放課後マッサージ倶楽部
袋にはナップサックのように紐が通してある。
紐を緩めるとあら不思議、袋全体が大きくなり、引っ張ってしめると小さくなる。
ポーチぐらいの大きさにできるので、袋の見た目よりもずっと大きなものが入るわけだ。
試しに適当な部屋の備品を入れてみる。
置き時計、木彫りの人形、皿……。
入れた後紐をしめると、重さも圧縮されるのか、なんと袋が軽くなった。
これはなんというか……不思議を通りこして少し不気味ですらある。
……大漁大漁、こっそり持ち出して売りさばいて……。
なんてことはやらないけど。
ただ、目いっぱい広げてもせいぜい背負うリュック程度の大きさなので、聖剣は中に入りきらなかった。
物が全部入りきらないと紐がしまらないようになっていて、これでは意味がない。
けど十分、便利は便利だ。
本来なら、色々アイテムとか入れたりするんだろうが……。
ただ悲しいかな、今現在、中に入れるような持ち物がなかった。
まあいい、これはおいおい有効活用するとして……それにしてもおじさんもう疲れたよ。
一度ソファーから立ち上がってベッドに身を投げると、どっと疲れが押し寄せてくる。
ただでさえ長いこと家にこもっていた人間に、やはりこの連日の森歩きはしんどい。
精神的な部分もあるのかもしれないが、気のせいかレナと別れてから急にだるくなったような。
真面目に、あの子は何かそういう癒し的な力でも持っているんじゃないかと思う。
あの無防備なエロエネルギーとかおっぱいパワーとか。
だがこの寸前でおあずけ食らったような感じは本当に体に悪い。
なんというかこう、身も心もリフレッシュできるようなスキルはないものか。
すでに風呂に向かうのもしんどくなっていた俺は、寝転んだままウィンドウを開いて、検索を始める。
『リフレッシュ マッサージ おっぱい』
おっといけない、余計なワードを入力してしまったようだ。
まあ、そういうこともあるさ。
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スキル名 放課後マッサージ倶楽部
作成者 2.5次元の神
概要
こんにちは、放課後マッサージ倶楽部でぇす!
疲れたアナタを、心身ともに癒しまぁす(はぁと
初回無料なので、ぜひ一度、試してみてくださいね☆
ダウンロード無料
アクテイブスキル
発動ごとに要3000GP
スキル内課金あり
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うわなんだろうこの感じ。
なんだかオラすっげえワクワクしてきたぞ……!
ダウンロード無料に、初回無料か……。
しょうがない、軽く様子見してやるとするか。
軽くね。
俺は光の速さでスキルを落として発動した。
するとウィンドウ全体が切り替わり、やたら丸っこいフォントで『放課後マッサージ倶楽部』とメニュー画面が表示された。
今にもギャルゲーでも始まりそうな雰囲気だ。
タイトル下の「すたーと」を押すと、画面が切り替わる。
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好みのタイプを選んでください
天然ゆるふわな先輩 なみ
ツンデレ幼なじみ あかり
貧乳クーデレの後輩 ゆい
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「おおっ」
思わず声が出てしまった。
画面には、イ○ュージョンも真っ青な3Dモデルの女の子が表示されていた。
若干アニメ調ではあるがリアル寄りだ。
スライドすると、次々キャラが入れ替わる。
「う~ん……」
何度もスライドを繰り返し、吟味する。
う~ん、なみ先輩の巨乳は言うまでもないが、ゆいちゃんのジト目も捨てがたい。
でも天然な巨乳とか、無口なチビっこって、なんかどっかの誰かと被るっていうか……。
熟考に熟考を重ねた末、俺は「ツンデレ幼なじみ」をタップした。
やっぱ今の俺にはツンデレ成分が足りないでしょう。
セーラー服にポニーテール、ややツリ目だがモデリング的にもたぶんこの子が一番かわいいな。
さて選んだはいいが、どうなることかと待ち構えていると、突然脳内に直接響くような女の子の声がした。
『なによもう、疲れたっていうの?』
「えっ?」
驚いて目をまたたかせる。
するといつの間にか目の前には、ウィンドウの中にいたはずの女の子がそのまんまの姿で立っていた。
あかりちゃんや、あかりちゃんは実在したんや。
これが真の2.5次元……全然アリやんけ。
若干体が透けてる気もするが、この際細かいことは気にしないようにしよう。
『もう、しょうがないわね~。感謝しなさいよ? こんな美少女にマッサージしてもらえるなんて』
「えっ、あっ、はい」
なんやわからずかしこまってしまう。
あかりはきわどくスカートを翻すと、隣に座って俺の二の腕を揉み始めた。
いきなりの展開にテンパってしまう。
「あの、こ、これって、どういう……」
『なによ、黙ってマッサージされてなさいよ』
「やっぱこれ、スキルの効果なんすかね……」
『なによ、黙ってマッサージされてなさいよ』
「す、すいません」
とりあえず謝っておいた。
どうやら会話はできないらしい。
なんかこれだけリアルな感じで、同じセリフ繰り返されるとちょっと怖いっす。
別に病み属性とかそういうのないでしょうに。
あかりは二の腕、肩、と揉み終わると、不自然に口をぱくぱくさせた。
『じゃあ、次はうつ伏せになりなさい』
かしこまりました、と言われるがままベッドの上にうつ伏せになる。
とたんに、腰の上辺りに柔らかい感触が当たる。
はっと思わず首をひねって振り向くと、あかりが俺の背中に乗っかっていた。
これは……おしりの感触が再現されているということか?
「ほら、じっとして」
肩から背中、腰にかけてマッサージが始まる。
これは……気持ちいい。文句なしに。
しかもむにむにと当たるお尻の感触とかすかな重みがなんというか……たまらんです。
そんな調子で、肩から始まり足の先まで、一通りマッサージが終わった。
「どう? 気持ちよかった?」
「ああ、最高だよあかり」
この男、ノリノリである。
お礼に頭を撫でてあげようと、あかりの頭に手を伸ばすと、手は空を切った。
はっ、あかりは現実じゃない? そんな……。
ていうか手が顔面に吸い込まれて正直キモイ。
なんか知らんが、向こうから触れられると感触があるが、こっちからは触れることはできないらしい。
立体映像的なものなのかね。
しかしこれって、俺以外にも見えているのかな?
一人でブツブツ言ってたらキモすぎる。どの道、他の人に見られたら軽く死ねるな。
『べっ、別にあんたのために、練習したわけじゃないんだからね!』
ベタやなぁ~。
と言いつつもニヤニヤしてしまう自分がいる。
こいつぁ臨場感がヤバすぎるぜ。
さて次はなみ先輩を指名しようかな、と考えていると、突然ウィンドウが起動して目の前に割り込んできた。
『あなたは18歳以上ですか?』
……?
唐突になんだ?
とりあえずはい、をタッチする。
するとあかりが急に体をもじもじさせながら、頬を赤らめだした。
『そ、それでね? ま、まだ、マッサージしてないところが、あるんだけど……』
……ん?
こ、これはもしや……!
続きはノクターンで。
……というのは冗談です。