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第10話 赤ちゃんプレイじゃ無いようです

「そろそろリサを女性陣に渡したほうが良いと思うんだが、あゆむくんがどうしても付いていたいというのなら止めないよ。」


 なんのことかな。那須議長のその言葉に気付いたかのように部屋から男性陣が出て行く。


「どうしても手伝うつもりなの?」


 そんなに睨まないで、怖いです渚佑子さん。


「リサと約束しましたから。」


「じゃあ、これを持ってね。」


「・・・ごめんなさい。僕が悪かったです。」


 渚佑子さんから手渡されたのはオムツだった。


「ダメよ。今回は女性が少ないの。彼女は妊娠中だから呼べないのよ。助かったわ。やると言ったからにはやってもらうわよ。」


 いつもは中田広報官の奥様が来るらしい。


「そうだ。本人にやって貰えばいいじゃないですか。」


 『Y1』ならリサの身体の隅々まで知っているはず、うんうん何も問題無いよな。


「本気で言っているの? あの人にこんなことをやらそうというの。それに無駄よ。あの人の『記憶』にはあゆむくんが残ったことはしっかりと覚えてしまった。リサが目覚めれば思い出すわ。」


 まあいいか。結婚すればお互いに年齢を重ねて認知症を患ったならばやらなくてはいけないことなのだ。練習だと思えばいいか。


 それにリサに対する女装への報復でもある。少しは恥ずかしいと思えばいいのだ。


「那須議長はどうやって寿命を延ばしているんですか?」


 渚佑子さんは力持ちだ。軽々とリサを持ち上げている。これも『勇者』だからなのだろう。僕はパンツを脱がせてオムツを穿かせるだけだ。ドキドキもしなければ、欲望も抱かない。単なる作業。


 着替えもスムーズにできる。おそらくやれと言われれば化粧も施せるに違いない。女装経験がこんなところに活きている。


 いや何で僕が着替えを全てやっているの。渚佑子さんはひたすら脱ぎ着し易いように持ち上げるだけだった。まさか、渚佑子さんも自分で着替えをしたことが無いお嬢様だったりして・・・ありえそう。


「アイツは吸血鬼なのよ。蓉芙コンツェルンの行く末を見守るだけのために吸血鬼の眷族に成り下がったの。しかもあの人は闇属性が強すぎて仲間に出来ないとか。役に立たないたらありゃしない。」


 やっぱり、嫌っている人間に聞くのが一番だよな。さらに謎が出てきたけど、これだけ不思議だらけだと何でも有りって気になってくる。異世界人やエルフが居るんだから吸血鬼が居ても構わないよな。


 詳しい話は追々聞けばいいのだ。


「私の寿命は私を異世界召喚した化け物から押し付けられたものよ。でも私が死ぬときはあの人をマイヤーさんと一緒に葬ってからと決めているの。だからリサと貴方を守り通すわ。例え火星に行くとしてもね。」


 着替えが終わり、部屋の外に出ていた男性陣を呼び込む。


「あ。終わったんだ。」


 僕が終わったことを告げると意外そうな声をあげる人物が居た。那須議長だ。やっぱりね。


「僕が義務を全うせずに出てくると思っていたんですか? 止めなかった言い訳は那須議長が考えておいてくださいね。」


「何で僕が?」


 あくまで惚けるつもりのようだ。まあいいけどね。リサに攻められるのはこの人なんだし。


「その場には当然『Y1』は同席しないわけですし、中田広報官には意味もわからなかったはずです。この場に手伝いの女性を用意できて、義務を全うしていない貴方が考えることです。僕は知りません。」


 傍観者として面白がるつもりだったんだ。最低だな。この人。


「それは本当かね。そういえば、いつもは数人の女性が居たはずだ。」


「それにこの人は貴方にソックリな僕に女装させてニヤついていたんですよ。信じられます?」


 どうせリサの『記憶』を見ればバレることだ。畳みかけるように全ての罪を押し付けるのが得策だ。なにせ『Y1』の『記憶』に残ることはリサが知るところになるんだから。


 まあこの人のことだから、僕に女装の経験値を積ませることでリサが今の状態になったときの世話をできるようにしておこうという親切心も含まれているのだろうが、今は考慮してやらない。回りくどいんだよな。


「ちょっ。そ・それは深い訳が・・・。」


「ほうほう、どんな訳なんだい聞かせて戴こうか。すまんね。あゆむくん。少し甘やかせ過ぎたようだ。少しばかりキツいお仕置きが欲しいようだよ渚佑子。良かったね大抵のことでは死なない身体を手に入れて。」


「嫌・・・ごめんなさい。それだけは勘弁してください。渚佑子さんの全力は死にます。」


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