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Lead lux  作者: 白黒猫
第1章【繋がる世界より】
1/3

導く光____________『元凶』

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____________絶対に……絶対に次は止めてみせる。


足掻いて、もがいて、這い上がって。

もう、散々味わっただろう?

何度も何度も繰り返しても結末なんて変わらないんだ。

だから、次こそは止めてみせる。

あのくだらない世界に戻したりはしない。


『もう一度、この世界に』










***










「メアッ!2匹そっち流れた!処理頼む!」

「…………了解した」


オンラインゲーム《sword world》。

日本パッケージでは《剣舞世界けんぶせかい》と記されている、現在の日本人気オンラインゲームの1つ。ゲームは単純に剣のみでモンスターを狩っていく、基本的オンラインゲーム内容だが、このゲームは他のゲームと違う点が1つあった。


「ギャァァッ!!!!血が!体力ゲージが!」

「くっ……1度、引くぞ!全員転移アイテムで脱出しろ!」


普通、ゲームであれば回復する役割……僧侶やヒーラーが存在するだろう。それが居なくても、薬草、ポーションなど回復アイテムが存在するのが基本的だ。


しかし____________。


「…………つまらない世界」


このゲームに『回復は存在しない』。









雨降って地固まる。いや、血降って地固まるだろうか。

パーティーが崩壊した状況で、メアと呼ばれていた少女は溜め息をつく。緋色の靡く髪を支えながら、朝日が射し込む洞窟を血塗れの姿で出てきていた。


クエストクリア。

血のついた黒と紫の剣を払い、腰に装備し直した後、自分のステータス画面のある箇所を細目で見つめ始める。


『メア』

HP166/166


つまらない世界だ。

何故、そんなつまらない世界にいるのだろう。

人気だからなのだろうか?回復がないのが珍しいからだろうか?


「違う」


少女は思う。

理由など____________【運命】で十分だ。









***










東都市【インビジブル】。

この世界は東西南北____________4つの巨大都市による設定で構築されている。春夏秋冬も同じく、東西南北と春夏秋冬が統一された世界という訳だ。ここ東都市インビジブルの季節は『春』。1年中、春が続くという不思議な設定だが、ゲームの世界だ。設定など改編も含め、自由にできる。


「……ただいま」


クエストから帰還したメアが自身が持つ自宅、拠点とも言える宿レベルの扉を開く。すると、メアを待っていたかのよう……モフモフの感触が身体全体を包み込む。


「アッシュ……苦しい」


メアを抱き締めたのは『アッシュ』と呼ばれた少女。

モフモフのオレンジ色の髪に聳える2つの猫耳。そして自由自在にスキンシップを楽しんでいる猫の尻尾。そう、族にいう《獣人》だ。


「ニャハハ、ツンデレさんだなぁ、メアちゃんは!朝のおはようを忘れた罰だよ~」

「……初耳……あぅ……」

「おいおい、メアが変な声だしてんじゃねぇか?その辺で止めとけよ、アッシュ」


抱き締めていたアッシュが真後ろからの指摘を受けて、ムスッとした表情で仕方なくメアを放す。ヘナヘナになったメアを笑いながら宿から出てきたのは、右肩に黒猫を乗せ、首から剣のペンダントをぶら下げた黒短髪の少年であった。


「やぁ、メア。おかえり」

「……ただいま、クロ」

「だから、クロは猫の名前だって……俺はクロトだ。それともなにか?俺のおかえりを無視してクロに挨拶したのか?」

「……そうだけど?」

「そこはせめて嘘っぽく言ってくれ……心のダメージが大きすぎる。ま、取り合えず中に入れよ。アッシュ、メアに料理でも振る舞ってやってくれ」

「ニャハハ、お金はクロト持ちだかんねー」

「……仲間なんだからそろそろ金取るのやめようぜ?」




自宅厨房にて。

香ばしいスパイスの香りがアッシュが振るうフライパンより漂う。まるでバーのカウンターのような席を前にフライパンを振るう様はさながら店長と言えよう。何を隠そう、この宿レベルの建築物は実際、宿ではなく飲食店『黒猫のカマド』なのだ。


「そういや、開店しなくていいのか?既に朝の11時だが」

「ニャハハ、開店なんて気分次第でいいのだよ~。ほい、完成!メアちゃんの大好物オムライスだー」


アッシュから出されたオムライスに目をキラキラさせて見つめるメア。トロットロのスクランブルエッグ上で作られた卵に、ねっとりしていない丁度いい具合のケチャップライス。メアがひとくち口へ運ぶと、美味しさを精一杯上目遣いで表現する。


「ニャハハ、スパイシーなケチャップライスが好きなのはメアちゃんだけだよ?ま、料理人にとっては喜んでくれるだけで嬉しいからどうでもいいけどね」

「……ごちそうさま」

「ハニャ?!速い、速いよ!?さっきひと口運んだばっかじゃなかったの?!」

「美味しさのあまり……フィリアは?」

「ギルドへ情報収集に行ってる。俺達・・以外がNPCと言えど、毎日同じことを言ってるんじゃないらしくてな」


NPC____________ノンプレイヤーキャラ。

生まれていた数々のゲームに必ずと言っていいほどの重要性を持ち合わせたシステムで、システムにより指示された目的を繰り返す……またはその目的を達成するための起点となる存在としてゲームに組み込まれている。


しかし、この世界は違う。

いや、正しく言い直せば『この世界は違わされた』。


あの日、全ての歯車が噛み合うように……。








***








「4月1日の今夜0時、謎のウイルスが原因と思われるシステム障害により、全てのオンラインゲームが停止するという事件が起きました。あらゆる機種からのオンラインネットワーク通信が遮断され、現在は停滞した状況下にあります」


そんなニュースが暗闇の空間に響き渡る。

様々なゲームパッケージが積まれたゲームのお城に潜む1人の少女。流れるニュースを必死に目でおっていたのは、メアであった。


「…………全ての……繋がりが消えた……」


不登校。ゲーム廃人。引きこもり。

年齢的には高校1年生だが、メアにとってその空間は退屈な世界にしか見えなかったのが不登校となった大まかな理由だ。

今日も、オンラインゲームで3徹夜目を迎えていたのだが、メアも状況下同様となり、目の前の現状に目を丸くしていた。


「…………やだ…もう1人は……や……」


狂ったかのような目。

その指はひたすら『オンラインへ』というボタンを連打している。反応のないゲームを落とし、次へ次へとゲームを変えていくのだが結果は同じ。


すると、メアがプレイし弾かれたオンラインゲーム____________《剣舞世界》が自動的に起動し、ピコンッ!とメールの音が鳴る。このゲームにとって、メールとはオンラインを通じないと出来ない始業だ。メアは颯爽とそのゲームを取り、即座にメールを確認した。


「…………なに……これ…………?」






『貴方は救われる英雄に選ばれた。世界にへと戻りたくば、現実を破棄し、事を伝えず、この世界へと来られんことを』






「…………へ?」


世界が移り変わった。

そんな言葉でしか纏められぬ現実。巨大な湖を背景に目の前には、ゲームでいうオーガ系のモンスターが雄叫びを上げている。


感覚が鋭い……というより、ここが現実のようにしっくり来る。

匂いも、音も、目の前の恐怖心でさえ、心臓の音が木霊する感覚が全ての身体を廻って伝わってくる。


「GUOOOOOOOOOOOO____________!!!!!」


オーガの武器である棍棒がメアへと迫る。


腰には2本の剣がある。

黒く煌めく剣と、毒で蝕む紫電の剣。コスチュームも動きやすい白のレザーコートに呼吸を乱さない為のネックウォーマー。緋色の髪を靡かせ、まるでコマンドを入力するように剣を抜く刹那________________________自分でも驚きを覚える技量に、目を疑う。オーガは跡形もなく光の渦となって消えてしまった。


「…………」


かつてない感覚。

コマンドを入力し、その指示通り動いてくれるキャラクターを見る自分とは違う。自分が考え、動き、斬り裂く。そんな衝動にメアは少し笑みをこぼした。そして……。


「すごいな、君」


また人と触れ合えた。




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