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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
一章

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33/87

ずばり神スキルとは……


 ひゅっと投擲。

 思いのほかスピードがあり、矢は一直線へ的へ。

 

 トッ、と小気味いい音を立てて、ダーツは的のど真ん中に刺さった。

 一瞬水を打ったように静まり返った後、一気に会場内にわっと歓声が起こる。


「おおっ!? こいつは文句なしのど真ん中! 200点だぁ!」


 あぁ、詐欺スキルじゃなくてよかった。

 これ系の神スキルは本当に使ってみるまでわからないから、ヒヤヒヤする。


「いや~やるじゃねえか兄ちゃん! こりゃ~エルフ嬢の500点越え、あるかもわからんぜ?」


 あのエルフは500点取りやがったのか。

 エルフは弓とか得意そうなイメージがあるし、そういう技能スキルが関係してるのかね。


 ど真ん中が200でその周りが100。

 200点の赤い丸は本当に小さくて、三本も刺さらない気がするんだが……。


 半信半疑になりながら、二投目。

 設定はそのまま、狙いは中央。


 もうスキルの流れはわかっているので、スムーズに発動、投擲。



 ――ストッ。



「で、出たあああぁぁあっ! 継ぎ矢だああぁっ!」


 司会の叫びと共に、場内にいっそう大きな歓声が上がる。

 投げた矢は的ではなく、的に刺さっているダーツの尻に刺さっていた。


「すっごぉおおい! もうこれトウジの優勝だよね! やったぁ!」

「え、あれって何点すか?」

「いやぁ、点数は200だが……たまーにあるんだよな。しかしど真ん中とはなぁ、驚いたぜ」

 

 なんだ、ボーナスで得点もらえたりしないのか。

 でも待てよ、このスキル、寸分たがわずど真ん中に飛ぶとしたら……。


「さあ、ラスト一本、ここでトチったら全てパア! どうなるどうなる!?」

「と、ト、トウジ、お、おち、落ち、落ち着いてっ!」


 集中を乱すような司会の煽りと、焦らせようとしているかのような嫌がらせにも近いレナの声援。

 とりあえずお前が落ち着け。


 観客もみな固唾を飲んで俺の手元を見守っているのがわかる。

 この状況、本来かなりのプレッシャーなんだろうが、俺はいたって冷静だった。


 だってこれ、ただスキルを発動するだけで、俺の精神状態とか集中力とか関係ないし。

 それに、すでになんとなく結果が……。


 スキルを発動して、三投目。

 鋭く風を切る音とともに、ひゅっとダーツが飛ぶ。



 ――ストっ。

 


「……な、なんじゃこりゃあああっ!! 二本連続で継ぎ矢ぁぁあっ!?」


 司会の男があんぐりと大口を開ける。

 案の定、ダーツは二本目の矢のケツに刺さった。

 ……やっぱりな。


 すぐさま場内に割れるような喚声が巻き起こる。

 ビックリして思わずふさぐと、司会の男が満足そうな笑顔を浮かべながら、バンバン背中を叩いてくる。


「いや~やってくれたぜ兄ちゃん! こんなの見たことねえぞ! こりゃもう、文句なしに優勝! 1000点ぐらいやってもいいな! がははは!!」


 そして上機嫌で景品の道具袋を引っつかんできて、俺の手元に押し付けてくる。

 

「おら、景品だ持ってけ!」


 その場で一等が決まった。

 まあ、さすがにこれ以上は無理だろうからな。


「さあ、今夜のヒーローに盛大なる拍手を!!」

 

 わあっとまた会場が沸き立つ。

 しかしすごい熱気だ。

 俺としてはこんなつもりじゃなかっただけに、少し居心地が悪い。


 歓声に包まれながらさっさとステージから下りると、目の前にすらっとした長身の女性が立ちはだかった。

 さっきの高得点を出したエルフだ。

 小さく拍手をしながら、俺に話しかけてくる。

 

「素晴らしいものを見せてもらったわ。よければ参考までに、どんな技能スキルを持っているのか教えてくれないかしら?」

「いや、技能スキルは特に……」

「じゃあ何か特殊なアクションスキルかしら? でも的当てのスキルなんて、聞いたことがないし……」


 エルフのお姉さんは目線を上にやりながら、首をかしげる。

 だがやがてふっと笑って、

 

「ヒミツってわけね。そうよね、早々他人に手の内を明かすようなことはしないわよね」

「はは……まあそんな感じで」

「ふふ、気が向いたら声かけてね? ご飯ぐらいはおごるから」


 ぱちりと片目をウインクさせると、そのまま観衆の中に紛れていった。

  

 いやぁ参ったな。

 これはエルフ美女とお近づきになれてしまうかもしれないな。

 しかしタネ明かししたら怒られそうな気もするが。


「わっ」


 その時、ふよん、と柔らかい感触が背中にぶつかってくる。

 この感じ……、レナのおっぱいか。


 とニュー○イプ的な勘で振り向くと、やはりそうだった。

 レナは目元を手で押さえながら、なぜか半泣きになっていた。

 

「うぅっ、うっ……トウジ、ごめんねぇ……私、プレゼント、してあげられなくて……」

「い、いやいや、景品もらったから」


 何かと思えば……。

 自分であげたかったってことか? 別にいいのに……。


 というか俺に謝るよりも、君は無差別にダーツをぶっ刺したおっさん二名に謝りなさい。


「私、こんなグズだけど、本当にいいの?」

「い、いいよ、いいって。いいから泣くのはやめてくれって」


 なにがいいんだか知らんが、あー泣かせてるーみたいな野次が飛んできて非常に気まずい。

 もう飯も食ったし、早いところ退散しよう。


 と俺がぐずるレナを引きずって足早に入り口へ向かおうとすると、またもや何者かに呼び止められた。


「待ちなさい!」


 誰かと思えば今度はエミリだった。

 なにやら勝ち誇ったような笑みを浮かべている。


「トウジくん、私の目はごまかせないわよ……」

「はい?」


 そう言ってエミリはびしっと俺の顔に、ひとさし指を突きつけてきた。


「ズバリ今のは、神スキル! 神スキルとはすなわち! 的当てのことだったのね!」

「いや違いますけど」

「ごまかしてもムダよムダ! やっぱり遊び人、適職じゃない。今度転職しにいらっしゃい」

「だから誰が遊び人だ!」


 俺は「なによちょっとー逃げるの~!?」としつこく絡んでくるエミリから逃れるように、まんぶく亭を後にした。

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