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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
二章

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双子のサキュバス

「もうなに~? いいところだったのに~」


 部屋の中からピンク色の髪に角の生えた女性が現れた。

 見るからに魔族だ。

 バスローブを羽織っているが、その下はおそらく一糸まとわず全裸。


「……やはりお前かミリー」


 アムが心底嫌そうに口を開く。

 知り合いのようだが、ミリーと呼ばれた魔族は首をかしげる。


「あら、誰かしら?」

「……アムリルじゃ」

「アムリルゥ~?」


 人間化している上に、絶賛変装中なのでわからないのも無理はない。

 しかしこの見るからにエロそうな女魔族が一体何者だ。

 

 はっきり言ってこっちは余計な相手に絡んでいる場合じゃない。

 もちろん胸の谷間をガン見している場合でもない。


 なので谷間をチラ見していると、女魔族はいきなり二人に分身した。

 

 ……いや違う、二人目だ。

 髪を結える位置以外、全く同じ見た目の人物が、後ろから姿を現した。

  

「ねえメリー見て見て、アムリルだって~」

「え~? うそ~?」


 二人揃ってまじまじとアムの姿形を凝視する。

 アムがマスクだけ外してみせるが、いまいち釈然としない様子。

 しかしアムはいま、一応魔族に追われているんじゃなかったっけか。


「……おい、大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃ、こやつらはアレのことしか頭にないとんでもないクソビッチじゃからの」

「お前に言われるなら相当だな」

「ほんとうに相変わらず一言多いの~トージ様は。わらわは混血じゃが、奴らは純粋な双子のサキュバスじゃ。わらわとはいちおう親類にあたる」


 双子のサキュバスだと?

 なんてわくわくする……じゃなく危険そうな相手だ。

 

「ちょっと似てるかも。それにしゃべりかたがアムリルだね」

「ぽいね。アムリル見つけたら、連れてこいって言ってたよね」

「う~んでも、めんどくさいから、いっか」

 

 すごく頭の悪そうな話し方。

 それだけでアムが大丈夫と言った理由が何となくわかった。


「おぬしら、こんなところでなにをしておる」

「え~? ちょっと協力してほしいって言われて。別になんでもいいんだけど、イキのいいニンゲンのアレを吸えるって……」

「それが大当たり。すぐダメになると思ったんだけど、あのおじさんなかなかスゴイの」


 一体何の話をしているんだか。

 純真な僕にはわかりません。


「あれ、そっちのカレは……」


 そして、サキュバスたちの獲物を見るような視線と目が合った時、またも部屋の奥から三人目が現れた。

 だが次に顔を覗かせたのは、上半身裸のおっさんだった。

 

「なんだ、邪魔をするな。大事な外交中だぞ、さっさと去れ」

「は?」


 性交の間違いだろ。

 このおっさん、パン一のくせにやたら高圧的で偉そうだ。

 

 見た目四十代ってところか。

 口元の小奇麗なチョビヒゲが妙に腹立つ。

 ブロンズの長髪も、ムダに普段から整えているようだ。

 顔も濃いし、やたら性欲が強そう。

 

 こういう系は生理的に受け付けない。

 元コンビニ店員の勘からすると、こういうおっさんはささいなことですぐクレーム入れてくる自己中オヤジの率が高い。


「ごめんね~二人とも、すぐ追い払うからね~」


 そして女の子たちには一転して猫なで声。

 もうね、この時点ですでに色々とアレですわ。

 

 一見人間っぽいが……魔族ということにして聖剣で退治しちゃおうかな。

 と俺が剣を握りしめると、おっさんは急に驚いたように目を見張った。


「そ、それは、ま、まさかディバインハート? 小僧、お前一体何者……はっ!?」


 今度は何かに気づいたように、上から下まで俺の全身に目線を走らせた後、顔を凝視してきた。

 

「黒髪、黒目……」

 

 またそれかよ。

 もう染めようかな。


 するとおっさんは急に真面目な顔になり、さっと手を伸ばしてきて俺の腕を取った。


「来い、入れ」

「いや絶対に入りたくないんですが……」

「いいから来い」


 と非常に強引である。

 もちろんすぐ振りほどこうとするが、すぐさま女の子二人の手が伸びてきて、両腕に絡みついてきた。

 おっぱいを直で押し当てられては、さすがの俺も抵抗ができない。無念である。


 そのまま連行されて、部屋の中に連れて行かれる。

 中は隣の部屋よりもやや広く、大型のベッドがでん、と一つ置いてあった。


「お前、そこそこやるようだが……そんなもんじゃあ俺は認めん。この俺様が、じきじきにテストしてやる。レベルやステータスなんぞよりずっと大事な資質をな」


 半裸のおっさんが意味不明な能書きを垂れているが、一体なんのつもりだ。


 まあ俺ほど隠れた資質とやらを持った人間はそうそういないだろうけど。本気出してないだけで。


「今から、この二人を満足させてみろ」

「はい?」


 それはどういった意味で……?

 そう問い返す間もなく、二人の魔族が羽織ったものを脱ぎ捨て、舌なめずりをしながら擦り寄ってくる。


 さわさわと体を撫でるいかがわしい手の動き。

 それが徐々に体の中心に伸びてきて、早くも息子に危険が迫っている。


「緊張してるの? かわいい、好みかも……」

「うふふ、楽しめそう……」

 

 ……これって、マジでそういうこと?

 全く予期せぬ童貞卒業チャンス。

 いやしかしこれは……。

 

「バカを言え。並の人間がこの二人を相手にしたら、とんでもないことになるぞ。ましてや童貞が……。もういい、行くぞトージ」


 だから童貞言うなし。

 後ろをついてきたアムが、両手で乱暴に俺の腕を引く。


 だがそうはさせるかと女の子二人も負けじと俺の体を引き止めて、すぐさまもみ合いが始まった。


「ちょっとぉ、待ってよ! アムリル独り占めする気?」

「な、なにを言っとるかバカめ! 何もせんわ、おぬしらのような見境なしとは違うんじゃ!」

「うっそだぁ、アムリルがただのニンゲンとそんな風に話してるの、見たことな~い」

「ほんとだ~あやしいあやし~い」

「ええい黙れ! 貴様らあとで覚えておけ……んむっ!?」

 

 騒ぎ立てたアムの口を、いきなり女魔族が口で塞いだ。

 すかさず体にも手を這わせて、指先で弄りだしたところを、アムが慌てて突き放す。


「な、なにをする、やめんか!」

「へえ~やっぱり本当にアムリルみたいね、どうなってるのかしらおもしろ~い」


 アムは必死に引き剥がそうとするが、相手は容赦なく唇を寄せて、ベタベタと体を触りだす。

 あら~いいですねと俺がそっちに気を取られた瞬間、

 

「うふ、こっちもおいしそう」


 もう片方の魔族に唇を吸われた。

 いきなり唾液を送り込まれると同時に、なぜか一気に体が熱くなり、意識が遠のきそうになる。

 

 俺はすんでのところでこらえて、魔族の肩を押して唇を引き離した。


「ちょ、ちょっと!」

「ウソ、あなたプリンセスナイト?」

「え?」

「隠してもムダよ、キスしたらわかるんだから。やった、大物ゲット!」


 嬉々として、さらに絡みついてくる。

 すると、焦る俺の横でおっさんがさらに焦りだした。

 

「ま、待て! 今のは聞き捨てならんぞ、お前、プリンセスナイトになったのか!?」

「そ、それは流れで……、ってか、な、なんとかしてくれっ、この子……」

「何ぃぃっ!? 本当なのかぁ!?」


 今度はおっさんもすごい剣幕になって詰め寄ってくる。

 その勢いで、女の子もろともベッドの上に倒された。

 申し訳ないがおっさん込み3PはNG。


 魔族は「いやぁんっ」とか言いながら、すごい瞬発力でマウントを取ってくる。

 アムはアムで人間のままだと抵抗できないのか、隣でいつの間にか押し倒されているし、もうめちゃくちゃな状況だ。

 

 そんな中、部屋の入口の方から、さらに別の人物の声がした。

 

「あれ? トウジにアムちゃん、ふたりとも……なにをしているのかなぁ?」


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