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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
一章

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28/87

体は聖剣でできている……


「い、いやぁ~、まさか神聖騎士の方でしたとは……、あ、いや勇者でしたか? どうもどうもこのたびは……」


 腰をかがめ、もみ手をしてへりくだってくるアムリル。

 このわかりやすい態度の急変。

 相当この聖剣が怖いらしい。


「いえいえ、こちらこそ。さんざんコケにしてくれまして、まあその分はきっちり落とし前つけさせてもらおうかなと」

「えっ、コケになさった? あなた様が、コケになされたんですか? 一体、どこのどいつですかその不届け物は……」


 お前だよ。

 謎の敬語を使ってくるが、不届け物ってなんだよ、宅配じゃねーんだぞ。


「おい、この方をコケにしたのはお前かマシュー! 今すぐ死んで詫びろ!」

「えっ」


 さっきからもだえている手下に向かって、容赦なく無茶振りをしていく。

 爽快なまでにクズい。

 子供のくせにこんなんじゃ、お兄さん先行きが心配だ。

 

 俺はアムリルに向かって聖剣をちらつかせる。

 

「これはちょっと教育が必要かな? 口で言ってもわからなさそうだし」

「こ、これはこれは相当、ストレスがたまっておられる様子。ここはわらわの体で、少し発散していかれてはどうかの?」

「そう? じゃあ遠慮なくボコさせてもらおうか」

「ち、ちゃうちゃう、そういう意味じゃなく!」


 他にどういう意味があるんだよ、といぶかしんでいると、アムリルはにやりと妖しげな笑みを浮かべた。


 そして、すすす、と身につけたローブの裾をゆっくりたくし上げ、そのまま惜しげもなく下腹部を見せつけてくる。


 下半身には、一丁前にガーターベルトのようなものを身に着けていた。


「わらわにはサキュバスの血も流れておるからな。ココはそれはもう名器じゃぞ? きっと満足すること請け合いじゃ」


 一瞬ドキっとしたが、手を出したらどうにかなってしまう奴だろう。

 サキュバスって自分で言ってるし。


「今度は色仕掛けかよ。まったく、魔族としてのプライドはないのか?」

「い、色仕掛けなどと、とんでもない! これは体が、自然に優秀な精気を欲しておるのじゃ。んふふ……」


 アムリルはいやらしく口元を緩めながら、舌なめずりをする。

 なんか知らんが妙にエロい。

 見た目子供のくせに、なぜか成熟した大人の色気のようなものを感じる。

 

「どしたのトウジ? まさかあんなのにひっかからないよね?」

「は、はは……、それはもちろん……」


 レナにしては珍しく強めの固い口調。

 ちょっと僕の息子が勝手に……。

 などと言える雰囲気ではない。


 落ち着け。サキュバスとはいえ、相手は子供だ。

 しかし考えようによっては、子供のサキュバスとか、かなりエロい響きだ。

 普通にアリやな。


 いや待て違う。

 冷静になれ、これはどう見ても罠だ。

 よし、こんなときはレナのおっぱいを眺めて深呼吸だ。


「今じゃ、マシュー! 女じゃ! 女を狙えっ!」


 アムリルの叫びとほぼ同時に魔族ががばっと起き上がり、レナに襲い掛かった。


「きゃあっ!」


 いきなり女を狙うとか最高にクズい。

 気高い魔族とやらはどこにいった。


 今度はケツを思いっきり突き刺してやろうと剣を構える。

 だが男の魔族がレナの二の腕を掴んだとたん、また甲高い悲鳴を上げた。


「ぎぃぃやあああっ!?」

「ああっ!? どうしたマシュー!?」


 マシューという魔族が腕を押さえながら身悶える。

 手のひらからは、シュワシュワと煙が出ていた。


「な、なんかわかりませんがヤバイです、この女ヤバイです!」

「なんかわからんっておまえバカか、ちゃんと説明しろ!」

「いえそれが、なんというか、ヤバイんです、体がもう聖剣みたいな!」

「バカか! そんなわけあるか! 意味わからんぞおまえ!」


 二人してぎゃあぎゃあ騒ぎ出した。

 なんという低IQな会話。


「だったらこれを使うんじゃ! ほれ!」

「あっ、そうですね! さすがアムリル様!」


 アムリルが聖剣づかみを手渡すと、マシューは再びレナを襲おうとする。


 もちろんそうはさせるかと、俺は剣を突きつけるようにして立ちふさがった。


「お客さんちょっと困りますねえ、女の子にはお触り禁止なんすけど」

「ぎゃああっ、くっさぁああ!! 目にしみるぅぅ!」


 今度は両目を押さえて苦しみだした。

 

 うーん……いまいちしまらん。

 どうにかならんのかこれ。

 俺がすげえ臭いみたいじゃん。


「くそっ、こうなったら無理やり吸いとったる、吸いとったるぞぉ!」

「わっ、やめろ!」


 アムリルが下半身に飛びついてきた。

 そしてすぐさまズボンを下ろそうとするがすぐに、


「目が、目がぁぁああっ!」


 などとわめきつつ地面を転がリ始めた。

 そしてフラフラになりながら立ち上がる。


「もう辛抱たまらんっ!! ず、ずらかるんじゃっ!」

「だ、ダメですぅ、匂いがヒザに、ヒザにきてますゥ!」


 ガクガクと下半身を震わせるマシュー。

 どんだけくせえんだよ。

 

「知るか! 自分の身ぐらい自分で守れ!」

「ひぃっ、そ、そんなぁっ、お助け、う、うぉえっ!!」

 

 えずいてるし。

 それでもアッサリ見捨てるとは、ひどい上司だ。

 

「ちょっと待ってくださいよ、俺もついていきますよ、荷物運びなんで」

「ごめんなさい許してぇええっ、ついて来ないでぇええっ!」

「あれ、奴隷にしてくれるはずだったんじゃ?」


 アムリルは口元を押さえてぶんぶんと大きく首を振る。

 もはや声を発するのすらしんどいといった様子だ。

 

「あれ、なんだろう温かい……」

「マ、マシュー! 気をしっかり持ていっ!」


 そっちの男にいたっては浄化しかけてるし。


 これはもう無理と判断したのか、アムリルは俺の前でがばっと土下座を始めた。


「こ、こたびの無礼っ、ど、どうか、お許しをっ! 神聖勇者騎士さまぁっ!!」


 どんな騎士だよ。

 混ざってよくわからないものになってるぞ。


「まあいいか。聖剣も無事だったし」

「お、お慈悲を、ありがとうございますぅぅっ!」


 アムリルはぺこぺこと何度も頭を下げると、懐からキラリと光る小さな装飾品らしきものを取り出した。


「ではでは、お近づきの印に、こちらをお納めくだされ」

「いや、別にそういうのいいけど」

「そんなこと言わずに、ぜひともぜひとも」


 そう言って押し付けるようにして、俺の手に握らせてくる。


 アムリルが渡してきたのは指輪だった。

 指でつまんで眺めると、赤い大きな宝玉が埋まっており、なかなかにお高そうなものだ。

 

「そ、それではこれにて失礼をば……。おいマシュー! 成仏にはまだ早いぞ!」


 アムリルはへこへこと腰をかがめると、魂の抜けかけているマシューの首根っこを強引にひっつかんで逃げていった。

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