ステータス
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クエスト(受注0)
ステータス
スキル
ギルドマネー
戦績
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「なんだこれ」
「そのステータスっていうところを指で触ってみて」
レナに言われるままに、文字に触れる。
すると全部の文字が一度消えて、再び新しく文字と数字が浮かびあがった。
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ミシマ・トウジ
冒険者ランク F
ジョブ フリー
レベル 8
HP 240/240
MP 0/0
筋力 33
体力 31
敏捷 30
知力 41
運 12
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「なんか、ふつーだね……」
レナも絶句するこの平凡っぷり。
比較対象がないので実際どうなのかわからないが、いわゆる普通、なんだろう。
だがレベル8、ということは、これはひっそりレベルが上がっていたようだ。
レベルアップして盛大にファンファーレが鳴る、とかそういう演出は当然ないらしい。
「レナのも見せてよ」
「わ、私の? 私のはだめ!」
「なんで」
「は、恥ずかしいから!」
……恥ずかしいだぁ?
ほぼ全裸を見られたときにもそんな勢いで言わなかったくせに。
だがここであんまりしつこく「見せろよ」「恥ずかしい!」なんてやってると、
変なプレイをしているのかと白い目で見られる怖れがある。
レナの容姿はただでさえ目を引きそうだからな。
とりあえずはさっさと説明を聞くことにするか。
俺は先ほど職員に言われたとおり、三番の窓口へと向かう。
カウンターの前に立つなり、向かい側から明るい声が飛んできた。
「こんにちは~。ミシマトウジさんですね。私、新規登録者の案内役兼、適職案内係のエミリと言います。よろしくお願いしますね~」
笑顔で小首を傾けるお姉さん。
くるくると内巻きになった長い髪が特徴的だ。
そして、巨乳。レナのさらに上を行く巨乳。
お約束の巨乳受付嬢はこっちにいたのか。
俺はおっぱいに向かって挨拶を返した。
「こちらこそよろしくお願いします」
「ではでは、さっそくご説明を始めさせてもらいましょうか」
しかしそんな軽いノリで、本当に大丈夫なのか?
けしからん乳してからに、きちんと仕事はできるんだろうな。
「じゃ、まずはカードを出してもらって……、あらぁ、キレイな彼女さん連れてるんですねぇ。うらやまし」
これは有能。すでに有能。
隙あらば説教かましてくるハロワのおっさんとは大違いだ。
「えっ、いやそのっ、私たち、そういうのじゃないんです」
となりでレナがあたふたと手を振ってごまかそうとする。
ここまでお約束。
とはいえ少し期待してしまった自分もいる。
「彼は、私の運命の人ですから」
「ぶっ!!」
思わず吹いてしまった。
てっきり否定するのかと思いきや何を言い出すか。
「ふぅ~ん、運命の人、ですか……」
エミリーはなにをノロケとるか、と言わんばかりに、ジトっとした視線を送ってくる。
「あ、いや、これは……」
俺はレナに訂正を求めて視線を送るが、意思の疎通がうまくいかない。
その「きゃっ、言っちゃった恥ずかしい」みたいなのやめてくれ。
言うだけ言って一人で満足するのはいいが、この空気どうすんだと。
そんな俺たちを見て、エミリーはふっ、と鼻で笑った後、(ちょっと怖い)
わざとらしくにこっと営業スマイルを作って話し始めた。
「そのカード、管理は自己責任でお願いしますね。本人が触らないと反応しないので、そうそう悪用はされないと思いますけど。なくした場合は、発行したギルドに届け出てください。再発行にはお金がかかります。はい、ここまで質問ありますかー?」
「今のところは、ないっすけど……」
「じゃあこれで説明終わりです」
「えっ、終わり? 使い方は?」
「だって口で言うより実際使ってみたほうが早いですし。スキル習得と、お金のチャージなんかもできますけど、詳しいことは冊子渡しますんで、後で見といてくださいね」
そう言って、エミリは『冒険者カード取り扱い』と書かれた冊子を押し付けてくる。
「ちょっと待った、実際に仕事とかってどうするんだよ」
「それは、あっちの掲示板とかで探して、受付でクエスト受けて、仕事して、報告して、報酬もらってって感じです」
まあ、なんとなくわかるっちゃわかるが……。
雑な説明。なんかやっぱ機嫌を損ねたか?
これで終了、とばかりにさっさと追い払われるのかと思いきや、
エミリはぐっと身を乗り出してきた。
「そんなことより、適職診断!」
「はい?」
「もちろんしていきますよね! 最初のジョブ選びは重要ですよ? ここでコケると、今後の冒険者生活に大きく差が出ます! だからするしかないですよね! しましょうしましょう!」
急にハイテンションになるエミリ。
やたら勧めてくるが、それが逆に怪しいような……。
どうすんだこれ? とレナの顔をうかがうと、ニコっと微笑み返してきた。
「やってみたらいいじゃないかな。私は、トウジの適職はナイトしかないと思うけど」
まだそのナイトうんぬんはあきらめていないらしい。
まあ診断だけなら、してもらってみても損はないか。
「いいっすけど、もしかして金取る系ですか?」
「なにをおっしゃいますかぁ、無料に決まってるでしょう! そのカードでステータスと、スキルを見せてさえもらえば、あなたにふさわしい職業をズバリご案内します!」
「へえ……。でもこういうのって、あんまり人に見せないほうがいいんじゃないのかね」
「大丈夫です! 業務上知りえた情報は、いかなる場合でも外部に漏らしたりはしません」
さすがにその辺はしっかりしてるのか。
ここであんまり疑ってかかってもしょうがないし、タダならやってもらったほうがいいだろう。
俺はステータスを表示してカードを渡した。
「はい、お預かりしまぁす。……ふぅん、しょうもないステータスですね」
「おいこら」
ナチュラルにディスるのやめろ。
一応こっちは客のはずだろ。
「さて、お楽しみのユニークスキルはっと。……あっ、こ、これは……っ!?」




