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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
二章

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魔王侵攻の噂

エデンティラ王宮、王の個室。


 国政最高顧問の一人であり、名誉聖姫守護騎士プリンセスナイトであるセバス・ゲシュハイルは、とある火急の報を受け、その対処を話し合うべく、エデンティラ王レオンと向かい合っていた。


「それで、かねてお耳に入れておりました、魔王侵攻の噂ですが、どうやら本当のようで……」


「なにぃ? なんだって急に……。魔王自らこのエデンティラに攻めてくるなぞ、前代未聞だぞ。どうしてそんなことになっている」


「なにやら、可愛い娘を傷物にされたとかで、ひどく激怒しているとのことですが……。とはいえ魔王の娘をどうこうできる人物が、このエデンティラにいるとは到底思えませぬ。きっと何かの勘違いだろうと……」


「ふん、魔王の娘がどうなろうと知ったことか。そんなことよりどうだ、レナハートの様子は。きちんと言いつけを守っているか」


「なぜそこを共感できないのか……。ああ、それは大丈夫でしょう。しかしよかったではないですか、可愛い娘をどこの馬の骨とも知れない男にやらずにすんで」


 セバスは皮肉たっぷりに言ってやる。

 それが通じているのかいないのか、レオンはばしっと膝をたたいて息巻く。


「いらない、と言われたらそれはそれで腹立つだろうが! まったく、一体何様のつもりなんだその男は!」


「面倒臭い父親ですな」


「なんと言われようと結構。だがどこの世界にレナハートからの申し出を断る男がいると思う? 俺なら二つ返事でOKするぞ? ……いや、待てよ、そもそもそいつから求婚したんじゃなかったのか?」


「何か色々と、誤解があったようですよ。プリンセスナイトも、なること自体は転職スキルでちょちょいですが、なってからが大変と言うか。ましてや王宮入りするとなると、さらに規則やらなにやら縛りがあって面倒ですし、何より自由が失われますからな」


「めんどくさそうだからやっぱりやめたとかそういうことか!? 本当にふざけた男だ! それで健気なレナハートはな、「私が悪いんだ、私に魅力がないんだ」とすっかり意気消沈してしまってな……、見ているこちらがいたたまれない」


「そうですかね? 毎日楽しそうにトウジ殿の所へ出かけていきますが」


「何を見ている、お前の目は節穴か!? 元気そうな胸にしか目がいかんのか! このおっぱいクソジジイが!」 


 セバスは「口悪いなコイツ……」と顔面を張ってやりたい衝動をこらえる。


 おっぱいの揺れ具合でレナの健康、ひいては精神状態をはかっているのは確かだからだ。


「まあいい。俺の言いつけを守っているうちは、好きにさせてやろう。どうせそのうち冷めるだろうしな。そういえば警護は……」


「引き続きイズナに見張らせています。非っっ常に、心もとないですが……正直あの娘も私には持て余すので……」


「ふむ、ならば問題なかろう」


「謎の信頼感……。そんなことより、魔王の件、どうするおつもりで? 聖剣は依然として行方が知れず……プリンセスナイトは不在。現在国に留まっている神聖騎士は、レックハルト王子一人ですが」


「んん? レックハルト一人……? 他の連中はどこをほっつき歩っとるんだ。……いや待て待て、なにもウチには聖女の加護があるだろう。魔族なぞ、国境を越えてろくに近寄れんはず。そう焦ることもあるまい」


「いや、だから今は……」


 セバスが反論しかけた時、不意に部屋のドアが開いて、やや難しい顔をした女性が入ってくる。

 

 女性は遠慮なく二人の間に入ってくると、レオンに向かって叱るような口調で口を開いた。

 

「何をのんきなことを。今はちょうど、最も加護が弱まる時期なんですよ? レナハートがまだ聖女の力に完全に目覚めておらず、代替わりを迎えて私も力を失いつつある……。今現在この国には、魔族を寄せ付けないような、そんな強力な加護はありません」


「ル、ルナハート、またお前、盗み聞きして……。あ、ああ、そういえばそんなこともあったか。だがそれは本当か? だとしたら……」


 レオンはルナハートの剣幕に押されてか、知らずセバスのほうへ視線を逃がすと、それを受けてセバスが答える。


「そうです、そのせいでここ最近、エデンティラ付近にも強力な魔物が出没し始めていると、報告を上げようと思っていたのです。わが国は魔族領、獣人領ともに面しているだけに、こういう時こそ、王の外交手腕が求められるかと」


「外交ねえ……。ではヴァルちゃんに援軍を頼もう。こっちだってイズナを預かってやっているんだから、多少は融通を利かせてくれるだろう」


「いえいえ、それが獣人と魔族は、とても食い合わせが悪くてですね……。脳筋な獣人には、魔法を使う魔族は天敵なわけです」


「ちっ、使えないな、なにが獣王(笑)だか。大体アイツは、本当に強いのか?」


「ヴァルリオンは肉弾戦なら最強と目されていますが……。真っ向からやり合ったら、全盛期の私が最強装備しても勝ち目は薄いですな」


「はいはい、それはすごいですねー。ならば隣国の火の国ファライオから……」


「他国の人間を招き入れるのは反対です。あそこの王は元々あまり友好的でない上に、人間は獣人よりもずっと狡猾ですから、混乱に乗じて何か仕掛けてくる怖れもあります」


「なんでもかんでも反対しやがって、じゃあどうしろって言うんだよ!」


 それを考えるのがお前の仕事だろう……とセバスがげんなりしていると、横からルナハートが口を出した。 


「私にいい考えがありますよ。その、プリンセスナイト候補の彼に、一肌脱いでもらうというのはどうでしょうか。実力は本物なのでしょう? 聞けば盗賊の巣を、一瞬で焼き払い、レックハルトを軽くあしらったとか何とか」


「反対だ。俺は未だにそれが信じられん。大体なんでそんな実力者が、こんなところでフラフラしてるんだ? その辺どうなんだセバス」


「う~む、それは言われてみればそうですが……。というか、あいつ基本やる気ないですし……。レナ様の話によると、なんでも最近は、『神ゲー』とやらにはまっているとかなんとか」


「はあ? なんだそれは」


「いや、私も仔細はわかりませぬが……。とにかく、あまり期待はせぬほうがよろしいかと……」


「そうかしら? 私は、その彼が何かやってくれそうな気がしますわ。ふふふ」


「なあに、そんな奴アテにしなくても、こんだけ人口がいれば、誰か何とかするだろ、はっはっは」

 

 能天気に笑い出す国王と王妃。


 それを見て、他の国に脱出しようかな、と本気でそう思うセバスであった。


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