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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
一章

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45/87

いえ違いますけど?


 スキルの打ち合いの結果、騎士は派手に吹き飛び、俺は全くの無傷だった。

 ライオンタロウのスキルは本当に強かったらしい。

 

 売られたケンカを買う形とはいえ、これは殺らかしてしまったかと一瞬あせったが、レナがすぐに騎士を介抱をして一命を取り留めたようだ。

 その後特になんの説明もなく、俺はひたすらレナに謝罪された。


 そうこうしているうちに、なぜか疲れきった顔のいつかのおっぱいジジイがやってきた。

 セバスは状況を見てしきりに驚いていたが、やはり騎士の男の容態を気にしているようで、結局俺に釈明はなく二人を回収して早々に去って行った。

 

 それきりだ。

 レナがさらわれたという問題は解決したようだが、要するによくわからんということ。

 

 まさかの一人放置プレイされた俺は仕方なく、イズナが心配しているだろうと思ってまっすぐ宿に戻ってきた。

 しかしイズナの姿はどこにもなかった。


 全く、どいつもこいつも……。一体なんだったんだか。

 その日は結局、魔物を狩ってGPを荒稼ぎするという予定も全てキャンセルし、そのまま宿でふて寝した。

 



 そして翌日。

 今日こそはGP稼ぎに、と思ったが急にめんどくさくなってやめた。

 明日こそは出かけよう、と思っていても、やっぱり今日は雨降ってるからやめよう、なんてことは俺にとってザラにあることだ。


 まあ、外はがっつり晴れてるんだけど。

 言い訳するならば、なぜかまたGPが15000近く増えていたという理由だ。

 

 昨日のことでなんかムダに疲れたし、ここはあかりちゃんに心身ともに癒してもらうという手もある。

 それか他に何か面白そうなスキルは……と。


 そうして俺がベッドに横になりながら、スキルストアをいじっていると、突然、バタンと部屋の扉が開け放たれた。

 直後、軽鎧を身に着けた兵士風の屈強な男が三、四人、どかどかと中に入ってくる。

 

 そしてあっという間に俺のベッドの四方を取り囲んだ。

 リーダーらしき、いかつい顔の男が見下ろしてくる。

 

「ミシマ・トウジだな」


 えっ、なんだこれ。

 自分の部屋でいかがわしい動画でごそごそしようとした時に、急に母親に乗り込まれるアレと似ている。

  

 しかもなにこの、今にも捕まって連行されそうな雰囲気。

 俺は入り口近くの傘立てに無造作に突っ込んである剣に、さっと視線を走らせる。

 やべえ、こりゃ聖剣をガメたのがバレたか……?

 

 のんびりエロスキル漁りから一転、ヤバそうなこの状況。

 俺の返事はもちろん一つだ。


「いえ違いますけど?」

「えっ?」

 

 俺の返答がよほど意外だったのか、男たちは焦って目配せし始めた。

 今のうちに逃げようかと立ち上がると、やはりごつい顔の男が立ちふさがった。


「いや、その黒髪黒目、やはり本人であろう」


 ああ、もう裏は取られているのか。

 黒髪黒目ってこの世界ではレアキャラっぽいのはいいけど、こうなると良し悪しだな……。


「な、なんすか? 僕何も悪いことしてないですけど? 誓ってしてないですけど?」

「突然で誠に恐縮ですが、ご同行をお願いします」

「いやっ、違うんす、違うんですって、ほんと、ほんの出来心で……」


 ……あれ? なんか違った? 

 いいから来い、言い訳はブタ箱で聞いてやる! かと思ったら、やけに丁寧な……。


 よく見たら、男たちは妙に腰が低い。

 この感じ、どうやら俺をパクりにきたわけではなさそうだ。

 ビビらせやがって、そうとわかれば俺がへりくだる理由などない。


「嫌だね。大体いきなり乗り込んできて同行しろとかどういうつもりだよ」

「や、これはた、大変失礼を……。ですがそ、そう言われましても……ど、どうかお願いします」


 兵士らしき男が、ぺこぺこと頭を下げてくる。

 美少女がおっぱいをたゆんたゆんさせて懇願するならまだしも、そんなものではこの俺は動かん。

 今日はもう引きこもると決めたのだ。


 断固拒否の姿勢をとっていると、また一人、部屋の外から新たな人影が現れた。

 

「はっはっは。そう言わずに来てくれないか兄弟。乗り物もよこしてある」


 なにかものすごく聞き覚えのあるよく通る声が……。

 

 嫌な予感がして視線を走らせると、そこにいたのはやはり、鎧こそ着ていないが、紛れもなく昨日の神聖騎士男だった。

 

 ニコニコとムダに笑顔でムダにイケメン。

 昨日のケガなどまるでなかったかのようにピンピンしている。


 それにしても服ださっ、なんだその下半身の白いタイツみたいなのは。

 一人で勝手に罰ゲームみたいな格好してやがる。


「あれ、あんたは……」

「やあやあ兄弟。昨日はどうも。ご機嫌はいかがかな?」


 なんだコイツ、兄弟兄弟連呼しやがって、欧米かよ。

 気持ち悪いな、なんのつもりなんだか……。

 こういう時は他人のフリをするに限る。


「えっと、どちら様で?」

「ははは、これは手厳しいな……。父の命とはいえ、君を試すようなマネをして、すまなかった。しかしあの一撃は効いたぞ、見事に聖剣を使いこなした技だった」

「いやー何の話かさっぱり。人違いじゃないですかね」

「む、そういえば聖剣は……」


 白タイツ騎士がきょろきょろと部屋の中を見回す。

 ヤバイ、見つかったら現行犯確定……。


「あ、ああっと、行くならさっさと行こうぜブラザー。ははは、こんな所にいてもなんにもないからな」

「おお! そうかそうか」


 適当にフレンドリーな感じを出してごまかす。

 なんとか注意をそらすことができたようだ。


 俺はそのまま兵士達ともども一緒に部屋を出る。


 宿を移動する間も、イケメン野郎が昨日はどんなスキルで館を燃やしたのかとかしつこく話しかけてくるが華麗にスルー。

 

 流れ上仕方なく出てきてしまったが、一体どこに連れてかれるんだか。

 スキを見て逃げるしかないな。

 

 やがて宿を出ると、その真正面、往来には見たことのない豪華な馬車が止まっていた。

 もちろん罪人を連行する……ような感じじゃない。

 

 しかしすごいな……こういうのって、一体どんな人が乗ってるのかね。

 しげしげと眺めていると、中から白いお高そうなドレスを着た女性が下りてきた。

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