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第6話「旅に出よう!」

 朝食は硬い黒パンと山菜のスープだった。そう、ファンタジー系のアニメや漫画でよく聞く黒パンだ!

 確かに硬めだが噛むほどに旨みを感じる、腹持ちも良さそうだ。スープに浸しても歯ごたえが残るのでとても合う。というか、スープも尋常じゃなく美味しい。色々な味が混ざり合って、肉を使っていないのに濃厚な旨味が凝縮されている。

 メシマズがファンタジーの定番だと思っていたが、そうではなかったらしい。


 朝食を終え、食器を片付け、魔術の練習前に話を切り出そうとする。メイもなぜかソワソワしている、こちらの気持ちを察してくれている…のか?

 冷静に考えると異性の相手に「一緒に旅に出よう」と伝えるなんて、告白に近い気がする。何とも言えない緊張感がこみ上げてくる。静寂が訪れる。


 さすがにこのままではいけない、なんか申し訳ない、勇気を振り絞って話しかける。


「「……あの!」」


 声が重なった。メイからも話があったみたいだ。


「えっと……俺の話は最後でいいから、お先にどうぞ」

「え?あ、はい、それでは私から」


 メイが話し出す。内容は結界が完全に消えていることと、近くに人がいた痕跡が残っていたことだった。それとーーー


「私達の種族、妖狐族について知って欲しいんです」


 そう言って真剣な顔で話し始めた。

 

 遥か昔、世界を二分する大きな戦争があった。魔王と名乗る存在は魔人種を従え、この世界を滅ぼそうとした。人間種、亜人種、獣人種は互いに協力し、三種連合を立ち上げ、これに対抗した。そして、最後は勇者と名乗る存在が魔王を討ち取ることで世界は平和になった。

 しかし、その戦いの最中にとある一族が裏切りを繰り返していたのである。その一族こそが、獣人種妖狐族だ。という内容だった。

 

 始めは三種連合側で奮闘していたのだが、魔王側が優勢になると同時に裏切り、敵となったらしい。しかし、終盤で三種連合が優勢になると味方として戻ってきたという。


「なので、私達の一族は裏切りの象徴とされ、迫害されています」

「………」


 そんな大きなものを背負っていたとは、知らなかった。平和な日本で生きてきたため、こんな時にかける言葉が見つからない。何かを言わなければと思う、だが、言葉が出ない。


「すべての種族が妖狐族を嫌っています。村も街も、姿を隠さなければ入ることもできません。人と話すこともできません」


 メイがどんどん俯いていく、声の明るさも消え、耳も垂れている。今にも泣きそうな顔だ。


「すみません……こんな話になってしまって。えっと……つまり…今日にでも旅立たないといけなくて、でも、行くところ探すの大変だな〜っていう話です!」


 無理矢理明るく取り繕っているが、目尻に涙が溜まっている。見ているのが辛い。だが、かける言葉が見つからない。


「そういえば、ユウトさんのお話は何なんですか?」


 しばらくの静寂の後、メイが聞いてきた。気を使わせてしまった。こんな状況で切り出していいものかわからない。だが、これ以上黙っているほうがダメだ………言おう!


「メイ!」

「は、はい」

「一緒に居たい!俺と旅に出よう!」


 力が入りすぎた!本当に告白のようなニュアンスで言ってしまった!「一緒に居たい」は必要ないんじゃないか?でも、取り繕う言葉が見つからない、考えがまとまらない。不安に思いながらもメイの様子を伺う。

 

「………」


 驚いて目を見開いている。それはそうだろう、シリアスな告白の後に愛の告白のような言葉をかけられれば誰でも驚く。


 しばらくすると冷静さを取り戻し、小さな声で問いかけてきた。


「……いいの…ですか?」

「うん」


 涙をこぼさないよう少し目を細めている。むしろこちらこそ「いいの?」と聞きたいくらいなのだが…


「妖狐族…ですよ?」

「正直、狐の耳とか尻尾とか凄い可愛いから、むしろありがたいよ」


 笑顔で何を口走っているんだオレ!とっさに本心が出てしまった。


「…裏切り者の…一族ですよ?」

「遥か昔の話でしょ。それに、一族がどうだろうとメイはメイだし」

 

 次は普通に返せたと思ったのだが、メイはポロポロと泣き出している。何かいけないことを言ってしまったのだろうか。


「……一緒に居ると……迷惑がかかるかもしれませんよ?」

「むしろ俺の方が迷惑かけそうだけどね」


 なにせ異世界から来たのだ。共に旅をするなら、これからも色々とメイから教わる必要がある。


「う、うぅ……うわああああん」


 !?、ガチ泣きだ、どうすればいいのかわからない。何がいけなかったのだろう。ひとまず、撫でればいいのか?なんか子供をあやす感じになっちゃいそうだ。でも、身長も小さいし幼顔だから、大丈夫だろう、たしか15歳だけど。


 そう思いながら席を立ち上がり、メイの頭を優しく撫でる。するとーーー


「うわああああん!!」


 さっき以上のガチ泣きだ、そして、泣きながら抱きついてきた。


「グスッ…よろじぐ…おねがいじまず」

「うん、こちらこそよろしくね」


 あたふたしながらも、全力のスマイルでなんとか返答できた。だが、女の子に抱きつかれたのなど初めてだ、しかも泣きながら、どうすればいいのかわからない。メイの顔が押し付けられている部分はびちゃびちゃだ。

 あと、感触がとても柔らかい、見た目よりもさらにあるのか!?どことは言わないが……こんな時に何考えてんだオレ!!意識しないよう、全力で理性を保つ。


「うぅ……うぅ……」

「あ、あう……」


 泣き続ける少女とろれつの回らない青年。いずれ世界を征服する二人の旅が今、始まろうとしていた。


 

 冒険シーンが好きな皆様、お待たせいたしました、やっと旅立ちです!

 ですが、次回は早速トラブルを予定しているのでまだ街にはつきません。申し訳ないです。

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