4/31

3話

12月28日　修正。

風を感じた。

爽やかで、僅かに若葉の香りを含んだ風が、私の頬を優しく撫でる。

湧き上がった欲求のまま思いっきり深呼吸してみると、混じりっけのない、澄んだ空気が肺に染み渡った。

システムによるものなのか、閉じられていた目を開く。

「……あ」

思わず、声が漏れた。

現実では絶対に有り得ない、どこまでも続く丸みを帯びた地平線。

晴天の空を舞う悠々とドラゴン。

街の上空には魔法陣が浮かび、大気にはエメラルドの粒子が舞っている。

あまりにも広大。そして美しい世界。

そこには、現実に毒された私にとってのまさしく『無限』があった。

「広いし……綺麗……」

その光景がまるで夢のようで、これが現実なのか疑わしくなった私は、無意識に自分のほっぺをつねっていた。

「……痛っ」

そう言えば、痛みが再現されているのを忘れてた。考えなしに思いっきりつねってしまった。

このゲームだけではないが、VRゲームのほとんどが五感は勿論の事、痛み、暑さ、寒さ、空腹などを、苦しまない程度に再現してくれる。

身体的な疲労等以外は一応シャットできるらしいけど、スリルが無くなってつまらないとのこと。

なんか、ここから繋がるスレ？で丁度話していた。

そう言えば、ああいう所ってどういった話をしてるんだろう。

インターネットも最低限しか使わせてもらえなかったので、どうしても疎くなってしまう。

なんか役に立つ情報、あるかな。

ーーーーーーーーーーー

【初心者】君達の悩み　お兄さん達に　話してみたまえウホッ【歓迎♂】

231:名無しの生産廃人

で、結局何の話なん？

つーかサブサイww誰だよこれw

232:名無しの迷子

えっと……納豆がどうとか

ヤベッ、安○さんと待ち合わせだ。

233:名無しの遭難

>>232違うだろwつーか迷子なってんなよww

そのまま掘られてこいw

234:名無しの騎士長

>>233いやお前更にヤバイからな？どこで遭難してんだよww

>>231確かイッチのライフポーションを誰が買うかだったよな？

235:追跡の変質者

え？　

始まりの広場にログインしてた美女の話じゃないの？

ああゆう真面目そうなのが……ヤンキーに……ぐふふ。なかなか……

236:名無しの初心者

あ、そういえば居ましたね。防具はバリバリ初期装備だった。見た目的に、多分『人間』だと思います。

確かにスゲー美人だった。クールな見た目の知的美人。

あと、変質者さん、GMコールしときました。

237:名無しの盗賊

>>236グッジョブ。

にしても、女性プレイヤーは珍しいな。このゲーム性別変えられないからネナベ居ないし。

そういえばなんでなん？

238:名無しの騎士長

>>237一日中やり込んだりする廃人のための処置らしいぞ。

ゲーム内の方が三倍時間が流れるのが早いから、こっちで女の体に慣れちまうと現実との違いでパニック起こすらしい。

何気良くできてるよな。

239:名無しの呪術士

ちょっと待て。

このゲーム、キャラメめっちゃ難しかった気がすんだけど。

240:名無しの迷子

！！ガタッ

241:名無しの孤児

ガタタッ

242:名無しの初心者

ガタタタッ

243:名無しのミサイル

ガラガラガッシャン！

244:名無しの騎士長

落ち着け変態ども。

後ミサイル大丈夫か。

つまり、どういうこと？

245:名無しの初心者

あの美人プレイヤーの正体の話じゃないでしょうか？

候補は、キャラメがめっちゃうまい人、またはランダム。まぁ、ランダムで美形になる可能性はか　な　り低いらしいですが。

で、色々な意味でそうあってほしいのが、

素顔がそれってことでしょうか。

246:名無しの発狂

うぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ！！

247:名無しの保護者

落ち着け。

そうであったらを考えると気持ちはわかるが、落ち着け。

始まりの広場だな？

保護しにいかなきゃ！

248:名無しのGM

フフフ(^ー^)

249:名無しの保護者

……＼(^o^)／オワタ

250:名無しの盗賊

さらば保護者。お前のことは忘れないよ。

251:名無しのGM

あなたも同罪です(笑)

252:名無しの盗賊

……エェ↑！？

253:名無しの初心者

……先輩。

ーーーーーーーーーーー

何の話をしてるのやら。

そんな美人、居たかな。

結構人いるけど、大体は男の人だし。

というから意外と下らないことばっかり話してるんだなぁ…

そういえば、初心者さんの『人間』で思いだしたけど、私の種族、どうなったんだろ？

「……見た目は、確かに人だよね」

腕や足も普通だし、初期装備(レア度標準)の革鎧の下にも、特に違和感は感じない。

そこまで気にする訳では無いけど、『人間』はやっぱり少しつまんない、かな。

とりあえず見てみよう。

視界の端に浮いているステータス掲示ボタンに意識を集中させると、ステータスが表示されるらしい。

アイナ

初心者(ビギナー)

レベル1/5

種族　劣竜人

HP 110/110

筋力Ｄ-

技量Ｄ-

俊敏Ｅ-

持久力Ｅ

魔力-Ｆ

知力Ｄ

適応力Ｄ

精神力-Ｃ

運Ｆ-

スキル

なし

種族固有スキル

『解放』

『進化』

あれ？人間じゃない。

『竜人』？ ……これは『獣人』とはちょっと違うみたい。

よくわからないのが、レベルの上限が設定されていること。そんなものは、wikiには載ってなかった。

バグ……はないか。

でも、レベル5っていうのは低すぎだと思う。

種族固有スキルの『進化』。これと何か関係あるのかな。

『解放』も含め色々とわからないことは多いけど、大丈夫。時間はまだある。

今は……2時半前か。

学校から帰ってきたのが2時過ぎだったから、大体10分くらいやったことになる。

時間が3倍の早さで流れるせいか、そんな感覚が全くないな。

7時には終わって、ご飯食べて、お風呂入らないとなぁ。寝る前にもう一回やろう。

宿題も……なるべくやっておこう。

まぁ約五時間、仮想世界(こっち)では十五時間もプレイできるんだから、気にしない。それまでに徹底的に検証しよう。

さて、まずは街で買い物をしてからだ。