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ウチの妹もいろいろおかしい!!

 短いです


「ただいまー……はぁ」


 まさか初日からこんなにも濃い一日になるとは思ってもみなかった。

 HR後、すぐ下校となり祐希は入学式に来ていた両親と帰った。ウチの親は、両方ともちょっとした事情でやむなく俺の入学式を諦めていた。

 自室で着替えてベットで横になり、今日のことを振り返る。なんだかんだで知り合った高見沢祐希のこと、生徒会長如月香のこと、そして今日の俺の立回りのこと。


「…………(ボスっ! ボスっ!)」


 枕を人の腹に見立てて無言の腹パンを繰り返す。


「あぁぁぁぁぁぁ!! 変な目立ち方しちまったぁぁぁぁぁ!!」


 ねぇよ、あれはねぇよ! うわぁぁぁ、すげー恥ずかしいぃぃぃぃ!!


「来週からどんな顔して教室に入ればいいんだよ……いや、クラス替えでワンちゃんあるか――大丈夫、まだやり直せる」


「なにが大丈夫なんですかお兄様?」


 すっ、と音もなくベットの下の隙間から顔を覗かせた姫カットの少女。なんと、我が妹なのである。


「あぁ……凛か。帰ってきてるってことは母さんから電話がかかってくるな」


 こいつが何処から侵入して、そして何時間ほど潜伏していたのかなんて無粋な質問は今さらしない。こいつに俺の常識が通用しないと悟っているからな。


 予想通りすぐに母親からの着信があった。ちらりと妹を流し視るとにこにこ愛くるしく笑いながら俺の隣に座っている。

 俺は複雑な心境で電話に応答した。


「はい、もしもs『大変よ悠ちゃん!! 凛がまた病院を脱け出したの! もしまたあの子になにかあったら母さん……母さん!』落ち着け母さん、凛ならここにいる」

『……凛、帰ってるの?』


 スマホを凛に向ける。


「ふふふ、お兄様の居るところに凛ありです」

『もう、凛。退院の日にまでなんで脱け出すのよ』

「お兄様の初高校制服姿を拝む為です。嗚呼、三日前の事故が悔やまれます。入院なんてしなければお兄様の入学式をしっかり網膜に焼き付ける事ができたというのに……あの運転手、呪い殺せそうです」


 一部言葉は聞かなかったとして。

 そう、凛は三日前に事故にあった。青信号を渡っていたところ、猛スピードで突っ込んできたトラックに跳ねられた…………。幸い、衝突時に腕で頭を守ったのか両腕の骨折だけですんでいた。運転手がね。

 え、妹? 着地に失敗して足首を挫いただけだったけどなにか?。

 病院に無理矢理押し込んで検査を兼ねた入院をさせたが至って健康と診断された。

 妹は人間を辞めてる(確信)

 トラックの運転手の方が酷いケガとかもうこれどっちが被害者かわかんねぇな。


「凛は帰ってきてるけど病院に引っ張っていった方がいい?」

「お兄様と手を繋いでですか!!」

 君は少し黙りなさい。

『ええっと、どうしましょうあなた。

 ………………うん、うん。

 大丈夫だそうよ? そのまま家で待ってなさい』

「りょーかい」


 スマホの通話終了の画面をタップして充電器を差し込んでテーブルにおいた。


 ……さて。


「お兄様、学校はいかがでしたか? クラスは何組だったのでしょう? お友だちは出来たでしょうか? 可愛らしい女性に目移りしたりしていませんよね? もし気になる女性が居たのでしたら身体的と名前と住所を教えていただければカチコ……こほん、ちょつとご挨拶に伺おうかと思いまして………ああそれと――」

「一気に質問するな! そして最後が物騒だぞお前」

「お、お前!?」


 よろりと倒れかけた体を支えるようにベットに手をつく凛。なけなしの儚さをアピールしてるように見えなくもない。

 まさかこの程度で傷ついたんだろうか? いや、我が妹に限ってそれはないか。


「こ、ここ、これは夫が妻を呼ぶときの『お前』ととってもよろしいのですねお兄様! いえ、あなた!!」

「よろしくないです」


 今度はガーンと効果音が聞こえてきそうな顔をして俺の枕に倒れこんで泣き真似を始める。

 どうしてだか俺は妹に昔から好かれていた。最初に覚えた言葉がおにいちゃんというレベルの徹底振りはきっとこうなることの示唆だったのかもしれない。因みに最初に描いた絵も俺で最初に書いた字も俺の名前。

 両親の嫉妬を肌で感じたこともしばしばあった。息子に妬くなよな。


 妹の好きは家族的な好きではなくガチな方の好きだということは解っているんだが、どうにかこいつには普通の恋愛というものをしてほしいという今日この頃である。

 この兄心を理解してくれないかなぁ、と凛に目を向ける。


「ふひひっお兄様の匂いがこんなに沢山……。やべぇ、たぎってきた」


 もうダメかもわからんね。

 とりあえず俺は妹を枕から引き剥がす。

 引き剥がそうとするとものすごい奇声を上げていたが、そこは兄の優しさで聞かなかったことにするのだった。おおよそ人間に発することは出来ない音だったと明記しておく。


 まぁ、南原家ではこれが日常なんだけどな。

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