先輩君と後輩さん
放課後の教室に男女が一組。
「先輩。」
「どうした後輩。」
「先輩はモブキャラでしたよね。」
「ああ、名前も無いモブキャラだ。後輩だってそうだろう。」
「...ええ。ついこの間まではそうでした。」
「この間までってことは今は違うのか。」
「はい。」
「へえ...、それでどんな立場になったんだ?」
「エロゲーのヒロインです。」
「そうか。後輩はクールキャラだし今需要は高いだろうな。良かったじゃないか。」
「あんまり嬉しくありません。」
「なんでまた。」
「知っての通り先輩と私は付き合っています。モブ同士だから許されていました。それなのに突然よく知りもしない男と一線を超えることが確定してしまって嬉しいわけがありません。」
「まあ、しかたないさ。それがこの世界のルールだから。」
「きっと先輩は私の元彼としての出演なんでしょうね。」
「その可能性は高いだろうね。」
「...先輩は冷静ですね。」
「そうでもないよ。ほら、怒りと絶望と悲しみで手の震えが止まらない。」
「ほんとだ。」
「でもどうしようも無いからね。」
「先輩が私を取られて悔しがってることがわかってちょっと安心しました。」
「そうか。」
「はい。」
「まあ、学園モノの主人公なんだし見た目も性格もいいだろうから身を委ねてもいいんじゃないか。」
「別段魅力を感じたりはしませんが...まあ、仕方が無いですよね。」
「世の中ってのはどうしてこんなに不条理なのかねぇ...。」
2人はそれぞれ帰路へと着いた...。