6 伝説的な不幸男
小野寺くんは、ジェームスの住むボロアパートへと足を運んでいた。手に大量のゲームソフトの入った紙袋を持って。
「確か2階の奥から2番目だったな……よしっ!」
場所を特定し、いくぞぉ! と覚悟を決めた小野寺くんは前進する。しかし、突如右足は大地を踏み損ね、豪快に後ろに転倒するのを許してしまった。そこへ、小学生程度の少年が勢いよく走ってきて、彼の足はガツンと小野寺くんの頭を蹴り飛ばす。
「あ、どうりで重い感触だとおもったら人間の頭だったのか。俺はてっきり小さめのカボチャかスイカかと思ったぜー。一瞬目を疑ってしまったよ、HAHAHA!」
と笑いながら去っていってしまった。
小野寺くんは寛大な心の持ち主なので、『カボチャかスイカだと思って、誤って蹴ってしまったのだからしょうがないよね』と彼を咎めもせずに、地面に散らばってしまったゲームソフトを拾い上げる。
全て拾い終え、改めてジェームスの家に向かう。インターホンを鳴らすとすぐに出てきた。
「この前貸したばかりなのに、もう全部クリアしたのかよ。流石は伝説の男だなHAHAHAHAHA!」
ポンポンと小野寺くんの肩を軽く叩きながら、なぜか気分の高揚しているジェームス。やはり小野寺くんには彼がどういう人物なのか推し量ることは出来なかった。
あとは適当に相づちを打ち、ジェームスの家をあとにした。ゲームも返し終えもう特に何もすることはない。小野寺くんはさっそく帰ることにした。
しかし、突如左足がなにか質量のあるものにぶつかり、前のめりに転倒を余儀なくされた。起きあがると小野寺くんの白いシャツは赤くなっており、ところどころに黒い粒が付着していた。そして、側には鬼のような形相をした、まさに鬼と呼ぶにふさわしいババア――おばさんがその辺に座ったまま目を見開いてこちらを凝視していたが、やがてドッシリと立ち上がった。何か文句を言いたげである。たちまちおばさんの怒りは火山が噴火するかのごとく爆発した!
「あたしのスイカをどうしてくれるんだい、今すぐ弁償しな。現金じゃないと許さないわよ」
「ど、どうして、地面なんかに……置いておいたんですかぁ……」
小野寺くんは低姿勢で弱気な声で言う。
「よく見てみなさいよ、誰かさんが粉砕してくださったこのスイカの残骸を。それはそれはとても大きくて美味しそうなスイカだったのをこれでもかと物語っているでしょうが! 払って貰うわよ、現金でぇ!」
おばさんはほとんど息継ぎをしないで言った。正直聞き取りづらいのもあって、半分くらいしか聞いていない。果たして自分の疑問にきちんと答えてくれていたのであろうか、そのことすらも確認のしようがなかった。
「で、でも……しょうがないじゃないですか。間違って蹴ってしまったんですし……」
彼なりに必死に反論する……がおばさんはそれには屈しない。
「現金をよこしなさい。げ・ん・き・ん・をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
おばさんはあくまで自分の要求が通るまで、断固として小野寺くんの前に立ちはだかった。力の差(?)は歴然としていた。彼は財布からおばさんの要求する金額をしっかり手渡し、ようやくババア――おばさんは満足し、帰って行った。
……これではほとんど恐喝のようなものだ、と彼は思った。もしかすると新手の詐欺の可能性もあると彼は推測していた。しかし真相がどうであれ、彼の財布からスイカ代としておばさんの手に渡った金だけが事実であった。本当のところは分からない。
彼はジェームスの言うような伝説を生み出す男などではなかった。小野寺くんは行く先々で災難に遭遇し、それに彼なりに対応しているだけなのだ。彼ほど不幸な人間はそういないだろう。
「まあ、こんな日もあるよな……」
と言って、青白い空を見上げた。綺麗だった。
やがて、1羽の鳥が飛んできて、彼の顔面にフンが直撃した。汚かった。
あれこれ試験的に書いてます。どうもすみません。次もなるべく早めに書きます・・・!




