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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
一章

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20/87

冒険者登録


 今度こそギルドにやってきた。

 場所は町の大通りに面したほぼど真ん中、間違えようがないほどに大きな建物だった。

 建物の内外、いたるところに人があふれている。

 

「あぁ、そっかぁ、こっちだったかぁ~」


 などとレナが感心したような声を出す。

 その辺の人に道を聞いたら若干あきれ顔をされた。

 

 一度でも来たことがあれば、道なんて間違えようもなさそうだが……。


「さっそくトウジの冒険者登録しよっか」


 そんな俺の疑惑の視線もどこ吹く風と、レナは先立ってギルドの敷居をまたぐ。

 中も人でごった返していた。

 

 建物の半分は役所の窓口のようになっていて、もう半分は酒場になっているらしく、少し奇妙な感じだ。

 レナは数歩もしないうちに立ち止まり、きょろきょろと周りを見回しはじめた。


「えっと、受付はどこだっけ……」

「あそこじゃない?」


 俺は「冒険者登録受付」と大きく天井からぶら下がった看板を指さす。

 なんていうか、レナの案内を待つより自分で行ったほうが早いかもしれない。


 だがどうしてもリードしてみせたいのか、レナは我先にと受付に突貫した。


「あっ、あのぉ、新しく、冒険者登録を……」

「待ち番号をお取りになってお待ちください」


 いきなり横から割り込んで声をかけていくスタイル。

 順番待ちできないおじいちゃんみたいな……。


「ま、マチバンゴーを囮にして待つ……?」


 ……なにか獲物がひっかかるのを待つつもりか?

 これ以上やられると恥ずかしいので、クエスチョンマークを浮かべるレナの腕を無理やり引く。


 さっさとカウンター横のカゴに入った12、と書かれた札を持って下がった。

 するとレナが俺の腕にすがりつくようにして、おっぱいを押し付けてくる。

 

「ごっごめんね、私のときはセバスにやってもらったから……。となりで見てたんだけど……」

「ま、まあいいからいいから、一回落ち着こうぜ」


 大体、なにをそんな焦ってるんだろうかね。おどついているというか。

 別に引きこもりが一念発起してハロワに来たとかじゃないわけだし。

 

 あの悲壮なムードに飲まれるのに比べたら全然余裕だ。

 そしてその帰り、平日の昼間から近所の人と偶然顔を合わせたときとか。 

 俺がヒキニートだとバレているから余計気まずい。


 だけどここじゃ、そんなしがらみはいっさいない。

 なるほど、薄々感じていた妙な開放感はこれか。

 無職という引け目がなければ、割と気楽に振舞えるもんだな。



 しばらくして順番が来た。

 気を取り直して窓口へ進む。

 受付は美人の巨乳お姉さんだとばかり思っていたが、いかにも事務的な応対のメガネの若い男。


「お待たせいたしました。それではまず最初に、新規登録料とカード発行料合わせて、8000アルムのお支払いをお願いします」

「あっ……」


 レナのその声に、俺もあっ……と察した。

 金持ってない。


 俺も金は持っていないということは話しているし知っているのだから、レナもあらかじめ言ってくれればいいのに。

 まあ忘れてたんだろうが。


「おや、どうされましたか?」


 ここまで来てお金ありませんとか非常に言い出しづらい。


 これはついに通貨製造スキルに手を染めるしかねえかと考えていると、カウンターの上にすっと手が伸びてきて、コインが一枚置かれた。


 思わず振り向くと、イズナのお決まりのドヤ顔が待っていた。

 今日は忍者ルックではなく普通の町娘風だ。

 またちょろちょろついて来てやがったのか。

 

 お金を置いてそそくさといなくなるイズナの背中に、レナがつぶやく。

 

「ありがとうイズナ……」


 どうせまた足らないんだろ。

 もうこのくだりはいいわ。

 

 これ以上は恥の上塗りだ、さっさと出直そう。


 俺が逃げる準備をしていると、ギルド職員は黄金のコインを手に取るなり、目を大きく見開いた。

 

「こ、これは、エデンティラ王貨……? いやでもまさか……」

「あ、あのう、それじゃ足りませんか?」

「い、いえ、とんでもない……。ただ、今真贋を見極められる人間がいないので……これはお受け取りできかねます。どの道おつりを、この場で用意できませんし……」

「ええ? じゃあ、おつりいらないです」

「えっ、いやそれは……ううむ……だがホンモノっぽい……。本当に、いいんですか?」

「いいです」


 レナが即答すると、男の金貨を持つ手が軽く震えだした。


「で、ではこの場はとりあえず、わっ、私が代わりに8000アルム、納めておきましょう」

 

 職員はそそくさと金貨をしまう。

 そして代わりに、正方形の板状のものをカウンターの上に置いた。

 色は灰色で、見た目はまるで粘土のようだ。


「このマジカルクレイに手を乗せて、上から押してください」


 言われるがままに手を乗せて押し込む。

 すぐに手がめりこみ、手形ができた。


「ありがとうございます。少々お待ちください」


 そう言って職員はマジカルクレイとやらを引っ込めると、カウンターの奥でせわしなく動き始めた。


 しばらくして、手にカードを持って戻ってくる。

 カードと一緒に、羽根付きのペンを渡された。


「お待たせしました。では最後にこのカードにお名前のご記入をお願いします」

「えっ、名前? どこに?」

「そちらの面でしたらどこでも大丈夫です」


 これがこの国のマークなのか、表面には一角獣、ユニコーンをあしらった模様が描かれていた。

 このカードはエデンティラ王国仕様らしい。

 

 どこでもいいと言われたので、ユニコーンの股間にモザイクを入れるように名前を書いた。

 だが不思議なことに、数秒とたたずに文字はふっと消えた。


「ありがとうございます。以上で登録は終了です。お疲れ様でした」

「えっ、それだけ?」

「あっ、はい。ここでは登録と、カードの発行だけですので……。詳しいご案内は、そのままあちらの相談所へお願いします。ええと、三番窓口へどうぞ」


 そう言って別の窓口のほうを指差す。

 そっちには冒険者相談所、だとか適職案内、といった看板がぶら下がっている。

 

 俺はカードを受け取ると、妙に笑顔の職員に軽く一礼して受付を離れる。

 するとすかさずレナが俺の手元を覗き込みながら、声を弾ませる。

 

「ねえねえ、さっそくステータス見てみようよ。トウジがどんなスキル持ってるのか見たいな」

「ステータス? って能力値みたいなやつのこと?」

「そうそう、カードで見られるから」


 へえ、やっぱステータスとかもあるんだ。本当にゲームみたいだな。

 カードはちょうど俺が持っていたスマホの画面と同じぐらいの大きさだった。


 表面はユニコーンのロゴで、裏返すと真っ白。

 不良品か? と思ったが、指で触れると急に文字が表示された。

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