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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
二章

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降伏しちゃおっかな~


 声量こそ小さいが、妙に響く。

 何やら得体の知れない悪寒がして、声の方に視線を走らせる。

 

 なぜか薄笑いを浮かべて立っていたのは、かのレナハート様だった。

 謎の圧迫感と、不気味なオーラを纏っている。普通に怖い。

 

「うぅっ、なに……? 急にめまいが……」

「気持ちわるい……」


 と急にサキュバス達の顔色が悪くなり、おのおのマウントを取っていた彼女たちは、ぐでっと横倒しに倒れこんだ。

 同時に俺とアムが解放される。


「ひぃ、助かった……」


 アムがほっと胸をなでおろして立ち上がる。

 なので俺もそっくり真似して立ち上がったのだが……。


「い、いや~助かった」

「何が? ずいぶん楽しそうなことしてたみたいだけど?」


 なぜ俺だけ睨まれるのか。

 

「そ、それが、突然魔族に襲われてだね……」

「やだもうトウジったら。プリンセスナイトになって、聖剣もあるんだから、魔族なんて簡単に○○○○できるでしょ?」


 神聖なる聖女様はそんなこと言わない。

 彼女の名誉のためにも、発言内容を伏せさせていただく。


「何してたの? 怒らないから正直に言って?」

「いやまだ何も……。な、なあアム」

「ふむ、もうちょっとで中に入るところだったようじゃがの」

「何が何の?」


 真顔で聞かれるとちょっと……。

 アムに助けを求めたのが間違いだった。


「ち、違う、だいたいもとを正せばそのおっさんが……」


 俺を部屋に引き込んだのが悪い。

 と張本人を指さすが、おっさんはレナを見た途端、変な奇声を上げて気を失ってしまった。


 まあいきなり亀甲縛りされた美少女が現れたら、多少は驚くかもしれないが……何も気絶することはないだろうに。

  

「あっ……」

「誰? 知ってる人?」


 レナが一瞬、何か知っているような素振りを見せたので尋ねる。

 だがレナはじーっと見下すような目で、ベッドに横たわるパン一のおっさんを見つめて、


「知らない。それより、早く行こ」


 あっさりそう言い放って、くるりと踵を返す。

 見たくもないといった感じだ。

 これ以上は詮索しづらい雰囲気があったので、追求せずレナの後に従った。

 





 今度こそ王の間に向かうべく、歩みを進める。

 アムの後についてレナ、スキルを発動した俺という順に続く。


 一度ホールに戻り、中央の階段を登って二階へ。

 どうやら魔族たちは、兵士をいじめたりメイドを追っかけまわしたりで忙しいらしく、俺達の動向を特段気に留める様子はない。


 だが二階に上がって、いよいよ王の間へ続く扉の前まで来ると、見張りらしき魔族が呼び止めてきた。

 大きな二本の角が頭から生えていて、見た目牛と人間が合体でもしたようだ。

 今度は牛野郎か。


「なんだぁ、おめえらは……」

「聖女を捕まえたのだ。通せ」


 この辺のアムの受け答えは予定通り。

 アムがそろそろ飽きてきていたので心配だったが、さっきの一件でレナがピリピリしているので、ビビっておとなしくやる気になったらしい。


「あぁん? 聞いてねえ……あっ!」


 牛野郎はビクっと肩をすくめて、アムの背後のレナを注視する。

 するとその顔が、みるみるおびえの色を帯び始めた。

 

 よくよく見れば、牛男の顔面には手形の跡があり、どうやらすでに聖女フィンガーの洗礼を受けていたようだ。


「い、一体どうやって……? ま、まあいい、行っていいぞ」


 レナを捕まえた、というアムを、自分より格上だと判断したのだろう。

 牛野郎はすんなりと道を譲った。

 

 それと不機嫌になったレナが、ずっとガンを飛ばしていたのもある。

 縛られて手も足も出ない状態だと言うのに、こうも怖れられるとは。


 仰々しい扉をくぐって、ついに王の間へ。

 中は天井も高く、奥行きもありムダに広い。


 床にお高そうな絨毯が敷かれていて、遠目に玉座が見える。

 だだっ広いということもあるが、広間は予想以上に静かだった。


 まっすぐ絨毯の上を歩いて行く。

 特に出迎える者もなく、行手を遮る者もない。

 

 歩いていくと、広間の一角に、十数人の縛られた男女が集められているのが目に入った。

 どれもみな、身なりの良さそうな格好をしている。王族か、ばたまたお偉いさんか。


 なるほどアレが人質か。

 そばには見張りらしき魔族が数名。

 

 魔族はボードゲームか何かで遊んでいるらしくかなり気が抜けているが、人質を取られていることには変わりない。

 やはり力押しを避けて正解だった。

 どの道、玉座に向かって堂々と歩く以外、不審な動きはできない。


 長い広間を横断して、やっと玉座付近に到達する。

 玉座には、誰も座っていなかった。

 代わりに、その手前の円卓についている人影が二つ。

 さらに近くには、顔色の悪い魔族が二人控えている。

 

「しかし戻ってこんな……いつまでヤってんだか……」

「この際、王の代理としてあなたが首を縦に振ってくれれば、それでかまわないのですが……」


 卓についた二人が、何やら話しているようだ。

 そのうちの一人は、かのおっぱいジジイ、セバスだ。

 腕組みをしながら眉を寄せて、うんうん唸っている。


「……うーん、降伏しちゃおっかな~……」


 ……おいジジイ。

 

 どうやら王は不在らしい。

 捕まっているというわけでもなさそうだし、こんな時にどこ行ってんだか。


「それが英断でしょう。私もあなたなら、そう決断しますよ」

 

 冷たく、やや無機質な声が囁きかける。

 どうやらコイツが肝心の魔族のボスのようだが……これは見覚えがあるぞ。

 

 聖剣を森に探しに行った時、アムと一緒にいた……たしかマシューとか呼ばれていたノッポの魔族だ。

 誰かと思えばコイツだったのか。

 度重なるアムのパワハラに耐えきれずに反乱したか?

 

 マシュー、セバスがそろってこちらに気づくのとほぼ同時に、アムが先手を打って声をかけた。


「王女を捕まえました」 

「うん? お前は……?」


 マシューは首をかしげる。 

 まあイロモノ揃いの魔族にも、さすがにこんな女王様スタイルの奴はいないのだろう。


「なっ、レナハート様!?」


 あられもない姿にされた聖女を見て、セバスの目玉は飛び出でんばかりだ。

 だがその目線は、縛られて強調された胸に向かっている。

 驚くっていうか、こいつ感動してねえか。

 

「なんだと? レナハート……? お前が、捕まえただと……? お前は一体、誰だ……?」


 マシューは立ち上がって、目を凝らしながら近づいてくる。

 するとアムはまずいと思ったのか、突然ヒソヒソ声でせかしてきた。


「……ほれ、いけいけ、トージ! 今じゃ、聖剣でズバっとやれ!」


 バカ、余計なことを……。

 もうちょっと近くまで引きつけたかったのに。


「なっ、まさか……」

 

 そんな風に囁いたら怪しまれるのは当然で、マシューは何かに気づいたように、一瞬硬直する。

 

 と同時に、俺はレナから手を離して、聖剣を振りかぶりマシューに斬りかかった。

 

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