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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
一章

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25/87

王国依頼 聖剣探し


「確かこっちのほうだったと思うんだけど……」


 足早に進むレナのあとについて、森の中を歩いていく。


 俺とレナはクエストを受けて、昨日の森の中にやってきていた。




 クエストの依頼主はエデンティラ王国。

 国をあげての、いわゆる緊急クエストという奴らしい。

  

 成功報酬はなんと十万アルム。


 さらに冒険者ランクを上げるために必要なギルドポイントも、1000もらえるという。


 受注ランク制限もなくこの報酬は、かなり破格だという。

 

 国は相当焦っているようで、すぐにでもこの問題を解決したいようだ。

 だが正直俺は、最初このクエストに乗り気ではなかった。

 

 俺たちがちんたらしている間にも、クエスト受注者はドンドン増えていた。


 そんな中、一枚も二枚も上手なヤツらを出し抜いて、俺たちがそのクエストを達成できるとは到底思えなかったからだ。



 で、その肝心のクエストの内容はというと……。


 聖剣ディバイン・ハートの回収。

 

 

 俺が依頼書を見て、聖剣とかなんのことやらさっぱりだな、とレナに同意を求めると、


「あっ、やばっ……」

「は? なにがヤバイって?」

「あ、いや……えっと、私、場所……わかるかも」


 などという返事をされて、あれよこれよと結局クエストを受けるハメになった。


 もちろん色々と問い詰めようとしたが、「そ、そんなことより早くしないと先を越されちゃうよ」とうまくかわされ、やってきたのはいいが……。


 



「……あのぉ、レナさん?」


 先ほどから、すっかり歩みが鈍くなってきているレナに問いかける。

 すると案の定、レナはビクっと肩をすくめた。


「な、なぁに?」


「まさかとは思うんですけど……その場所、お忘れになられてます?」


「……えへへ、わかる?」


 いやえへへじゃねえよ。

 よくよく考えれば、まともにギルドの位置すら覚えていない人間に、森の中を記憶できるわけないよな。


「でも、確かあそこの崖から落ちて……」


 どんなサバイバルしてたんだよ。

 

 勝手にはぐれたレナを、セバスが血眼になって探す、みたいな姿が自然と目に浮かぶ。

 

「うおおおーっ、聖剣はどこだーっ!」


 遠くで変な雄たけびが聞こえる。

 おそらく同じクエストを受けた連中だろう。


 これまでも、それらしき人物と何人かすれ違った。

 あちこちで人影がうろうろしていて、森の中は昨日とはうってかわって騒がしい。


 森は意外に広く、結構深いところまでやってきたように思う。

 勢いに任せてなにも準備せずにノリでやってきてしまった。


 俺もレナも、武器も何も持っていない。

 服装だって、相変らずTシャツGパンだ。レナも鎧は昨日脱ぎ捨てたまま。

  

 聖剣を探すだけとはいえ、魔物に絡まれたら結構厄介かもな。

 

 まあ一応、ゴブリンぐらいならワンパンできるファイアボールはあるし、もしまたマスターゴブリンが出てきたらおっさん呼べばいいわけだし、それはそれで経験値がおいしいか。

 

 だが問題は肝心の聖剣だ。

 場所を知っているというアドバンテージがないとなると……。

 

 というか本当にこの森の中に聖剣があるのか? 

 大体なんだってこんなところに……。


 やはり一度確認を取ろうと、はっきりしない足取りのレナの背中を呼び止めようとする。

 

 だがその時、くいくい、と服の裾が引かれる感覚がした。


 振り返って見下ろすと、そこには装束姿のイズナが、俺のシャツの端をつまんで引っ張っていた。


「わっ、なんだお前……」


 それには答えず、イズナは無言であさっての方角をぴっと指さす。


「なんだよ、向こう?」


 聞き返すと、イズナは小さくうなづいた。

 そしてそれきり何も言わずに木に飛び乗って、そのままどこかへ消えていった。


 なんなんだよあいつ……。

 ていうかまたついて来てたのか。


 俺はレナに声をかけて、イズナが指した方角を伝える。


「う~ん、私はそっちじゃないと思うんだけどなぁ。でもトウジが言うんなら、そっちに行くね」


「いや、違うんだったら別に……」

 

 違うと思うのに従っちゃうのかよ。

 そもそも場所がわかると言い出したのは誰だ。

 

 結局、俺が先頭に立ち、イズナの指示した方に進む。

 これは下手すると、帰れなくなるかもしれないな……と思い始めたとき、行く手から、男の悲鳴が聞こえてきた。

 

「ぎゃあああっ!!」

「ひぃぃぃいいいっ!!」

「あああああっ!!」


 輪唱をはじめる野太い声に、立ち止まって何事かと身構える。

 ややあって、がさがさがさっと前方の茂みの中から、人影が飛び出してきた。


「きゃあああ!!」


 今度は後ろでレナの悲鳴が上がり、背中に柔らかい感触が伝わって来る。

 ひしっと抱きつかれたようだが無理もない。


 なんせほぼ全裸のおっさんが奇声を上げながら、決死の形相で現れたのだから。

 しかも×4体。

 

「出たな変質者どもめ」

「ち、違うんだこれは、魔族にやられたんだ! 魔法で燃やされて……」


 見れば、髪の毛がチリチリと燃えている。

 靴はしっかり履いているところを見ると、かなりの紳士……ではなく、服はすでに燃やされたのだろう。

 

「こっ、この先で、聖剣を見つけたんだ! けど、魔族が現れて……」


「魔族……?」


「ヤツラも聖剣を取りにきやがったんだ! お前達も早く逃げたほうがいい! 並みの冒険者ではヤツラには太刀打ちできん!」

 

 上から目線で警告してくるが、どうしても風にそよぐ乳毛が気になる。


 股間にそこらで拾った葉を押し当てているようだが、微妙に隠せていない。


 セリフだけならカッコいいが、非常に絵面が汚い。


 俺は冷静に、服を焼かれてしまったかわいそうな女の子は? と見渡すも揃いも揃って野郎ばかり。


 俺の背後に隠れるレナに、じろじろいかがわしい視線を送ってくる輩もいて、そんなのが四身の拳とばかりに取り囲んでくる。

 

 傍目から見るとかなり危険な状況だ。

 

「ほら、何をぼさっとしている! よし、その子だけでも、僕らが護衛していこう!」


「あ、いや大丈夫なんで」


「なあに、遠慮は要らんよ。困った時はお互い様だ!」


「お気遣いなく。今んとこ困ってないんで、大丈夫っす大丈夫」


「キミ、本当に大丈夫かね、そんなわけのわからない格好で!」


「いえ、裸の人よりは多少はいけるかと」

 

 俺は紳士たちの誘いをひたすら受け流して、何とか追い払った。


 ある種魔族よりも魔の者か。

 大自然で裸体をさらして、彼らも少し開放的になってしまったのかもしれない。


 嵐が完全に去ったのを確認して、やっとのことでレナが体を離す。

 

「はぁ、怖かったぁ……」


「さてどうする? 魔族だってさ。俺たちも逃げる?」


「でも、このまま魔族に聖剣を取られちゃったら……」


「まあ、報酬はおしいなー」


「……これも元はと言えば私のせいだし……。私、取り返しに行く!」


「おいどこへ行く!」


 レナが勇み足に歩き出す。

 だが向かおうとしているのは全然別の方角だった。


 俺は仕方なくそれを制して、男たちが逃げてきた先へ向かった。

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