異世界転生の手引き その2
前回の異世界言語うんぬんの続きから、GPを払い次のページへ進んだ。
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次はシステム周りを強化するのだ。
マジック・ウィンドウで検索だ。
これはもはや、転生者には必須スキルと言えるのである。
ダウンロード数もやばいことになっているのだ。
わたしが開発していれば、いまごろウハウハだったのに。
次へ
要50GP
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すでに自力で見つけてるんだよなぁ。
これぐらい転生前に教えておけよとも思う。
やっぱ続き読むのやめるか。
だが情報自体は有益ではあるので、結局次に進む。
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次は神スキルストアの説明なのだ。
親切なわたしが、説明書から抜き出してカンタンにまとめておいた。
アクティブスキル
発動することで効果を発揮する。
初期の枠は三つ。
セットしていないと使えない。
パッシブスキル
常に効果が現れるスキル。
スキル管理でオン・オフができる。
シークレットスキル
その他の隠しスキル。
発動したら基本的に元に戻せない。
詳しく知りたければ、「神スキルストア概論」のスキルを落とすのだ。
次へ
要100GP
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うーん、これも大体わかってるような。
しかも地味に次への必要GPを上げてやがる。
まあしょうがない、ここまで来たら……。
さらに次のページに進む。
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うーん、後はなんだろうなー。
地図とか、鑑定とか?
でもそのへんは神スキルじゃなくても覚えられるしなぁ。
次へ
次は本当にすごい情報
要200GP
―幼女とおしゃべりできる神スキルが登場だよ☆ ここをたっちしてね!―
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早くもネタ切れかよ。
このページいらねえだろ。
次で最後だ。
次もしょうもない内容だったら、もう終了。
そう思いながらタッチすると、いきなり神スキルの詳細画面に飛んだ。
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スキル名 幼女とお話しよっ?
作成者 幼女斡旋所
概要
ひとりでさびしいの。
おにいちゃんとお話ししたいなぁ。
ダウンロード無料
アクティブスキル
スキル内課金有り
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なんだこれ、変なところを触ってしまったか?
幼女斡旋所って、どんな作成者だよ。犯罪の匂いしかしないわ。
ふむ、ダウンロード無料か。
一人で寂しい幼女が、お兄ちゃんとお話しをしたいというのなら、
まあ応えてやらないでもない。
俺はスキルを落として、発動する。
すると通話アプリのような画面に切り替わって、コール音が鳴る。
しばらく待つと、コール音が途切れて、声が聞こえてきた。
「はぁい、ムツノでぇすっ」
や っ ぱ り お ま え か。
だが一瞬耳を疑った。
ローテンションのボソボソしゃべりだったはずのムツノが、まるでどっかの幼女みたいに元気がいい。
「こんにちわ、おにいちゃん! おでんわ、ありがとうっ」
「こんにちは。ムツノちゃん、今どんなパンツはいてるのかなぁ?」
「えーっ、やだぁおにいちゃんたらもうっ。えっとぉ、ムツノはぁ、ちょっとオトナなかんじのぉ……」
「くまさんパンツだろ?」
「はっ? く、くま……?」
ムツノは戸惑っているようだったが、すぐに気づいたようで、
「ちっ、なんだおまえか……」
いきなり声が一オクターブ下がった。
これは一発で紳士たちの夢が壊れるな。
「またあこぎな事やってるな」
「しつれいな。めんみつな、マーケティングの結果だ。みんなかわいい幼女とお話ししたいだろう?」
「自分でかわいい幼女って言うか? てか、あんた本当にヒマだよな」
「ば、バカを言え、ヒマではない。今も話の片手間に、レアドロップ狙いのマラソン中だ」
なかなか器用なことやってるな。
実は優秀なのかもしれない。
「い、今は休憩時間なのだ。それにわたしの管轄は、アルムスタッドだけじゃないのだ。おまえばかりにかまけているヨユーはない」
「そのわりに、こんなテレクラまがいの事やってるヒマはあるんですねぇ」
「お、おまえこそ、こんなスキルを落としている余裕があるようだな」
「いや、なんか勝手にダウンロードページに飛ばされたんだが?」
自分でこんなスキルって言っちゃってるし。
ホントどうしようもないなこの幼女は。
「ふっ、まあなんでもいい。こうしている間にも、おまえのGPが毎秒100ずつ、わたしのふところに入っている」
「なに?」
ふと見ると、画面右上に表示されたGPの数値が、ドンドン減っていた。
ムツノの声が再び高くなる。
「おにいちゃん、わたし、もっとおはなしした……ブツっ」
速攻で通話終了ボタンを押した。
今ので5000近くもってかれた……。
ダウンロード無料とかやりつつ、この手口。
なんつー汚さ。
なんか新しく、目的ができた気がする。
絶対にあの幼女をぎゃふんと言わせてやるというね。
俺は異世界転生の手引きを終了した。
もうこんなもん誰が見るか。
結局得るものがほとんどなかった。
いちおう地図とか、鑑定スキルは落としておいたほうがいいのかも知れないが。
鑑定か……。
検索をかけると、いくつか出てきた。
丸安印は今回はスルーだ。
肝心なところで広告ぶちこまれたらたまったもんじゃない。
もう本当に、普通のでいいんだ普通ので。
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スキル名 初級武具鑑定
作成者 初級ジョブマスター神
概要
鑑定士で習得できる初級武具鑑定を流用。
鑑定士でレベル上げするのがタルい人向け。
2000GP
アクティブスキル
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まともそうなのを見つけた。
とりあえずこれにしよう。
俺はスキルをラーニングすると、レナが脱いだきり床に放りながっている鎧に目をつけた。
実はあれが気になっていた。
あんなんで本当に身を守れるのかと。
とりあえずためしに、あの鎧を鑑定してみよう。