おしゃべり宇宙人 6 -突起。抗えぬはその魔力ー
「地球人も相当に馬鹿な連中だな。大統領をたった一つのボタンしかない部屋に閉じ込めたりなんかしたら、欲求を抑えきるなんてのは無理だなんてことは最初からわかっていただろうに」
「それが破滅を呼びこむとわかっていたとしてもかい?」
「要は結果なんてどうなったって構わないのさ。向き合うのは押す自分、あるいは押さない自分という、その一点だけなのさ」
「逆にいっそボタンだらけの部屋にしてみたらどうなるだろうね。君ならどうする?」
「その状況になってみないことにはわからないが…。まあ押しまくるだろうね。もう力の限り、時間の許す限り、気の済む限り、何かが起こるまで。突起の魔力に抗うことなんて出来やしないさ」
「結局悪いのは全て突起のせいだな」
「そう誰も悪くない。悪いのはこの突起さ」
ポチ――。
彼らはケタケタ笑った。と言っても真空間の中では、その笑い声は伝わらなかったが。