第3話「魔術を覚えましょう」
「えっと、ひとまず、ステータスについてもう少し説明しますね」
我に返ったメイが話し出す。さきほどまで「ハイステータスにマルチスキルでマオウで・・・」と呪文のような呟きを繰り返していたので不安だったが、無事に調子を取り戻したようだ。
「まず、いきなりクラスがC-3というのは、異常です」
「やっぱりそうなんだ・・・」
「・・・はい、カルマ族の潜在能力はそこまで高いと聞いたことはありません。潜在能力の高いと言われる種族で才能のある者でさえ、最初のクラスはD前後だと聞きます。つまり、前世のユウトさんの経験値を受け継いでいるのか、その体自身の力である可能性が高いですね」
前世は喧嘩もしなかった上に武術を習った経験も無いので、この体が凄いのかもしれない。
「次にスキルですが、どちらも聞いたことがありません。そもそも、文字化けしているスキルなんて見たこともありません。使い方も本人が経験で理解していくものなので、申し訳ないですが教えられないです」
「そうなんだ、『閻魔の目』は目がすごく良くなるとかなのかな?メイの嗅覚向上みたいに集中すれば使えそうだよね」
そう思いながらステータスカードに反射した自分を見つつ
(閻魔の目、発動!)
と、 心の中でそう叫ぶ、するとーーー
ユウト
クラス:C-3
種族:『カルマ族(白)』
職業:『魔王』
スキル:『₺∪₢₭』『閻魔の目』
ステータスカードと同じ表記でステータスが見える、視線をずらしても視界の端にステータスが見える。
「うおっ!?」
二つのスキルに意識を集中すると、さらに文字が追加される。
『₺∪₢₭』
⅓⅔⅕⅖⅗⅘⅙⅚⅛⅜⅝⅞
『閻魔の目』
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「うおおっ!説明が見える!」
「え?何のですか?」
「『閻魔の目』っていうスキルを使ったら、なんか、スキルの説明が見えるようになったんだよ。あと、ステータスカードがなくてもステータスが見えるようにもなった」
「なるほど、『調査系』スキルなのかもしれません」
「『調査系』?」
「はい、『戦闘補助系』や『回復補助系』などなど、スキルにも色々な分類があります。それで、文字化けの方はどういったスキルなんですか?」
「そっちは全然わからないや、説明も文字化けしてるみたい」
「魔王の職業説明は見れますか?」
「うん、やってみる」
視界に映るステータスの魔王の文字へ意識を集中する、するとーーー
『魔王』
魔術職の頂点。魔術を極めし王に与えられる職業。
・魔術習得速度(激増)
・魔力感知能力(激増)
・魔力操作能力(激増)
・魔術発動条件無視
「えっと、魔術職の頂点で、魔術関係の色んなものが激増っていう効果みたい。あと、『魔術発動条件無視』っていう効果もあるかな」
「・・・・・・」
驚きを通り越して引いている、少し心が痛い。
「えっと、ひとまず、魔王の職業を持つことは隠した方がいいかもしれません」
「え?そうなの?」
「はい、この世界は、数百年前に“魔王”を名乗る1人の魔術師に滅ぼされかけたことがあるんです」
それから、メイは知っている限りの言い伝えを教えてくれた。要約すると、
数百年前に突然、魔人族という種族が結束して次々と国々を滅ぼしていき、それを煽動した者こそ“魔王”と名乗る存在だったそうだ。しかし、同時に現れた“勇者”と名乗る存在によって倒された。
というよくあるファンタジーなお話である。その話を聞いて異世界へ来たことを改めて実感するが、問題はそこではない。
「その言い伝えによって“魔王は悪逆非道”“悪の象徴”という印象が強いです。まさか魔術職の頂点だったとは知りませんでしたが、[賢者]こそが魔術職の頂点言われているので、信じてくれるかはわかりません。それと、イタズラだと思われるならまだいいですが、勘違いで変な輩が絡んでくる可能性もあります」
つまり、過去に世界を滅ぼそうとした者が魔術職の頂点である“魔王”という偽名で暴れまわってしまった為に、「魔王って実は魔術師の上位職業なんですよー、安全ですよー」と言っても信じてくれるかわからないということだ。その上、魔王のように悪逆非道なやつだと思われ絡まれる可能性もある。呪文のような呟きをしながらも冷静に分析し、自分のことを信じてくれたメイに改めて心の中で感謝する。
「でも、どうやって隠せばいいの?ステータスカードは身分証みたいなものなんだよね」
「はい、街への入る時や国営の施設利用の時には必ず確認されます。ですけど、私が種族を隠しているように、ステータスカードには項目を隠す機能があるんです」
そういえば、メイのステータスカードには種族名が表示されていなかった。
「ですが、名前と職業とクラスは必須の確認項目なので、隠すと余計に怪しまれます」
「え?そしたらダメなんじゃ・・・」
「はい、なので、魔術を覚えましょう」
イベントを交えながら書こうと思いつつ、全く交えられませんでした。説明回なのでつまらないかもしれませんが、説明書だと思ってさらっとでも読んでいただけると幸いです。
それと、いまはスマホで書けないかと足掻いています。スペースの開け方がわからないので少し見栄えが悪いかもしれませんが、ご了承ください。