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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
一章

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22/87

ユニークスキル


「なんですかこの『神スキルストア』って! ぶふっーっ、くすくす」


 エミリはカードを見て盛大にふきだした。


「神て。神スキルてなによそれ。どういうスキルよ、ウケる~、うぷっ」


 俺はケタケタと笑うエミリの口元にアイアンクローをかました。


「おい、守秘義務はどうした」

「し、しいましぇん……」


 すかさずエミリの手元からカードを取り返す。

 俺のスキル欄は真っ白だった。

 ユニークスキルの所に、「神スキルストア」とあるだけ。

 どうやらストアで習得したスキルは、ここにはいっさい表示されないらしい。


 よく考えたらこんななんでもありなスキル持ちに、適職もクソもないな。

 エミリにまともに判断できるとは思えない。

 

 そのまま立ち去ろうとすると、

 エミリがカウンターから身を乗り出してきて、必死に袖を掴んできた。


「ちょ、ちょっと、ちょっと待って! ごめんなさいごめんなさい、笑ったのは謝りますから! 私、見たことのないスキルを見ると、テンションあがっちゃって……レアなスキルに目がないんです! スキルマニアなんです! この仕事やってるのも、それが楽しみで……」

「なるほど、職権乱用して人のスキルを盗み見ると」

「ち、違います! まじめに診断だってやってますから。それにちゃんと『初級ジョブ転職』スキルだって持ってますし! それで、この神スキルストアって、一体なんですか? こんなスキル、今まで見たことも聞いたこともないんですが! 教えてください、この通り! お願いします!」

 

 エミリがでかい乳をたゆんたゆんさせながら懇願してくる。

 いくらおっぱいを揺らされたところで、答える義理はない。

 のだが……。


「えーっ、なになに、どういうスキル? やっぱトウジって、すっごいスキル持ってるんだぁ」


 レナも食いついてくると逃げ場がない。

 まあ遅かれ早かれ、話すことにはなっていたとは思うし……。

 俺は改めてエミリに念を押す。

 

「今度はきっちり守秘義務を守れよ?」

「はいはい! それはもちろん!」

「えー……、簡単に言うと、俺は別の世界から転生して、ある神からこのスキルをもらった。で、いろんな神が作ったスキルを使えるっていうのが、この神スキルストアだ」

「て、転生? 神からスキルをもらった? ぷっ……、またまたそうやって、冗談きついですよぉ~」


 そうそう、どうせこうなると思ったから別にいいかなってね。

 簡単には信じないわな。


「へぇ~、そうだったんだね」

「え?」


 と思いきや、レナが感心した顔で、しきりにうなづいている。


「いや、今の話、信じてるの?」

「? 当たり前じゃない。トウジがウソつくはずないもん」


 え? 割とつきますけど……。

 ていうか実際何回かついてるだろ。

 なんで俺そんな正直者キャラになってんの?


「あのそれ、文字を触ってもらえばスキルの詳細が出ますから。それ見せてくれれば……」

「バージョン2.1としか表示されないんだが」


 カードを見せてやると、エミリはいよいよ険しい顔になって、首をひねりだした。


「……こんな意味不明な表示が出るなんて、そんなバカな……。まさか本当に神のスキル? なんにしろ、今後、要チェック人物ね……」


 エミリはそうして一人ぶつぶつとつぶやいた後、

 にこっととびきりに明るい笑顔を作った。


「まあ、なにはともあれ、これからも末永くよろしくお願いしますね、トウジさん!」


 どうにも怪しい。

 くすくす笑ってやがったクセに、手のひら返したようにフレンドリーな態度だ。


「これからって言われても、説明が終わったら、特にあんたに用はないと思うんだけど」

「やだなぁ、私「初級ジョブ転職」スキルを持ってるんですよ? 転職の際は、私が必要になること間違いなし。そうそう、せっかく冒険者登録したんだし、早速転職していきましょう!」

「いきなり転職とか言われても、仕組みがよくわかってないんだが」


「じゃあ、まずはスキルとジョブの説明をします。スキルには、大きく分けてアクションスキルと、技能スキル、ユニークスキルがあります。アクションスキルはMPもしくはHPを使用して発動する特技や魔法になります。レベルが上がると獲得するスキルポイントを使って習得します。これは対応するスキルが使用可能なジョブについていないと使えません」


「次に技能スキル。これは武器や魔法の習熟度になります。剣Lv1とか、火魔法Lv1だとか。これらは基本的な攻撃力や命中に影響してきます。攻撃力は技能スキルレベルとステータス、アクションスキルの倍率によって決まりますから重要です。これらは一度獲得すれば転職しても残りますが、例えば剣士は魔法を使えませんし、魔法使いは剣を装備できないので、両方のスキルを発揮したいなら上級職である魔法剣士になるしかありません」


「それと最後にユニークスキル。ユニークスキルとは、生まれながら個人に備わっている才能、資質、もしくは自ら得た特別なスキルのことです。自力で編み出した必殺技、なんかもここに入りますね。これはどんな職業についていても無条件で使うことができます」

 

 一気に説明されてややこしくてよくわからんが、基本的には使えるスキルは職業によって縛られるということらしい。


 となると、無職にもかかわらずスキルストアで攻撃魔法だの鑑定だの同時にできるというのは、かなりのチートかもしれないな。

 

 俺の場合、スキルを気にしないんだったら、職業は何でもいい気がする。

 

「だったら、とにかくあれだな。死にたくないから、HPが高くて上昇も早くて、運も高いみたいな……」

「その条件だと、今のトウジさんのステータスからすると、適職は……」


 エミリは下を向いて、手元の資料をぱらぱらとめくり始めた。

 だがすぐに、顔を上げて満面の笑みで言った。


「遊び人になりますね」

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