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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
二章

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71/87

おっぱいナイト爆誕


 するとレナの顔がぱあっと明るくなって、


『えっ、ホント? ホントにいいの!?』

『ああ……いいさ。まったく、やれやれだぜ……(イケメン顔)』

『やったあ! トウジ大好き! じゃあさっそくプリンセスナイトに……』


 的な流れでふっ、落ちたな(確信)となるのかと思いきや。


 レナは浮かない顔のまま、小さく口元を動かした。


「ごめんなさい、私……無理です……できない……できません」


 あれ、おかしいな……? 

 それはもうすごい勢いで食いついてくるかと思いきや、ここでまさかの拒否?

 これは……ついに俺のクズさ加減を見破られてしまったか? 


「ごめんなさい、その、明日から本気だすんで、見捨てないで……」


 俺は負けじと謝罪した。

 やれやれ顔のイケメンのはずが実際は困惑顔のニートに。

 だがレナに見限られたら住む家がなくなってしまう。


「ち、違うの……、もしトウジまで変なジョブにしちゃったら、って思って……」

「いえ僕、すでに無職なんで失うものは特にないです」

「あっ……」


 レナは一瞬察したようだが、ふるふると首を振って再び否定してみせる。

 

「う、ううん、えっと、そ、そうじゃなくて……私、本当に聖女じゃないのかも……」

「バカ、そんなわけないだろ。何を言って……」

「うん、私、バカだから……」


 ああ、ダメだこれ、もう完全に鬱というか病みモードに入ってしまっている。

 どうやらさっきので、すっかり自信を失ってしまったようだ。


 俺はうつむいたままのレナの手を取って、励ましの声をかける。


「大丈夫大丈夫、全然、失敗したっていいから、ダメ元でやってみれば……」

「私ダメだよね……。本当、ダメだ……」


 そこだけ拾ってくるか……。

 

 レナの冷たい手元が震えている。

 不安なのだろう、表情も暗く、目に力がない。

 

 う~んわからん。こういう時なんて言えば……。

 落ち込んでいるわけだから、とにかく何か褒めれば……褒める褒める……いいところを褒める……。


 などと考えている間にも、また横からアムが「これだから童貞は……」と言わんばかりの視線を突き刺してくる。

 焦った俺は、神イケボを発動した勢いで口を開いた。

 

「大丈夫、レナのおっぱいは最高だよ(イケボ)」


 う~む、意図せずセバス先輩リスペクトしてしまった。

 これがプリンセスナイトの宿命なのか。


 隣でアムが盛大にズコーっとこけた気がするが、その一言で、はっとレナの瞳が大きく見開かれる。

 そしてレナはぎゅっと俺の手を握りかえしてきた。


 とたんに、触れたお互いの手がおびただしい光を帯び始める。

 すぐさま視界が真っ白に包まれ、あまりの眩しさに俺は目を閉じた。


「……トウジ?」


 呼ばれて目を開くと、心配そうにこちらを見上げるレナの顔。

 光はすでに消えていた。どうやら転職は終わったっぽい。

 代わりに周囲からえらい注目の視線を感じる。

   

「えっと、聖剣を呼べばいいのかな……? 聖剣……召喚?」


 よくわからないままそうつぶやくと、いきなり目の前に棒状の光の粒子が発生した。

 やがて光は収束し、剣の形に姿を変える。


 本当に聖剣がやってきた。これは本物で間違いなさそうだ。

 どうやら無事プリンセスナイトになったらしい。

 

 俺が宙に浮いた剣の柄を手に取ると同時に、ぱあっと笑顔になったレナがおっぱいを押しつけて抱きついてきた。


「やったぁ! プリンセスナイトになれたんだね! すごいよトウジ! すごい!」

「は、はは……」


 ついになってしまった。これにておっぱいナイトの爆誕である。

 流れ上仕方ないとは言え、後のことを考えると少しばかり憂鬱だ。


 ああ、俺の自由気ままなニート生活が……。

 プリンセスナイトが社畜も真っ青な超絶ブラックだったらどうしよう。


 まあさっき見つけたアレ、がうまくいってくれれば、最悪なんとかなるのかもわからないが……。


 聖剣が現れて、兵士たちもざわつき始める。

 するとあっけにとられた顔で一連のやり取りを見ていたキースが、聖剣を指差して叫び出した。


「ま、待て! そ、その剣が本当に聖剣だという証拠は……!」


 となおも食い下がろうとするが、ひそひそと兵士たちの間から声が上がる。


「おい、あれホンモノだよな? マジで」

「だよなぁ、いやオレも、レナハート様をニセモノとか言い出した時はさすがにないわーと思ったんだよ」

「ヤバイな、このあとキース兵士長どうすんだろうなー。知ーらねー」

「いやいや、そういうお前も色々言ってただろ」

「ニセモノとは言ってない言ってない、聖女のくせにけしからんおっぱいだ、としか言ってないし」


 などと言いながら、徐々にキースから距離を取っていく兵士たち。

 これは熱いてのひら返しを食らっている。


「ぐぬぬ……たとえ、たとえプリンセスナイトであったとしても、貴様のようなどこの馬の骨ともしれん男が、魔族を追い払えるかというのは別の話だ!」


 さすがに分が悪いと思ったのか、キースは急に話をすり替えてきた。

 だけどそこは今別に問題じゃないんだよな。


「言うとおりもちろん別の話なんで、とりあえずニセモノ呼ばわりしたことは謝ってもらえますかね」

「い、いいのトウジ、私が聖女として、役に立っていないっていうのは、本当だから」

「そ、そうだ! たとえ本物の聖女であろうと、その役目を果たしていなければ意味がない。それは聖女ではないのと同義である!」

 

 ずいぶん粘るなあ。

 この調子じゃ、魔族の一体や二体、目の前で倒してみせないと納得しなさそうだ。

 

 でもブタちゃんはすでに半分死んでるし、そんな都合よく魔族なんて……。

 と俺があたりを見回したその時、頭のずっと上の方で、不気味な鳴き声が聞こえた気がした。

 

 それは俺の気のせいではなかったらしく、何人かの兵士たちが空を仰ぎ見始める。

 つられて俺もそちらを見やると、巨大な鳥のようなシルエットがこちらに向かって急降下してくるのが見えた。


 影が近づいてくるのはあっという間だった。

 やがて翼を羽ばたかせながら、俺達の前に降り立ったのは、とさかの付いた頭をした、獣とも人間ともつかぬ毛むくじゃらの鳥男。


 鳥人間は鋭い角ばった目でぐるりと周りを見回すと、くちばしの付いた口からやたら甲高い声を発した。


「キェーッ、なにやら不審な動きをする一味ハッケーン! キサマラ、怪しい企てをしているんじゃなかろうなァ!?」


 突如現れた謎の鳥男に、一斉に注目が集まる。

 兵士たちが目を見張る中、キースが一同を代表するように問いかけた。


「なっ、一体何者……?」

「知らんのか? オレサマは三魔族が一人、バジャールだギャ。これからキサマラが毎日拝む顔になるギャ。よく覚えておくギャ」

「さ、三魔族!?」

「ん~? キサマ何やら態度がデカイなぁ~? ニンゲンどもは魔族にへこへこせんといかんのに……。反抗しない限りは、危害を加えない約束にはなってるが……これはうっかり殺してしまうかもしれんギャ」


 鳥野郎が不敵に笑いながら、のしのしと近づいてくる。


 格好は無防備ではあるが、ブタ野郎同様に二メートル近い体長がありなかなかに迫力がある。


 キースはがぜん逃げ腰になって、いきなり俺の方へ詰め寄ってきた。

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