第2話 地球の未来はこんな人が握っているようです
「男の子ねえ。流石はあの人の子孫だわ。しかし、可愛いわねえ。皆が口を揃えて言うのもわかるわ。」
突然部屋に入ってきた女性から声が掛かる。
「お姉さんはどちら様ですか?」
姿も言動もオバサンっぽかったが、那須議長の怯え方からして逆らっては得策では無いと感じたので下手に出ることにする。
「蓉芙コンツェルンの女帝こと林幸子殿だ。」
「相変わらず私を怒らせたいようね。こちらの坊やは。」
僕の勘は間違っていなかったようである。那須議長を坊や呼ばわりする幸子さんは『Y1』の正妻や側室の誰からも名前を聞いた人物で側室の取り纏め役を担っているらしい。
「幸子お姉様、服部あゆむと申します。よろしくお願いします。」
「あらあら。もう食べちゃいたいくらい可愛いわ。礼儀正しいし、リサちゃんが羨ましい。譲ってくれないかしら。」
真っ赤に口紅が塗られた唇から不穏な言葉が出てくる。僕がリサに三行半を突きつけられたら、この人のペットにされてしまう。絶対にそれだけは避けたい。
「同族の幸子さんじゃ子供も産めないんだから、無駄なことするなよ。あゆむくんは引く手数多なんだからな。」
この女性も吸血鬼らしい。吸血鬼は子供が産めないのか。
「全く騙されたわよ。不老不死だというから、あの人の子供を産むのに長期戦に持ち込めると思ったのに子供が産めない身体にされるなんて。」
「始祖を脅してまで、吸血鬼にさせたくせに良く言うよ。あの人が起きるたび相手してもらっているんだから我慢しろよな。」
「わかっているわよ。ちょっと言ってみただけじゃない。最後の1日は渚佑子ちゃんに譲ってあげているのになんで『抱いてください』って言えないかな。2度目なんだからさほど難しくないでしょうに。」
「ちょっと待ってください。渚佑子さんって『Y1』とエッチしているんですか?」
それなのにあの態度、もしかしてカマトトなのだろうか。
「そうよ。幸せの余韻に浸りすぎて、うっかり『箱』にあの人を仕舞う前に見続けてしまいリサちゃんが出来てしまったのよ。知らなかったの?」
酷い酷すぎる。初めて抱いて貰った記憶が『Y1』から消えているんだ。もしかして抱いて貰ったこと自体を後悔しているのかもしれない。
「バカ幸子。全くスピーカーなんだから。それを言ったらダメだろ。」
「何故よ。あの子はちゃんと反省しているんだから2度と同じミスはしないわ。あの人はたった1度のミスで見放したりしないわよ。常々言っているじゃない。」
「渚佑子さんは幸子さんほど図々しくないんだよ。」
「それで偶に本気で怒らせて息抜きをさせているわけ? 良く身体が持つわね。貴方の愛情は遠まわしすぎるのよ。」
僕もそう思います。灰にされてまで息抜きさせるとかどうなんだろう。
「僕は別に・・・相手にもされていないし・・・何を言わせるんですか!」
「それで僕を呼び出した目的は何なんですか?」
ちっとも話を切り出さずに無駄話を続ける那須議長にイラつく。この人も忙しいだろうに何をやっているんだろう。
「リサから何か聞いていないかな。」
ああそういうことか。
「あれだけ豪語しておいて、ちょっと無視されたくらいで泣きついてくるなんて何考えているんですか?」
「だってこれだけ長い期間SNSもメールも電話も出てくれないなんて一度も無かったんだよ。ボディガードや渚佑子さんから無事だと報告を聞いていても心配になってくるじゃないか。」
実はリサに無視をするように勧めたのは僕だ。リサは許しているみたいだったのでムカついたのだ。確かにこの人流の愛情表現だということは解っているけど、あんまりじゃないか。
もしかしてリサが大雑把に育ったのはこの人のことをいちいち気にしていたら、キリがないからじゃないだろうか。
ごめんなさい短めで終ってしましました。正月なので許してください。




