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第3話 パイロット候補生はようやく伝えたようです

「平均防御率第1位の千春・ガラシャ・井筒さん。

 第2位のリサ・ローランド・那須さん。

 第3位のウォル・スミス・アルドバランくん。

 第4位のジョージ・バンカーくん。

 第5位の千尋・シャルル・井筒さん。

 そして平均戦闘時間第1位のあゆむ・服部くん。

 おめでとう。君たちが『ミルキーウェイ』一般選出パイロット候補生。

 通称『グレイトノンキャリア』1期生だ。」

 

 ダメージ貰わず長時間の戦闘行うことを重要視した平均防御率で争われた『ミルキーウェイ』のパイロット候補生イベントで第9位と欄外だったが対戦相手を短時間に戦闘不能状態に陥れたことが評価されギリギリでパイロット候補生としてリサと同じチームに入れた僕は再びグアム州のスペースコロニーにある士官学校にやってきている。


「俺は君たちの教官兼同僚にあたる中田だ。よろしく頼む。」


 中田広報官は俺たちが費やした3ヶ月間に全ての訓練を終了しており、火星での防衛任務に就いていたらしい。そして僕たちの教官として舞い戻ってきた。


「中田教官。新太郎様はいらっしゃらないのですか?」


「千春くん。まず言うことがそれかね。君がそうやって追い掛け回すから来たくないと思っているのでしょう。」


 この娘。那須議長の追っかけなのか。昔のハリウッド女優を思わせるエロっぽい肢体と子供っぽい言動がイマイチ合っていない。


 でも、それは関係無いと思う。あれからずっと『織田旅館』に滞在しているリサと顔をあわすのが恐いらしい。面と向かって『嫌い』って言われたくないらしく、僕のSNSにしつこく確認してくるのだ。


「ちぇっ。」


「大丈夫。新太郎様は貴女のことが嫌いなだけよ。」


「お姉ちゃん。それって全然大丈夫じゃないじゃん。」


 第5位の千尋さんは第1位の千春さんのお姉さんのようだ。


「貴方が噂のあゆむ様ですね。噂通り、あの方によく似ておいでだわ。失礼致しました。私、スターグループオーナー井筒・パール・和幸の娘、千尋と申します。そこで騒いでいるのが妹の千春です。」


 スターグループと言えば、いち早くバーチャルリアリティ空間に対応したニュース・映画・動画・コミュニティ・情報発信と各種メディアのサイト運営と独自のニュースソースによる情報で現代のメディア王と呼ばれているグループだ。


「服部あゆむです。よろしくお願いします。」


 こちらは妹さんとは違いシックな装いだが、肉食獣のように目付きがギラギラと尋常じゃなく、目を合わせるのが怖い。


「お姉ちゃんはあの人びいきだから良いかもしれないけど、こんなロリコン男相手なんかしたくないよ。」


「まあそう言わない無いで貴女の『西九条れいな』似の容姿を持ってすれば、そのロリコン男を落すことなんて容易いわよ。飽くまでその男は刺身のツマなんだから次の段階に行くための布石よ。」


 那須議長と良く噂の相手になった『西九条れいな』がオーナー夫人として有名でそのためなのか、その子孫が那須議長に言い寄っているという噂があったが本当のことらしい。


 初代中田雅美氏も噂になっているがこちらは完全に噂だけのようでロリコン認定されてからは家族ぐるみでの付き合いがあったようである。


「なるほど、爺さんが気に入るのもわかるな。」


 この男性はチルトン・イン・ザ・ムーンで『Y1』から紹介されたアメリカ州知事ブッシュ・バンカー氏の孫らしい。彼の家系はアメリカ合衆国時代から多くの政治家を輩出しており、引退後地球連邦の設立に寄与したと言われているのがジョン・バンカー元大統領である。


「ただ顔が似ているだけだ。庶子ごときに名誉あるあの方の子孫を名乗られる謂れは無い。」


 こちらは若獅子を思わせる貴公子という言葉がピッタリの男性だ。


「その辺で止めておけ、ウォル・スミス・カーディフ伯爵。貴公が貴族を名乗れるのはイギリス州内だけだ。ここでは只のウォルだ。それが嫌なら、即刻出て行って貰おう。」


 地球連邦において主権こそ地球連邦に属しているが王や貴族などの各州の形態は維持されたままだ。但し、それは文化の一種とされ、州を越えて権力を振りかざせば、相手が誰であろうと即座に剥奪されるものとなってしまっている。


「フン。ここは中田教官の顔を立てて引くことにするよ。」


 若獅子が金色の鬣のような髪の毛を振って顔を背ける。


「あゆむ。まあ気にするな。ウォルはいつもこうなんだ。尊敬しているあの人に会う度に叱責されているくせに懲りないと言うか性分というか。俺のことはジョージと呼んでくれよ。」


 ジョージが僕とウォルとの間に入り、肩を叩いてくれる。


 でもここはこの顔を有効活用するべきだよね。


「ありがとうジョージ。でも僕はウォルとも仲良くしたいんだ。」


 僕は顔を背けるウォルの前に回りこみ。その首にぶら下がるようにこちらに顔を向けさせる。


「なっ。」


「ほら、良くみて欲しいな。何処が似ているんだい。僕は僕さ。服部あゆむだよ。」


 どいつもこいつも『Y1』に似ているとばかり言いやがって、いい加減に腹が立つんだよな。


 でもまあ、こんなことで友人が少ない僕が彼と仲良くなれるなら願ったり適ったりだよね。


 もう5センチ背が高ければキスしてしまうような位置関係で彼の顔を見つめているとだんだんと顔が赤くなっていった。やっぱりね。彼はどういうふうに逃れようと思ってもこの顔が好きなんだ。だから反発して自制心を保っていたんだ。


 目がとろんとしてきた段階でスススッとリサの後ろに隠れる。幾ら端整な顔でも男にキスはされたくないからな。


「流石はあゆむくん。早速、ハリネズミのようなウォルを手懐けたのね。でも、あゆむくんは私の物よ誰にも渡さないわ。」


 実は正式に『ミルキーウェイ』のパイロット候補生と決まった後にプロポーズと共に例え実機に搭乗することがあったとしてもリサの心を守るために出撃すると伝えている。

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