脱がしたった
レナが鎧を脱ぐのを手伝う。
鎧と言ってもそれらしいのは肩アーマーに手甲、具足ぐらい。
肝心のそこ守らなきゃいかんだろうという部分、
胸元と股間は薄い布という謎仕様。
もう本当に、ナニする用のコスプレなんじゃないかと疑ってしまう。
しかしこんな細い体で、よく色々身につけたままいられるな。
絶対選択ミスだろ。
大体なんで戦士っぽいのを選んだのかわからん。
出会ったときから武器らしきものは持っていなかったし。
「さいしょ剣を持ってたんだけど、森の中に落っことしてきちゃった」
などとのたまっているが……大丈夫か?
「ねえこれ取って~。取れなくなっちゃった」
レナが無造作に腕をつきだし、手をぶらぶらさせる。
思わぬエロイベントだというのに、全く雰囲気がない。
まるで子供がふざけてたら取れなくなっちゃったみたいな……。
俺はしかたなく、「自分じゃ恥ずかしくて脱げないの。ねえ……脱がせて?」
とレナのセリフを勝手にエロく脳内変換をして、手甲を外す。
あれっ、軽い……。
手甲に限らず、すべての防具が軽かった。
手触りや見た目は金属っぽくて頑丈そうだが、手にしてみると重さがほとんどない。
実際、軽く指で叩いてみても、コンコンと堅い反応が返ってきた。
「なんだこれ、なんか気持ち悪いな。魔法金属とか、そういう感じのやつ?」
「んー、さあ?」
レナは一緒になって首をかしげる。
なんで知らないんだよ……。
やがて俺はレナの鎧を一通り脱がし終わった。脱がしたった。
アーマー部分を全て取っ払うと、レナは薄布の白いワンピース姿になっていた。
胸元、膝元、すべてにおいてきわどい。
女の子が徐々に脱いでいくみたいな、ちょっとエッチなゲームだったら、これでクリアのレベルだ。
俺がある種の達成感を感じていると、レナがにこりと笑いかけてくる。
「ありがと」
こちらこそありがとうございます。
正直たまらんです。
しかしなんていうか、どこか物足りないような。
それは何かって言うと、全然恥じらいがねえ。
ほとんど裸に近い格好をしているというのに、その堂々とした態度はなんだ。
こうなると逆にこっちが恥ずかしくなってくる。
見たことがないほど、白い肌だ。
手足はすらりと細く長く、だが胸やお尻、出るところはしっかり出ている。
胸の谷間、ふともも、腰のくびれ……。
どうやっても気になってしまい落ち着かない。
俺は目線をあさってほうに泳がせつつ、それた話を元に戻すことにした。
「そ、そういえば、さっきナイトがうんぬん、って言ってたけど、あれはなんなの?」
「あっ、ご、ごめんなさい、さっきは勝手なこと言っちゃって……。やっぱりその、嫌、だよね……」
「いきなり言われてもね……。よくわかってないし」
何よりなんかめんどくさそうだし。
まあ夜のナイト(意味深)っていうんなら二つ返事でOKなんだが。
「そ、そうだよね、ごめんね……。ち、違うの、このままだとお別れになっちゃうなって思って……。だからナイトっていうのは、その、建前で……。あ、いやホントはなって欲しいんだけど……う、ううんごめん、やっぱり忘れて、さっきの話」
レナはさっきとはうってかわって、やたら弱気だ。
まあセバスと言い争っていて、少しムキになっている感じはあったけど。
レナはうつむいて何やら思案している風だったが、やがて顔を上げた。
「私、わがままじゃないから。どっちかっていうと、その、つくすタイプだし、男の人を立てるし……」
なんだその唐突な女の子アピールは。
勝手に人の腕引っ張ったり、スマホ見せて見せてとか、これ取って~とかやってたくせに、どの口が言うか。
まあ唯一、男を立てるタイプというのは同意しよう。いろんな意味で。
一瞬これはツッコミ待ちなのか? とも思ったが、話が進まなくなるので流した。
「……そ、そう。ナイトはまあいいや。で、レナが冒険者、っていうのはわかったけど、セバスって何者?」
「え? え~っと、セバスは、おじいちゃん……」
「いや、セバスがおじいちゃんなのは見ればわかるから」
「あっ、う……そ、そうだよねぇ、あはは~……」
笑ってごまかそうとしているぞ……。
やっぱり色々おかしいんだよなぁ、大体冒険者にナイトがいるのか?
自分がナイトみたいな格好してるくせに。
素性を明かさないところを見ると、なんとなく話したくないんだろうな、という雰囲気は伝わってくる。
なぜかは知らないけど、これまでの様子から察するに……。
おそらく、田舎の貧乏貴族のおてんば娘、みたいな。
それが勢い余って冒険者になっちゃいました、とかそんな感じだろう。
我ながらしっくりくる。
まあこっちも、転生うんぬんは話していないわけだし、お互い様か。
俺のほうは話したところで、って感じだけど。
「あと、あのちょくちょく出てくるちびっ子は」
「イズナのこと? かわいいでしょ?」
天然なのか、わざとなのか。
またすぐこうやって話がそれていく。
「いや違くてさ……」
「あ、ここね、お風呂あるんだって。トウジも入るでしょ? 一緒に行こっか」
うん、そらしていこう。
どんどんそらしていこう。




