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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
二章

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81/87

エデン絶対潰す君

「あれは……?」

 

 やがて魔法陣から姿を表したのは,人の形をした、岩の塊。

 ただの岩ではないようで、ところどころ表面が怪しげにギラギラと光っている。


 全長にして、俺の背丈の三倍はありそうだ。

 そんなのが、敵意たっぷりに逆三角形の光る目でこちらを見下ろしてくる。


 岩人形は何も言葉を発しなかったが、代わりにマシューの高笑いが上から降ってくる。


「ふはははっ、どうだ、驚いたか! これがアークエレメントゴーレム、またの名をエデン絶対潰す君だ!」

「なんだそのネーミングは」


 う~ん、名前はともあれ非常にお強そうだ。

 まだあっちが優勢だったのに、まさかあんな大嘘を真に受けられて変なのを呼ばれてしまうとは。


 ハッタリスキルが高すぎるのも考えものだ。

 平然とした顔で親の追及を大嘘でかわして、ニート期間を伸ばしてきた経験が裏目に出たか。

 

「ふっ、知りたいか? なぜならこのゴーレムには、聖属性の攻撃は一切通じない! すべて無効にする! よって聖剣だろうが聖女だろうが、全く手も足も出ないのだ!」

「なんだと?」


 それすごいヤバイじゃん。

 マジでエデン潰しに来てるじゃん。


 ……いや待てよ、ただのハッタリかもしれん。

 そんなもんあったら、エデンなんぞとっくの前に潰されてるだろ。

  

 俺は隣でゴーレムを見上げているアムに尋ねる。

 コイツ、ついにレナの縄を解くのをあきらめてすました顔をしている。


「おいアム、どうなんだ?」

「知らんな、あんなもの見たこともない」


 アムも知らないとなると、いよいよ怪しい。

 ハッタリ合戦で俺が負けるわけにはいかん。


 とりあえず鑑定スキルを使ってみるか。

 俺はゴーレムに向かってどんぶり鑑定スキルを発動した。



 ―――――――――――――――――――――


 名前 知らん!


 種族 知らん!


 HP 知らん!

 MP 知らん! 


 筋力 知らん!

 体力 知らん!

 敏捷 知らん!

 知力 知らん!

 運  知らん!


 ―――――――――――――――――――――


 

 お前ふざけんなよマジで……。

 つまり、未知数の魔物ということなのか。

 

 試そうにも聖剣技スキルはクールタイムだ。 

 この状況、これで最後だと思ってMP使い果たした後に、ラスボスが変身した時の感じに似ている。

 

「さあ、おとなしく聖剣と聖女を渡せ! そうすれば、エデンの存続と人民の身の安全は保証しよう」

「ん? 保証して、それからどうするつもりなんだ?」

「そして魔族と人間が共存する、新エデン国を樹立する。その支配者として、私がエデンの頂点に立ち、我々は魔族領から独立するのだ!」


 人間を駆逐したいとか、そういうわけじゃないのか。

 

 俺としては今の生活を保証してくれるのなら、多少トップが入れ替わったところで別にどうでもいい。

 王様の評判とかも、あまりよくないみたいだしな……。

 

 ……うーん、降伏しちゃおっかな。

 ああ、でもそれだとレナがエロ同人みたいな目にあってしまうのかな? 

 

「クク……、それともこのゴーレムと私達魔族を、すべてこの場で打ち倒してみせるか?」


 いやムリでしょう。

 さっきからフシューフシュー言って煙吐いてるそちらの方、メチャクチャ強そうなんですが。


 しかも王の間にいた魔族たちも、騒ぎに気づいてぞろぞろ周りに集まってきちゃったし……。

 こいつらマシューが号令したら、わっと襲い掛かってくるんじゃないかね。

 

「降参なんてしないよ!」


 しかしその時、漂い始めたあきらめムードを吹き飛ばすような、力強い声が響き渡った。


 そう叫んだのは、余計に縄がこんがらがったまま、みの虫のように地面に転がったレナだった。


 セリフと格好が合っていない。いま一番降参した方がいい状態の人だ。


 だがそれだけはっきりと言い切るからには、何か奥の手があるのかもしれない。

 

「ほほう、聖女様は、何か秘策でもおありですか? たとえ聖女の力をもってしても、このゴーレムには通じませんよ?」

「あ、違う違う、私じゃなくて……私のナイトは絶対負けないんだから! そんなの、トウジが一対一で正面から倒してみせるよ!」

「えっ……」


 何その他力本願。

 聖属性は無効って言ってるんですが、無茶振りやめてもらえませんかねえ……。


「あ、あのレナハートさん、ちょっとそれは……」

「弱気になっちゃダメだよトウジ! できないって思うからできないんだよ! できるよ、トウジならできる! 倒せる、倒すんだよ!」


 なんだこの体育会系の精神論は。

 

 圧倒的不利なウェイトで階級無視な感じに加え、相手の隆々としたゴツい岩が見えていないのか。

 


 げんなりする俺の肩を、ポン、とシワの寄った手が叩いた。

 すぐに振り払うが、全く意に介せずにセバスは遠い目をしながら語りだす。


「レナハート様のおっしゃるとおり。今の言葉で、私も現役の頃を思い出しましたぞ。たとえ血反吐を吐こうとも、食べ物を胃が受け付けなくなろうとも、眠れずに朝が来るたびに死にたくなっても、死に物狂いで聖女の命れ……願いを叶えるのがプリンセスナイトというもの」

「えっ、なにそれこわい……今なぜ命令を願いと言い直した?」


 ……出たな洗脳済みナイトめ。

 プリンセスナイトってそういう扱いなわけ? ブラック過ぎるだろ……。


「すぐにわかりましたぞ。ついに、トウジ殿もナイトになられたのですな。……ですがこのセバス、老いぼれようともまだまだ若いものには負けられませぬ! 聖姫守護騎士セバス・ゲシュハイル! 最後まで聖女のために、エデンのために、戦いぬく!」

 

 セバスはなぜかいきなりやる気になっているが、若干目つきが危ない。

 ていうかあんたもうプリンセスナイトじゃないだろ。ついにボケたか。

 

 ……いや、これはレナの言葉で、プリンセスナイト時代のトラウマがフラッシュバックしてしまったのかもしれない。


 まさか聖女の言葉で条件反射的に体が動くように調教されていたのか? 怖すぎる。


 セバスが腰元の剣を抜いて、ゴーレムへと向き直ると、マシューが意外そうな顔でこちらを見下ろす。


「ふむ、セバス殿……あなたなら、多少は話がわかると思っていたのですが。では交渉は決裂、ということでしょうか?」

「当然! このおっぱいを……いや聖女を魔族の手に引き渡すなどということ、できるはずもない!」


 やっぱこいつ洗脳されてねえかもな。

 ただのおっぱいジジイかもしれん。

 まあ、なんとかしてくれるならこの際なんでもいいわ。


「頑張ってくださいセバスさん! 俺、後ろで応援してます!」

「まずは私が飛び出して、ヤツの気を引く。トウジ殿は、そのスキに一撃を!」


 いやいやいや、なんで俺も参加することになってるわけ?

 スキもなにも、あんなゴツイのたとえ熟睡して寝転がってても倒せる気がしないわ。

 

 だがノリノリなセバスは、俺の返事も待たずに剣を振りかざして、いきなり真正面からゴーレムへ特攻した。


「きぇぇええっ!! 双丘轟喜斬!」


 かっこよさそうに叫んでるけど、要するにおっぱい最高みたいな意味だよな?


 これはただの性剣技か……と思いきや、剣は凄まじい光を発しながらきらめく。


 セバスはゴーレムがブンっと振り回した腕をかいくぐり、思いきり相手の胸元を斬り下げる。

 

 だがギィン! と明らかに全然効いてないっぽい音がして、セバスは剣ごと弾かれ、バランスを崩した。

 

 そして、

 

 ――ドゴォォォッ!!


 とゴーレムの強烈な右ストレートが、セバスの上半身を撃ち抜いた。

 

 殴りつけられたセバスが、ひねりを加えながら空中を飛んで、まっすぐこっちに帰ってくる。


 体を受け止めるか一瞬だけ迷ったが、危ないのですぐにかわした。


 女の子だったら多少ケガしてでも受け止めたんだけども、鎧を着た加齢臭のするおっさんはちょっと。

 

 セバスはそのままガツンと床に叩きつけられて転がった。


 みんなの手前、俺は急いでセバスのそばに膝をついて声をかける。

 

「大丈夫かセバスのおっさん!」

「うぅっ……ト、トウジ殿、今、よけて……」

「ごめんちょっと聞こえない! 気を確かに!」

「おっパワーが……足りんかった……無念……」


 ゴーレムさんナイスパンチ。

 もういいわこの人。


 がくりと気を失ったセバスを放置して立ち上がると、再びマシューの余裕たっぷりの声が響く。

 

「ククク……かつてエデンで勇名を馳せた男でさえ、あのザマだ。エデン絶対潰す君の力、おわかりいただけたかな? さあ、おとなしく投降しろ!」 


 これはいい加減、まずいかもしれない。

 

 エデン絶対潰す君を潰す神スキル。

 そんなもんありそうにないが……。 

 

 俺は素早くウィンドウを開いて、スキルストアを探し始める。


 すると、それまでおとなしく成り行きを見守っていたアムが、不敵に笑いだした。


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