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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
二章

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64/87

もぅマヂ無理……。


「うわっはっはっは!」


 エデンティラ王宮、王の間。

 その玉座では、広間に響き渡るほどの大音量で高笑いするレオン王の姿があった。


「魔王の奴め、結局尻尾を巻いて逃げていきおったか!」

 

 レオンの手元には、つい先ほど届いた魔王からの書状が広げられている。


 それは衛兵が魔族の使者から預かったものを、セバスが受け取り直接持参したものだ。

 

 すっかりご満悦の王とは裏腹に、セバスは傍らで書状を覗き込みながら、訝しげに眉をひそめる。


「しかし不可解だと思いませぬか? 特にこの部分、『もぅマヂ無理……。お尻……お尻イタイ……。ほんと、お願い、お願いだから……やめさせて……。あの人たち、トイレの中まで入ってくるし……それはダメでしょ、反則でしょ……。キックの人毎回奇声上げてくるし怖い……バットの人はうれしそうに笑ってるし……。』」


「それは俺が言った通りだろう、きっと誰かが何とかすると!」


「いやこれ、本当に誰なんでしょうかねぇ……何か怖いんですが」


「それはもちろん、エデンを守るため、ひいてはこの俺を守るため、立ち上がった勇士に違いない! 実にあっぱれだ! もし名乗り出てきたら、褒美をやろう!」


 バシバシ、と景気よく膝をたたくレオン。

 また調子のいいことを……とセバスはその様子を横目で見やりながら、書状の精読を始める。


「それにまだ腑に落ちないのは、この書状によると、なにやら魔王は娘の言いなりになっていただけだと言う話。可愛い娘がひどい目にあわされたのだから、もちろん激怒しているよな? 報復するよな? と。あんまりその気はなかったけど、仕方なくエデン侵攻に踏み切ったと。それでその魔王の娘が、今度はエデンの町で何か世にも恐ろしいものを見たらしく、エデンにちょっかいを出すのはもうやめよう、と意見を変えたとのことですが……一体何を見たのでしょうかね?」


「さあな。魔王の娘が怖がるというぐらいだから、よほどの……まあ物の怪の類でも見たのだろう。何かそういう話がなかったか? 悪鬼か何かが夜な夜な現れるとか何とか……。それにしても、娘の言いなりになっていただとか、本当に情けない魔王だ。がっはっはっは!」


「……自分だっておねだりされたら逆らえないくせに……」


「なんにせよこれでエデンの平和は守られたな! はっはっは! 持ってる、やっぱ俺持ってるわ~」


 レオンのバカ笑いを、セバスはげんなりした顔で聞き流す。

 するとその時、カツカツと靴の音を響かせながら、王妃ルナハートが近づいてきた。


「もう少し、静かにできないものですかねえ……。この度はなんとかなったとはいえ……まだまだ気は抜けませんよ。依然として、この国には聖女の加護がないのですから」


「とは言うもののルナハートよ。今となっては聖女にこだわる必要もないのではないかと俺は思う。現にこうして、魔王を追い払っているわけだから……」


「あなたにとっては、そうかもしれませんわね。最近、すっかりお熱らしいじゃないですか。どなたでしたっけ? あの側室の……」


「レオン様、いくらぽっと出の男にレナハート様を取られそうだからってそれはなりませんぞ。エデンはあくまで聖女を中心とした体制を保つべきであって……」


「ええいそんなことはわかっとるわかっとる! だが一体、どうすれば聖女の力に目覚めるというのか。説明してみよルナハート」


「それは、口で言い表すには非常に難しいのです。必要なのは強い感情の力……言うなればそれは、愛の力とでも言いましょうか」


「何を言うかと思えば愛て。これだから女は」


「……何か?」


「いえ」


 ルナハートに睨まれ、姿勢を正すレオン。

 じりじりと視線で威圧しながら、ルナハートは続ける。


「何がきっかけになるかは、個人差があります。聖女ホーリープリンセスのユニークスキル『聖女』の力は、まだまだ未解明、未知数なんですよ」


「まったく、聖女の聖女ってややこしいな。なにかこうわかりやすく、数字で表せないのか?」


「スキルレベルはあるにはありますが、スキルポイントで強化することはできません。その時々によって、変動するのです。本来、そういう数値化できるようなものではないのですが、あえて言うなら、今のレナハートはおそらくレベル2……自らを闇属性、魔物、魔族から守る力を持つ程度でしょう。とはいえこれからどのレベルの聖女にまで成長するか、まだわかりません」


「あの胸がまだ成長するとなると、まさに胸わくですな」


「おい、いい加減隠居させるぞジジイ」


 レオンがセバスの首を締め付けそうな勢いで睨みつけるのを、ルナハートがなだめる。


「まあまあ、いいじゃないですか。セバスが今はなき私の母のプリンセスナイトとして、この国に残した功績は素晴らしいものです。またの名をおっぱいストーカーナイトとか呼ばれてましたね」


「ふっ、よしてください、昔の話です」


「なんかかっこつけてますけど、褒めてませんよ? 普通に貶してます。それにしてもプリンセスナイトのほうは本当に、不在の時期が長いですからね……」


「ああ……グレンのことですか。あれは優秀な男でしたが、とにかく運がなさすぎた。なんというか、生来の欝キャラなんでしょう。大体、ルナハート様がレオン様のほうがつよーいをやって、あの男をプリンセスナイト自主退任に追い込んだんでしょうに」


「あ、あら? そんなことあったかしら、よく覚えてないわ、ほほほ。ねえあなた」


「ん? ああ、そういえばそんな名前の奴もいたかな。どこかの田舎に引っ込んだんだったか? グレンだけに、グレたってな。がっはっは」


「うふふ、いやだもう」


 そろって笑い出す二人。

 

 それを見たセバスは、やっぱこいつらダメだわ、と盛大にため息をついた。



 ◆ ◇



 アムリルを追い払ったその翌日。

 突然、魔王が逃げ帰った、という知らせが街に広がった。

 

 あれだけヤバイヤバイと前フリをされていたのに、あっけなく平和が戻った。

 凄まじいスカシを食らった俺が、再び神ゲー三昧の日々に戻りつつあった、その矢先。

  

 それはさらにその翌日のことだった。

 朝起きて、顔を洗って、外の空気を入れようと何気なく窓を開けたら、


「ブヒヒ?」


 謎のブタ男と、目が合った。

 俺は反射的に、ピシャッと窓を閉めた。

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