをする。リサの所為で滅茶苦茶面倒になったじゃないか。


「随分と面倒くさいのね。」


 リサの所為だ。リサの所為。


「リサ。その紐を引っ張るんじゃねえ!」


 リサが仁王門でもやってくれた。『魚がし』と書かれた提灯の紅白の紐を引っ張って、提灯を揺らして見せたのである。誰だ。こんなことをリサに教え込んだバカは。


 香閣(こうかく)では煙を頭につけてやがる。もう何も言うまい。後で教えてやるしかないようだ。


「あゆむくん。凄いね高額紙幣が入っているよ。」


 大本堂の前に置いてある正月用の賽銭箱の前に到着する。


 恥ずかしいから喋るな。お前は何処の中学生だよ。しかも取り出した賽銭は5円玉だ。お前も高額紙幣入れとけよ。ケチだなあ。


 不動さま。お騒がせして申し訳ありません。


 僕はここまで来て何をやっているのだろう。初詣に来たはずなのに、自分のことも旅館の将来も地球連邦の未来も祈らずにリサのことで謝っているよ。全く。


 そして正月には入れないはずの堂内に特別に入れて貰った。


 御護摩祈祷は盛大に行なわれていて平和への祈りを捧げているようだ。


 それなのにリサは渡された護摩木に『胸が大きくなりますように』って書いてやがった。


     ☆


「あゆむくんは何をお祈りしたの?」


 帰りの車の中でリサが聞いてくる。


「もちろん、地球の平和だけど。」


 本当のことは言えないので適当なことを言っておく。


「リサは何をお祈りしたんだ?」


 どうせまた自分のことなんだろうと思いながらも聞いてみる。


「あゆむくんがもっと私に夢中になりますようにって。」


 何を言ってるんだろコイツは。羞恥攻めなんか何処で覚えてきたんだか。


「もう十分にリサに夢中だよ。これ以上は勘弁してくれ。」


「本当? じゃあ正月中は証明し続けてね。」


「ああ。わかったよ。どんな奉仕でもさせて頂きます。」


 この時は想像していなかったのだ。それからエッチ三昧の爛れた日々が続くなんて。

リサの偏った知識は誰から植え付けたものなんでしょうか(笑)

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