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第12話「トロダケなのです!」




「ひえぇ〜、助けてなのですー!」

「お前どんだけ誘き寄せてんだよ!『雷球(サンダーボール)』!」

「「「「ギャンッ!」」」」


 全く球じゃない雷撃が10匹の一角狼を貫く。

 一角狼とは狼型の魔獣で、単体ではDクラスの強さだが、群で襲って来るとAクラス相当にもなる危険な魔物だ。


「いやはや助かったよ、さすがはB-3クラスだね。それにしてもユウトくんの魔術は凄いな、そんな『雷球(サンダーボール)』見た事ないよ。しかも無詠唱で使えるなんて…」

「コ、コツが有るんですよ、はははは」


 群れを一撃で仕留めた事に驚いているようだが、内心ではそれを行った自分が一番驚いている。

 まさかこんなに威力があるとは思わなかった。さらに、頭の中で思うだけで正確に電撃を飛ばすこともできた。

 何気なく使っているが、法則を理解しきれていない。


「後で練習が必要だな」


 静かにそう誓うのだった。






 なぜ森の中で魔物狩りをしているかというと。

 サラと職探しをしていた際にフードファイトを見ていた冒険者の2人が声をかけてくれたのだ。

 クエストを受注したのだが仲間が時間になっても待ち合わせに来ないらしく、2人で行くには不安な難易度なので手伝って欲しいとの事だった。

 そして、クエストはDクラス推奨の難易度だったので手伝えると思い、その話を受けたのだ。


「さてと、ユウトくんとサラちゃんのお陰で一角狼は倒せたし、素材を剥ぎ取って持って帰るとしよう」

「そうね、戦いでは役に立たなかったから、剥ぎ取りは私達がやっとくわ」


 同行している2人の冒険者は、男の双剣使いがタブルさん、女性の魔術師はアリサさんだ。

 2人は第6級冒険者で共にクラスはD-2らしく、同じクラスの連れがあと2人いるらしい。

 

 一角狼はその角が討伐証明部位となり、角と同様に毛皮も高く売れる。

 その角を、タブルさんとアリサさんは剥ぎ取り用のナイフで手際よく回収している。正直、訳のわからない『雷球(サンダーボール)』よりその技術の方が自分にとっては凄いと思う。

 少しグロいが、今後のためにと近くで見学させてもらった。


「それにしても、この数を一撃なんて…本当に凄いわね。ユウトくんは賢者なの?」

「まぁ、そんな感じですね」


 やはり同じ魔術師として職業(ジョブ)が気になるらしい。

 賢者の上の魔王です、なんて言えない。


 ちなみにクエストの討伐依頼は3匹だったが、倒しすぎた。




「よし、採り終わったな。帰るとしようか」

「そうね」

「はい」

「はいなのです」


 このパーティーのリーダーはタブルさんだ。

 サラを含めた3人には1級冒険者という事は黙っており、ランクがB-3という事だけ伝えている。なのでリーダーを頼まれたのだが、1級という事がバレると困るのでタブルさんにお願いした。


 リーダーであるタブルさんは門番と仲が良かったので、ステータスカードの確認無しに通ることができた。

 ハラルドさんの時といい、本当に運が良いい。




「ちょっと、あれ!」

「あ、あれは!!」


 タブルさんとアリサさんが驚いている。

 横にいるサラは涎を垂らしている。


「お前何涎垂らしてんだよ」

「なっ!ユウトさんは知らないのです?!」

「何を?」

「何を?って、トロダケなのです!」


 トロダケ?

 サラが指差す方を見ると、足が生え、茎の部分に顔のついたキノコが歩いていた。

 大きさは1メートルほどで、傘の部分から角が生えているので魔獣のようだ。

 なんか気持ち悪い。


「あれは伝説の植物型魔獣、トロダケなのです!口に入れるとトロけるように旨味が広がり、貴族の食卓にも並ぶ事がない程の最高級食材なのです。捕らえるのです!!」


 解説を終えると同時にサラが飛び出していった。


「は、速い!」

「援護します!我が命に応じ、彼の者の動きを止めよ、『麻痺(ショック)』!」


 アリサさんが無属性魔術の『麻痺(ショック)』を放つ、その名の通り相手を麻痺させる中級魔術だ。

 しかし、こちらに気づいたキノコが華麗にそれを避ける。

 凄い反応速度だ。


「体勢は崩れたのです、『拳撃波(けんげきは)』なのです!」


 回避して体勢を崩したキノコにサラが攻撃を加える。あれは、拳から衝撃波を放つ広範囲攻撃らしい。

 拳で闘う職業(ジョブ)である『拳人』は、『拳人』→『拳闘士』→『拳帝』という形で進化し、サラはニ段階目である『拳闘士』という職業(ジョブ)なのだ。


 しかし、一瞬で体勢を立て直したキノコはサラへ向かって行き、すれ違う形で衝撃波を避けた。

 放射状に放たれる衝撃波は、発生源たる使い手に近づくにつれ範囲が狭くなる。技の特性を一瞬で見極め、最善の回避方法を選択したのだろう。

 見た目はキモいが、動きは華麗だ。


「まずは機動力を奪う!」


 そう言い、タブルさんが投げナイフを複数放った。

 サラの拳撃を回避した直後を狙った見事な一撃だ。だが、キノコは空中で体を捻ることでほとんどのナイフを躱した。

 恐ろしい反応速度と回避能力だ。見た目がキノコで無ければ見惚れていただろう。


 しかし、流石に限界があったのかナイフの一本が足へ命中している。


「ナイスです。『雷球(サンダーボール)』!」


 その隙を逃さず『雷球(サンダーボール)』を放った。

 しかし、キノコは残った足で華麗な側転を見せ、足を掠める程度で直撃には至らなかった。だがこれで両足を使えない筈だ。


「トドメなのです、『拳撃衝(けんげきしょう)』!」


 いつの間にかキノコの背後まで迫っていたサラが、キノコを地面へと叩きつけた。



「やったのです!トロダケなのです!」

「凄いな、本当に倒せるなんて…」

「一角狼を連れてきた時も思ったけど、あの子、凄い敏捷性ね」


 ダブルさんは倒せると思っていなかったのか、驚きつつも嬉しそうだ。アリサさんはサラの敏捷性に驚いている。


 聞くと、トロダケは戦闘力こそ無いものの、物凄い敏捷性と反応速度で逃げる事に特化した魔獣らしい。

 確かに難敵だった。

 気持ち悪いと思ってしまった事は心の中で詫びるとしよう。

 敬意と謝罪を込め、一礼する。


 それにしても、これが本当に美味しいのか?

 正直食べたくない。


「どうしようか、食べれば確かに美味しいけど、売ると相当高いん…」

「え?!」


 タブルさんの発言に食い気味で反応してしまった。だが、今は金が欲しい!










 無事にアルツへと帰還した。

 食べてみたいとせがむサラを何とか説得し、トロダケをギルドで売却すると金貨4枚にもなった。

 クエストの報酬や他の売却素材と合わせると、金貨4枚と銀貨20枚。

 4人で山分けしても1人あたり金貨1枚と銀貨5枚、手が震えた。




 換金後はダブルさんとアリサさんと別れ、今はサラと宿の前まで来ている。


「色々とありがとうございましたなのです」

「此方こそ、サラのおかげで凄い臨時報酬が手に入ったよ。ありがとう」


 資金は十分手に入ったので、サラはアルツを1人で観光するそうだ。

 もう日も沈んでいるので、まずはどこかの宿屋に泊まるつもりだろう。


「それじゃあ、俺はここの宿屋だから。またな」

「はい、またななのです!」


 そう言い残し、サラは夜の街へと駆けて行った。






 今日は沢山報告があると思いながら部屋の扉を開ける。

 すると、メイが驚きの表情で固まっていた。


「ただいまって、どうしたの?」

「ユウトさん…これ…」


 メイが指差す方を見ると、朝作った砂糖と塩が残っていた。

 スマホのメモ機能で書いているのですが、操作を誤ってストックの一部が消えました…絶望。


 バックアップはしっかり取りましょう!!

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