4話
遅れてすいません!
「うーん」
不味いことになった。
簡潔に言うと、迷ったのだ。
始まりの広場で地図を見ると分かるんだけどこの街、初期の街なのに無駄に複雑で、店の場所が分かりづらい。
もう探し初めて一時間が経っている。
プレイヤーに聞いちゃおうかなぁ……ちょっと恥ずかしいけど。
「ねぇ君君」
「えっ、あ、はい」
びっくりした。後ろから話しかけないでほしい。
内心愚痴を溢しながら、少し不機嫌気味だろう顔を後ろに向けると、再びびっくりした。
青い髪を揺らす女性が、首をかしげてこちらをみていたのだ。
しかし、驚いたのはそこではなく。
(綺麗な人…)
そう、ものすごい美人だった。CAなんかが似合いそうな印象。
「さっきから行ったり来たりしてるけど、どうしたの?」
「あ、大丈夫です。気にしないでください」
「いいからいいから。お姉さんに言ってみ?」
……見た目に反して粘り強い人だ。もういいか。聞くは一瞬の恥、聞かぬは一生の恥だ。
「……では、安い道具屋を教えてください。迷ったので」
「あー、やっぱり? 初心者はほぼ絶対に迷うのよねぇ」
「そうなんですか」
「うん。この街ね、まず広さが桁違いで、その上複雑でしょ? だから1日街から出られなかった初心者もいっぱい居るわよ。私も最初は迷ったなぁ」
女性は大きな声で笑いながら、私についてくるように促して歩き出した。
ハルナさん(というらしい)は、移動しながら色々とこの街について話してくれた。
どうやら、プレイヤーにも店を持てるらしく、NPCよりも安く、いい品質のものが手に入ることがあるらしい。
この始まりの街は地価が安く、特に多いんだとか。
「ほら、着いたよ」
「ここ……ですか」
ハルナさんが指差すのは、商店街の一角にある、こじんまりとした、少し古くさ…味のある店だった。
というか大丈夫かなぁ。お金、初期金額の、千リルしかないんだけど。
「あ、もしかして、お金心配してる?」
「ええ、まぁ……結構」
「だったらだいじょーぶ! ここ、私の店だから!」
「え」
いや、普通にびっくりした。
「私の店、私が自分で狩りに行ってるから、安く売れるんだ~」
「……そうなんですね」
「ん~、反応が薄いなぁ。もっと、すげぇ! とか無いの?」
いや、「結構大変だったんだよ」なんて言われても、家族と先生としか話したことのない私に、何をしろと?
それに、心の中では結構驚いてます。
「あの……早く買いたいんですが」
「あ、ごめんごめん。何を買いたいの?」
とは言われても、ゲーム自体初心者の私は分からない。
「よくわからないので、必要だと思うものを」
「そっか、そうだよね。んー……ちょっと待ってて」
少し考える素振りをして、ハルナさんは店の中へ入っていった。
「……っはぁ~」
やっと解放されたぁ。またすぐに来るんだけど。
……人とまともに話したの、いつぶりだろう。少なくとも三ヶ月くらいかな。
親しみやすい女性で助かったけど、男の人だったら声をかけられた時点で張り倒してたかもしれない。もしくは脇目も振らずに逃げ出していただろう。
とりあえず、ここまでしてくれるのは予想外だった。ちゃんとお礼しないとな。
「アイナちゃん、来たよー」
「あ、どうも」
「初期金額で揃えられるもの、出来るだけ持ってきたよ! 今売買申請送るね」
「はい……って、多い。凄い安い」
合計金額950リルなのに、軽く20項目はあるし、中には0リルの物が……あ。
「? どうかした?」
「ああ、一瞬でもありがたいと思った私が馬鹿だったんでしょうね」
何で、何で?
この人の思考回路が分からない。
「何で……猫耳?」
「布教だけど?」
「いや、そんなさらっと言われても。しかも性能ものすごいんですが」
猫耳のカチューシャ
防御力58
状態異常軽減 全属性耐性強化
私がつけている革鎧の防御力が16だと言うことを考えると、どれだけ高いかわかるだろう。
「いや、攻略組にとっては全然だよ? だから気にしないで身につけ……」
「ません」
「でも似合い……」
「ません」
なんなのこの人。
何か質問等ありましたら、感想欄にて宜しくお願いします。