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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
一章

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30/87

エデンターキーパーティ

 トマリギを出て大通りを横断し、反対側の建物に向かう。


 開けっ放しの扉からは、近づくだけで中の喧騒が聞こえてくる。


 まんぶく亭の敷居をまたぐなり、入り口で恰幅のいい男に声をかけられた。


「おうらっしゃい! 今日はエデンターキー食い放題だ! 参加料は400アルムだぜ」

「あの、これ……」


 持ってきた紙切れを渡す。


「おう、招待券か。飲み食いは自由だからよ、好きにやってくれ!」


 威勢よく背中を叩かれて、中に迎え入れられる。


 広い店内はすでに大勢の客でごった返していて、飲めや食えやの大騒ぎだった。


 あちこちに料理の置かれたテーブルがひしめき、みな好き勝手にその合間を動き回っては飲食し、談笑を交わしている。


「は~……ビックリ。すごい熱気だねえ」


 レナが目をぱちぱちさせながら、おっかなびっくり周囲を見渡す。

 さっきまでノリノリだったが、若干周りの勢いに飲まれ気味のようだ。


「どした? 想像と違った?」

「う、うん。パーティーって、もっと静かな感じだと思ってて……私、こういうのは初めてで……」


 そういう俺もこういう場は慣れてない。

 大学入りたての頃、周りにあわせて居酒屋でアホみたいな宴会騒ぎをやっていた時期はあったが、こういう立食形式で老若男女入り乱れてのパーティは経験がない。


 老若男女どころか、見るからに獣っぽいのとか、耳が長くてスレンダーでまるでエルフみたいなお姉さんだとか……。


「ってエルフ!? あれってエルフだよな!?」

「うん、エルフだね。珍しいは珍しいけど、何そんなに騒いでるの」

「いやだってエルフだよ? すっげ~」


 エルフお姉さんはすでに数人の男に取り囲まれていた。

 よくよく見ればエルフは一人だけではなく、あちこちでそんな小さな人だかりができている。

 

 こうなったら俺も乗るしかねえ、このビッグウェーブに、とばかりにエルフたちを吟味していると、


「エルフはいいから、私たちも食べよ!」


 ぐいっとレナに無理やり腕をひっぱられて、手近なテーブルへと連れて行かれる。

 

 テーブルの上にはカゴに盛られた果物と、ケン○ッキーのフライドチキンに酷似したものが豪快に皿に積まれていた。

 これがエデンターキーというやつか。

 

 非常に腹が減っているということもあり、匂いや見た目、とてもうまそうではあるが果たして味はどうか。

 期待半分不安半分、ターキーの山から一つとって口に運ぶ。


「う、うまい……」


 あまり期待していなかっただけに驚いた。

 ただ揚げただけではなく、しっかり味付けがされている。

 肉自体も柔らかくジューシーで、噛みつくたびに肉汁があふれる。


 隣でレナも肉をほおばりながら、同じように感想をもらす。


「おいし~! 私初めて食べたけど、おいしいね」

「あれ、レナってここに住んでるんでしょ? 食べたことなかったのか?」

「え? ええと、あ、私普段、こういうのは、食べないから!」


 ……じゃあなに食ってんだよ。


 昨日の晩、宿の食堂であまり味のしないお粥と山菜みたいなのが出てきたときは軽く絶望しかけた。

 しかもそれが、そこそこ上等な食事だという。


 そのときレナは何も文句を言わずに食っていたが……、いつもああいうのを食っているのか?

 

 これなら毎日でもいけるな、と俺が二つ目に手を伸ばすと、いきなり横から素っ頓狂な声が飛んできた。


「あっ、神スキル!」


 は? と振り向くと、グラス片手に若干赤い顔をした女性が、大口を開けて俺の顔を指さしていた。

 指さしとは失礼な。


「あれ、どっかで見たような……。巨乳のスキルマニアの転職お姉さん」

「エミリよ! そこまで覚えていてなんで名前が出てこないわけ?」

 

 お返しだよ。

 しかしでかい声で神スキル呼ばわりとは、守秘義務違反もはなはだしい。

 

「ところであんた、仕事はどうした?」

「今日はこのパーティのために早上がりしたの。ふっふ~、にしても、ここで会ったが運のツキよ。神スキルのこと、もっと具体的に教えて!」


 ぐっとグラスを口元に傾けると、エミリは酒臭い息を吐きながら迫ってくる。

 仕事中でないからか飲んでいるせいなのか、思いっきり慣れ慣れしいタメ口だ。


「イヤだね。あんたにしゃべったが最後、町中に知れ渡りそうだし」

「そんなこといわずにぃ、ね~ぇ~?」


 エミリはしなを作って、乳を寄せてくる。

 そんなもんに乗せられるわけ……って、酔ってるとはいえちょっとやりすぎだろこれは。

 

 これは話したら揉んでもいいってことなのかな? 

 僕迷っています。今、すごく迷っています。


 するとレナがずいっと間に入ってきて、乳を引き離した。

 

「ちょっとやめてくださいそーいうの! メーワクですから! ね、トウジ」

「いや、まあそこまで迷惑では……」

「ね!」

「はい」


 ここは逆らわないでおこう。

 俺はおとなしく引き下がるが、エミリはまだ絡む気満点のようで、


「やぁんもう、怖い怖い。ほら、これでも飲んで、ちょっと落ち着いて」


 赤い液体の入ったグラスを無理やりレナに持たせる。

 レナは遠慮気味にグラスの口元で鼻をひくつかせると、すぐに顔をしかめた。

 

「これって、お酒……」

「え? お酒に決まってるでしょ? まさか飲めないの?」

「の、飲めないっていうか、飲んだことないだけです!」

「……なんでキレ気味なの? それにしてもいやぁねえ、お酒も飲んだことないとか、お子様じゃないの」


 エミリがくすくす、と鼻で笑うようにする。

 そういうベタな煽りはやめなさいというに。


 レナも挑発に乗らないように、と割って入ろうとすると、レナはいきなりグラスに口につけるなり、ぐいっと一息に飲み干した。

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