エターナルフォースブリザード
あくる朝。
俺はレナとともに、エデンの街中を歩いていた。
レンガ造りの家が立ち並ぶ、中世風のファンタジーの町並み。
まるでゲームの中にやってきたかのようだ。
すれ違うのは、剣を携え鎧に身を包んだ戦士や、ローブに身を包んだいかにも魔法を使いそうな装いの人々。
中には顔を毛むくじゃらにした獣っぽい人や、一見魔物と見間違えそうな風貌のものまでいる。
歩きながら、周囲の様子を眺めているだけでも楽しい。
だが正直言うと、俺はまだ惰眠をむさぼっていたかった。
とはいえ目の前で薄着の美少女に「朝だよ、起きて~?」なんて言われたら起きるしかない。
どころか余計なところも起きてしまう。
レナは俺がまだ冒険者登録をしていないと知るや、「私がギルドに案内してあげる!」ということではりきっている。
お別れする気配は全くない。
まあこちらとしても、ある程度この世界のことがわかってくるまでは、色々と手をつくしてくれるのはありがたいのだが……。
宿を出て、意気揚々と先を行くレナに従い、小一時間はたっただろうか。
俺たちは、いまだにギルドに到着していなかった。
ギルドらしき建物が見えてくるどころか、どんどん寂れた方向に向かっている。
俺はついに耐えかねて、レナに声をかけた。
「あの~……」
「ん? なぁに?」
レナはにこっと微笑を浮かべて、小首を傾げてくる。
予期せぬ不意打ちに、こっちで合ってんの? という言葉を飲み込んでしまう。
……ヤバイ、クソ可愛い。
街中の女の子は総じてレベル高いというのは前も思ったが、やはりレナがぶっちぎりで可愛い。
好みの差はあれど、俺にはそう見える。
それに、少なからずすれ違う男たちの視線を集めている気がする。
レナの服装は、今朝またイズナが持ってきた女の子っぽい白のワンピース姿。
今日は魔物と戦うわけじゃないから、と鎧も着込まず髪も縛らずに下ろしていて、昨日とは別人な雰囲気がある。
う~ん見れば見るほど可愛い。
思わず見とれてしまう。
「どしたの?」
「い、いやなんでもないよ……」
「ふふ、変なの~」
くすくすと笑うレナ。
こちらもつられてにやけそうになってしまう。
周りが目を引くような美少女と、笑いながら連れ立って歩く。
これまで生きてきて、一番幸せかもしれない。
俺の二十年とちょっとは一体なんだったんだ。
正直もうギルドとかどうでもよくなってきた。
レナは「お金がないなら、ギルドに行けばいろんな仕事があるよ」
などと言っているが、仕事? 働きたくないでござる状態。
この世界では、大人になればたいていの人は冒険者登録をするのだという。
だからといってみんながみんな冒険をするわけではなく、なにかしら仕事をするのに冒険者のライセンスが必要なのだとか。
「私も二日前に登録したばっかりだから。一緒に頑張ろうね!」
こういう調子だから、別に登録していなかったからといって、このクズニートが、などと罵倒されるわけではないらしい。
ていうか二日前かよ、とは思ったが。
さらにレナの案内にしたがって歩く。
ついに裏路地のような、ずいぶん寂れたところに来てしまった。
この世界のギルドって、にぎやかーな感じじゃなくて、薄暗いダークな雰囲気なのかね。
俺はさっきからすっかり口数が減っているレナに向かって、なんとなしに口を開いた。
「へえ~、ギルドって、結構奥まったところにあるんだなぁ」
「えっと、トウジ、あのね……」
「ん?」
レナが立ち止まって、浮かない顔でこちらを振り向いた。
「迷っちゃった……」
かなり前からそんな気はしていたけどな!
まあ俺も、散歩楽しいなあ、レナ可愛いなあ、なんてやってたのも悪い。
「あっ、あそこの人たちに、き、聞いてみるね! 私聞いてくるからね!」
ヘンに念を押された。
なんだそのちゃんと見ててね的なアピールは。
俺が止める間もなく、レナは薄暗い路地にたむろしている連中に近寄っていった。
「あっ、あのぉっ、ギ、ギルドの道を、教えて欲しくて……」
「ん~? あんだぁ? ギルド?」
「ギルドなんかよりいい所行こうぜ、うははっ」
……なんでよりによってそんな見るからにヤバそうな奴らに聞く。
派手な頭と服装をした男たちが三人、にたにたと笑みを浮かべながらレナににじり寄っていく。
さすがにこれはまずい、と助けに入る。
「あっと失礼、この子、連れなんで」
「あぁ? ツレだぁ? いい女連れてんじゃねえか」
「はは……、いい女連れてるでしょ?」
女の子、とりわけ美少女といるということは、こういうリスクが付きまとうわけだなぁ。
一応俺も、DQN一歩前の奴らと無理して付き合っていた時期もあり、こういう輩の応対には慣れているほうだと思う。
しかしやっぱこういう手合いはこっちにもいるわけね……。
面倒にならないうちに、ぐいっとレナの腕を引いて立ち去ろうとする。
「安心しろよ、その女はオレたちが無事にギルドまで送り届けてやっからよ。ひっこんどけ」
「いやぁそんな、見ず知らずの人の手を煩わせるわけには……」
「ひっこんどけっつってんだろ!?」
うるっせえな。
けど声量といいタイミングといい、向こうも割と手慣れてる感じだな。
めんどくさいなぁ、こんなところで揉めたくないんだが。
まあでも、今後もこういうことがあると考えると、ここらで一つ、それ用のスキルを落としておいたほうがいいかもな。
検索を邪魔されるとまずいので俺は一回ひっこんだ。
「うわだっさ、マジでひっこんだよビビリかよ、ぎゃはは」などと罵声が飛んでくるが気にしない。
すぐにスキルストアを開いて検索をかける。
どうせならかっこいいのがいいな。
『最強 必殺技 かっこいい』
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スキル名 エターナルフォースブリザード
作成者 永久零度の支配者
概要
相手は死ぬ。
1000GP
アクティブスキル
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ククク……。
まさか、このようなスキルがあるとはな。
中学時代の黒歴史がうずくぜ……。
それが1000GP程度で手に入るとは。
まさにスキルストアさまさまだぜ。
俺は即座にスキルを落として発動する。
するとウィンドウに文字が表示された。




