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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
二章

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55/87

魔王とか初耳ですけど?

 

「今お前らが受けられるようなクエストはねえよ」


 ギルドにやってきた俺達は、クエスト受注の窓口でコワモテのおっさん――たしか名前はハリーと言ったはず――にそう一蹴された。

 

 その理由として、俺達の冒険者ランクが最低だということもあるが、直接の原因は他にあった。


「そりゃあ、傭兵、防衛任務なら山ほど国から依頼があるが……、正直やめといたほうがいい。魔族が相手となっちゃあ、名うての冒険者だってそうやすやすと依頼を受けたりはしねえよ」


 ハリーは難しい顔で手元の書類を眺める。


 ギルドにはいつものような賑わいはなく人もまばらで、なんとも言いようのないピリピリした雰囲気が漂っていた。

 

 のほほんとギルドにやってきた俺達とは、大層な温度差がある。


「それにしてもここの王はホント、人望がねえんじゃねえのか? ほとんどの冒険者達はごっそり他の国に逃げていきやがったし……。お前らものんびり構えてないで、身の振り方を考えたほうがいいぜ? オレはエデンティラがどうなろうが知らんが、勝手に職務放棄すると冒険者協会から文句付けられるからな」


 などなど、ハリーから軽くアドバイスというか愚痴をこぼされる。


 暗にこんなとこでクエストなんて受けてないで、さっさとどこかに逃げるなりしろ、と言わんばかりだ。


 それにしても、なぜこんなことになっているのか?

 答えは簡単だった。


 それは魔王が、魔族を率いてここエデンの街、ひいてはエデンティラ城へ向かっているのだという。

 ガチで潰しにかかってきていて、それで今、国全体が大慌てしている、ということらしい。


 しかし魔王とか、完全に初耳なんだが……。それにもうすぐそこまで来ているって、マジか? 


 何やら魔王を激怒させることをした人間が、ここエデンにいるという話らしいが……。

 一体どこのバカがそんな余計なことを。


 にしても、引きこもって神世界にハマっているうちに、そんなことになっていたなんて。

 どうしてこんなになるまで放っておいたんだ。誰も教えてくれないなんて、ひどいじゃないか。

 

 そういえば昨日エミリが、最近ギルドも色々忙しいと言っていたのはそれが関係していたのかな?

 今後身の振り方をどうするか迷っているとも言っていたな。部屋を引き払うかも、とか何とか。


 まあそれは話半分にスルーした俺が悪かったけど……。

 レナだって、俺に「ちょっと魔王が来てるよ」の一言ぐらいあってもいいだろうに。

 

 俺はハリーに礼を言って窓口を離れると、すぐさまレナに尋ねる。

 レナはハリーの話をろくに聞かず、ずっときょろきょろと辺りを見回してばかりだったが……。


「あのさレナ……」

「うーん、エミリさんは、いないのか。ちっ……」


 何か今、舌打ちが聞こえた気がするがスルーしよう。

 

「あのさ……レナは魔王のこと、知ってたのか?」

「うん、知ってたよ。当たり前じゃない」

「えっ、なんだよ、なんで教えてくれなかったんだよ」

「私けっこう前に言ったよ? そうしたらトウジ、げーむやりながら、ふーん、大変そうだねとかって」


 Oh……。

 ゲームに夢中で聞いてませんでしたってか?

 これ以上墓穴を掘るのはやめよう。


「全然驚いてなかったから、やっぱりトウジはすごいなーって。きっとトウジのことだから、魔王が襲ってきてもヨユーなんだろうなって思って」

「は、はは……ま、まあね」

「きっと魔王も簡単に追い払っちゃうんだろうなあ。だって私がさらわれた、って聞いた時も、俺のレナを返せ! って言って一人で盗賊のアジトに乗り込んで行ったんでしょ?」


 何かうっとりした顔で話されてますが、それ、どこの世界の俺ですか?

 美化されてるってレベルじゃねーぞ。


「と、とりあえずどうしようか。なんか、クエストどころじゃないみたいだし……」

「クエストはしょうがないね。じゃあ今日は、おさんぽでもしよっか」


 お散歩て……。

 さっきの話本当に聞いてたのかよ。

 

 レナは二の足を踏む俺の手を強引に引いて、ギルドから出る。

 外はさんさんと日の光が降り注ぎ、いい具合に優しい風が吹く穏やかな昼下がり。

 

 レナは一度空気を味わうように大きく深呼吸すると、にこっとうれしそうな笑顔を向けてくる。


「今日は絶好のおさんぽ日和だね」

「まあ、そうだね……」


 魔王が接近していなければの話だがな。

 

「あったかくて風が気持ちいいね~。なんか私、こうしているだけで幸せかも」

「はは……」


 もう一度言う。

 魔王が接近していなければの話だがな。

 

 レナは無理やり手をつないでくると、ルンルン気分で大通りを歩き出した。

 軽く鼻歌など歌いつつ、さらには軽くスキップなんてしはじめた。


 ……やはりダメだ。

 非常に頭お花畑な感じで幸せそうなところ申し訳ないが、レナには現実をしっかり見据えてもらわないと。

 

 まさか魔王もこんな、王女が能天気にお散歩しているなどとは夢にも思わないだろう。

 この様子を伝えたら、割とショックを与えられるかもしれない。


 だが待てよ?

 エデンティラ王国の王女、ならびに聖女たるレナハート様が、この国の存亡のかかった緊急事態に、なんの考えもなくぶらぶらお散歩などと、おっしゃられるはずがない。

 

 きっと何か、すでに打開策を……例えば聖女の力とかそんなんで、楽々魔王を返り討ちにする算段ができあがっているに違いない。

 

 だから、なんか妙に人通りが少ないだとか、ちょくちょく武装した兵士がせわしなく走り回っているとかいうのは、それほど気にとめるほどのことではないのだ。


 きっと。たぶん。


 

 ……どうしよう、俺も逃げたほうがいいのかな。

 これはみんな、もうヤバイと思って、エデンを脱出したのかもしれん。


 内心焦りながら、ちらりとレナの様子をうかがうと、ちょうど目が合ってレナの口元がゆがむ。


「ど、どうした」

「ふへへ、トウジと久しぶりに一緒に外歩けてうれしいから。幸せだなぁ~」


 う~んやっぱり不安だ。

 本当に大丈夫なのだろうか……。


 とその時、不意にレナの首元が光り出した。

 首飾りの宝玉だ。どうやらお呼び出しらしい。

 

「レナ、それ……」


 俺が胸元を指さすと、いきなりレナはがしっと光る宝玉ごとネックレスを掴んで、力任せにブチっと引きちぎる。

 

 えっ? と俺が目を丸くするのをよそに、レナは宝玉を地面に叩きつけようと、腕を大きく頭上に振りかぶった。

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