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神スキルストアで楽々異世界ニート生活 ?  作者: 荒三水
一章

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11/87

おっぱいジジイ

「そ、それはなりませんぞレナハート様!」

「なんで? 何もモンダイないよね? あとレナハート様はやめてって言ったでしょ!」

「ですがそんな、出会ってばかりの人物をプリンセスナイトに任命など、前例がない……」

「関係ないよ、トウジを初めて見たときから、ビビっときたんだから」


 なんやわからんが、いきなり二人の言い争いが始まった。

 両者ゆずらず、にらみ合い。

 

 傍から見ると、「今お尻触ったでしょ!?」「触ってない!」みたいなやり取りに見えなくもない。 

 要するに、他人のフリをしてどっかに行きたい。


「なにさ、セバスの加齢臭がキツイって、みんな言ってるんだからね!」

「ぐ、ぐぬぬぅ……」

 

 最後はよくわからない着地点でレナが論破? した。

 そしてこちらを振り向くなり、ころっと笑顔になる。

 

「そういうわけで、よろしくねトウジ」

「いやちょっと待った」


 いい笑顔をしてくれてるけどちょっと待て。


「そんな勝手に話を進められてもね……なにがなんだかわからないし」

「あっ、そ、そうだよね……。ごめんなさい私ったら一人で……」


 危ない危ない。

 なんか勝手にわけのわからん物に任命されるところだった。


 とにかく、いきなり面倒ごとに巻き込まれるのはごめんだ。

 俺はここで、ゆるいニート生活を目指したいんだ。

 

「でもね、本当に……これが運命の出会いかもって、思ったから」


 運命て……。

 どういうわけか、レナの俺への好感度がダダ上がりしている。

 だけどそんな過大評価されると、どうも決まりが悪い。


 残念ながら俺はそんなごたいそうな人間じゃない。

 なんていうか、色々と行き違いがあって、誤解されているようだし。

 やっぱりここは、正直に本当のことを言うべきだろう。


「……ごめん、放浪中の召喚士とか言うの、あれウソなんだ」

「えっ? じゃあ……」

「本当は俺……ただのヒキニートもどきでーす。放浪どころか、年がら年中こもってまーす。召喚士というか、ゆくゆくは魔法使いかな」


 やってしまった。

 でもなんだろうこの開放感は。

 やっと本来の自分に戻れた気がする。


 俺がせっかくかましてやったというのに、レナはきょとんとした顔をしている。


「えっと、ひきにーとって、なに?」

「え? あ、その、無職? みたいな……」

「あ、なぁんだ。ふふっ、トウジってお茶目だね」


 えぇ……。

 そんな軽い感じ?

 激怒されて、ビンタの一つも覚悟していたというのに。

 これだとまるで俺が滑ったみたいな感じになってるんだが?


「でもよかった。召喚士じゃないんだったら、ナイトになれるよね」


 さらに笑顔ですかさずナイト押し。

 違う、やはり違う。

 やっぱ女の子には、なんかこう、蔑んだ目で見られないと、どうも落ち着かない。


「いや、だからナイトはちょっと……」

「……あ、そっか。トウジが目指してるのって、世界平和、だっけ」

「え? 世界平和なんかより、レナのおっぱいの平和を守りたいですけど何か?」


 はぁ~終わった終わった。

 別にこれは言わなくてもよかったかなって思うけど、毒を食らわば皿までというし。

 

 一回死んで異世界に来てまで、なにも取り繕う必要ねえなと。

 そう思った。


 前世では家族とか親戚とかにも、嘘を吐きまくっていたからな。

 いろんな重圧がハンパなかった。

 なので今度こそは、真のストレスフリーなニートを目指す。


 今度こそ張り手が、いやグーパンが飛んでくるかと思いきや、

 レナは恥ずかしそうにしながら、頬を赤らめだした。


「そんな、私のことを守りたいだなんて……」


 おいちょっと待て。なんか大切な単語抜けてないか?

 おっぱいにピー音でも入ったか?

 

 レナと話していてもラチがあかないので、

 今の会話を隣で聞いていたであろうセバスに助けを求める。

 

「ち、ちょっと、なんとか言ってやってくださいよセバスさん」


 ヒキニートとかおっぱいとかね、こんなクズはやめとけと、すっぱり言ってやってほしい。

 

「ふぅむ……」


 セバスは俺を見て、難しい顔で唸ると、


「これは案外に、見込みがありますな」

「ってなんでそうなる!? 何を言い出すんだよ!」

「『あなたのおっぱいが好きです』。ナイトの誓いの言葉に、かつて、そんなことを言った男がおりました」

「なんだよその誓い! それに俺はおっぱいが好きですとは言ってないけどな! ていうか誰だよその変態は」

「それは私ですが?」

「お前かよ!」

「召喚士に世界平和……。内心、正直うさんくせーな、と思っていたのですが……見直しましたぞトウジ殿」

「いや俺握手しないよ? そんな手差し出されても」

「まあまあまあ」


 無理やり手を握られて握手させられた。

 まあまあまあじゃねーよ。


「……わかりました。お父上には、私から直接話しておきましょう。ただ、任命の儀式を行うのは、お互いもう少し、親交を深めてからでも遅くはないかと存じ上げます」

「うん、わかった。ありがとうセバス」


 二人ともなんかわかっちゃったよ。

 俺だけなんにもわかってねえよ。


 それから二人は、周りを気にするようにひそひそと話をしていたが、(俺にも聞こえていない)

 どうやらセバスはここで別れるようだ。

 

「それではトウジ殿。私はここで失礼します。レナ殿をくれぐれも頼みましたぞ」

「は、はぁ……」

「いずれ、おっぱいの良さについて、語り合いましょうぞ」

「さっさと行ってくれ」


 俺はおっぱいジジイを追い払った。

 

 入れ替わりに残されたレナが、俺の目の前に顔を寄せてくる。 

 距離が非常に近い。


「ね、これからトウジは、どうするの?」

 

 どうするの、って言われてもね。それは俺が聞きたい。

 とりあえず今は、ぶっちゃけ歩きつかれたので休みたいのだが……。

 

「うーん……。とりあえず宿を取ろうと思うんだけど」

「そっか、泊まるとこか……。わかった、それじゃ私が案内するね!」


 言い終わらないうちに、ぐいっとレナに手を引かれた。

 やっぱり一緒に行動することになるのか……。


 俺は嬉しさ半分不安半分、レナとともに街の中へと足を進めた。

 

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