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第1話「服をください」

「おおっ、なかなかいいかも!」


 あてもなく、素っ裸で森の中を散策することかれこれ一時間。誰かに見られれば間違いなく警察を呼ばれるような変態行為を行いながら森を真っ直ぐに駆けていると、大きな葉が生い茂る木を発見した。


「丈夫だし、履き心地も、まぁ悪くないかな」


 木のツタをベルト代わりにし、腰に葉っぱを巻き付ける。上半身は裸だが、見方によっては民族衣装のようにも見えなくはない。そして、消えかけていた羞恥心が戻ってくる。


(閻魔大王も服くらい用意しといてくれよ、変な性癖に目覚めたらどうすんだ)


 頭の中で文句を言いながら散策を再開する。次の目標は話のできる人を見つけることだ。


「それにしても、凄い体だな」


 散策しながら改めて自覚する、1時間以上走り続けても息切れ一つしないほどの体力があり、裸足でも小石や小枝が全く気にならないほど丈夫だ。

 ただし、白髪と色白の肌にはいまだ慣れない。身長は生前と変わらないので体を動かすことには慣れたが、時折水たまりや池に映り込む全身色白のアルビノな姿に毎回驚く。


 そんなことを考えながら進むことさらに2時間、さすがに空腹を感じ始めてきたころ、何かが駆ける音が聞こえてきた。


「人の足音か?」


 もともと生き物が少ない土地なのか、合計で3時間以上走り続けても生き物に全く遭遇しなかった。猛獣にでも襲われたら大変なので最初はありがたいと思っていたが、着るものが手に入ったことによるわずかな安心感とともに、若干の寂しさが芽生え始めていたのだ。

 転生してから初めて出会う何かに少し不安を感じつつも、音のするほうへと近づき木陰から観察する。すると


「待てよぉ嬢ちゃん、悪いようにはしねぇぜぇ!ヘヘヘ」

「お前は右から回り込め」

「へいっ!」


 フードを被った1人の少女が武器を持った3人の男に追われているようだ。男達はセリフや恰好からして明らかに悪党だろう。

 そして、どうやらこの世界の言語は理解できるみたいだ。

 人が存在しているのか言語が通じるのかといった不安は解消されたが、今はそれどころではない、


「ま、まてっ!」


 自然と体は動き、少女をかばうように男たちの前へ出る。相手は武器を持っている上に人数差もあるため、そのまま向かってこないかと不安だったが、男たちは驚いたのか歩みを止めて様子をうかがっているようだ。

 それはそうだろう、森の中でいきなりアルビノの青年が飛び出してきたら誰でも驚くはずだ。


「何でこいつぁ半裸なんだぁ?」

「腰に葉っぱ巻きつけてやがりやすぜ」


 下っ端っぽい2人がそうつぶやく。

 そっちか!

 確かに半裸で葉っぱ1枚の怪しい恰好ではあるが、アルビノに驚いているものだと思っていた。


(アルビノってこっちの世界では珍しくないのか?)


 疑問に思いながらこちらも様子をうかがっていると、リーダーと思われるガタイのいい男が剣を構えながら一歩踏み出してきた。


「白いカルマ族か、そこをどけ、逆らうならば容赦しない」

「ど、どかない、事情は知らないけど、この子が・・・大変だ!」


 リーダーらしき男の言葉に、締まりのないセリフを返す。


(大変だ!ってなんだよ、確かにそうだろうけど、どうせならもっとかっこいいセリフがあるだろ!全然思い浮かばないけど。あと、カルマゾクってなんだ?ってそんなこと考えてる場合じゃない!)


 絶望的な状況のなか軽く現実逃避してしまったが、すぐさま打開策を考えようと思考を巡らせる。しかし、状況は待ってくれなかった。


「ほーらぁ」

「痛っ!」


 男の一人が矢を放ってきたのだ、左胸に鈍い痛みが走る。同時にリーダーらしき男が剣を振りかぶって迫ってくる。


(打たれた、痛い!やばいやばいやばい、切られたら痛いどころじゃ済まない!やばい!)


 冷静に物事が考えられない。だが、本能的に導き出した答えはやはり、前世の生き方と変わらぬものだった。


「君は逃げて!」


 少女にそう言い放ち、剣を振りかぶってくる男のほうへ突進していく。

 導き出した答えは「あの子が逃げる時間だけでも稼ぐ!」というものだ。


 この生き方を気に入った閻魔大王が与えてくれた第二の人生。ならば、最後までこの生き方を貫こうと決意する。わざわざ与えてくれた2度目の人生を手放してしまうことになるかもしれない罪悪感が頭をよぎるが、今はそれよりも目の前の状況だ。


「死ね!」


 振り下ろされる刃が迫る。その時、死が迫る最中の集中力のおかげか、無駄の少ない動きでどうにか刃を避けることに成功する。

 そして、そのまま剣を持った男を突き飛ばす。少しでも距離が取れれば充分だ、あわよくば転んでくれて、1秒でも時間が稼げれば最高の結果だろう。

 しかし、予想だにしない結果が次の瞬間訪れる。


「「!!??」」


 突き飛ばされた男は木をへし折りながらものすごい勢いで吹っ飛び、3本目の木に大きな亀裂を刻みながらめり込んだのだ。

 白目をむき出しにし、泡を吹きながらうめいている。どうやら生きているようだ。

 突然の出来事に残りの男達は唖然としている。横目で振り返ると、少女も驚きのあまり腰を抜かしているようだ。


 理屈はわからないが、この体は相当な筋力もあるらしい。少し冷静になり左胸を見てみると、矢で射抜かれたと思った場所にはわずかな内出血しかない。相当な耐久力もあるようだ。そして、このチャンスを逃す手はない。


「お前たちも木にめり込ませるぞ!」


 驚くほどセンスのないセリフだが、あまりの光景に残りの2人は怯えている。


「ちっ、仕方ねぇ兄貴を連れてずらかるぞぉ」

「へ、へい!」


 さすがにこんな怪力を見せつけられては挑む勇気はないらしい。木にめり込んだ兄貴とやらを回収しつつ、そそくさと走り去っていく。本気で死を覚悟したが、少女共々無事でいられてよかった、ひとまず一件落着だろう。


「あ、あの、助けてくださり本当にありがとうございます!」


 振り向くと少女がお礼を言ってきた。腰が抜けたまま頭を下げているため、土下座のような体制になっている。葉っぱ1枚の青年に土下座する少女、事情を知らない誰かが見れば間違いなく警察をよ呼ぶだろう。


 その後、いくら断っても何かお礼がしたいと詰め寄ってくるため、今1番ほしいものを遠慮なく要求することにした。



「服をください」




 読んでくださりありがとうございます。

 まだタイピングが下手なので、わずか2000文字程度でも結構な時間がかかってしまいます。出来るだけ早く投稿できるように、少しでも速くなりたいです。

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