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番外 後日談

ふとpvを見たら、40000を超えていました!

たいしたことはないとはいえ、完結した後も見てくださる人がいるのは嬉しかったので、これを書きました。


どうぞご覧下さい!

私は、乗り越えられたのだろうか。時たま、そう考える事がある。


深層心理にまで刻み込まれ、人格にすら影響を及ぼしたあの過去を、私は本当に乗り越えられたのだろうか、と。


晴さん達のおかげで、欠けた感情を取り戻すことができた私だけど、その辺はまだ実感がない。


今はまだ、影を潜めているだけかもしれない。また、ひょっこり顔を出すかもわからない。


だけど、これだけは言える。


「いってきます、お母さん、お父さん」

「いってらっしゃい、会奈」

「車に気をつけてな」

「……うん。わかった」


いってきますを言う、いってらっしゃいが聞こえる。そして……


「あっいなちゃーん!!」

「わっ……晴さん……びっくりするじゃないですか」


玄関を出ると、制服姿の晴さんが、背後から抱きついてきた。

びっくりした……心臓が先ほどの二、三倍の速度で脈打つのを感じる。


「そりゃ、驚かしたからね。行こ、会奈ちゃん」

「……はいはい、分かりました」


相変わらずの騒がしさだ。


……私、一応この人に救われたんだよね。


「どうなの? 今日から2学期だけど、気分は」

「不思議と悪くないです。以前は、本当に気と足が重かったんですけど」


何せ、ボッチで浮いていたからね。女子からは変な敵意を感じるし……居心地は最悪だった。


だけど、今は1人じゃない。


「あ、会奈さん、晴さん。おはようございます」

「あ、桐菜さん。おはよう」

「おっはー」

「私も、今日から学校なんです……ご、ご一緒させてもらってもいいですか?」

「もちろん」

「僕も良いですか?」


と、桐菜さんの後ろからひょっこり現れる鈴崎君。


「桐菜ちゃん、後ろ! 危ない!」

「きゃっ!」

「うぉぉいっ!」

「はは……」


一応、居るのはわかってたけど……言った方が良かったのかな。


「ほら、早く防犯ブザーを!」

「oh! I'm not 不審者! don't worry!」

「ん、20点。つまんない。ていうか、不審者くらい覚えたら?」

「あんたもわからんでしょう!?」

「suspicious person」

「ウソだろぉっ!」

「鈴崎君、晴さんは学校2位の学力だよ。無理だよ」


気持ちはわかるよ、鈴崎君。私も、初めて聞いた時は晴さんの正気を疑ったし。


「1位はいつもぶっちぎりで会奈ちゃんだけどねー。この前だって五教科249点だったし」

「凄い……ほぼ満点ですね……」

「満点逃した理由がうっかりで問題1つ抜かしちゃったからだし、実質満点だね」

「晴さん、個人情報です。やめてください」


私にプライバシーを下さい、晴さん。


「ていうか、鈴本君はなんでここにいるの? 君の学校隣町でしょ?」

「鈴崎です。駅がこっちですから。僕、電車で通っているので」

「へえ、どうでもいいわ」

「先輩から聞きましたよね!?」


この二人のやり取りは、もはや定番だ。見ていて楽しいからいいけど。


「で、話は変わるけどさ、最近『avil・anel』のゲーム人口が増えてない?」

「話変えないで下さいよ……でも、確かに始まりの街が凄いことになってたような」

「それだけ増えたのに、未だに大霊峰をクリアした人はいないんですね」


そういえば、大霊峰の一件で私達のパーティは有名になった。


あの、中ボスである『薄幸の少女』の緑の風。


どうやら、あれはとんでもないダメージを負うカウンターだったらしく、ゲーム内で一番体力の高いタンクでもかなり危ないレベルだったらしい。


それだけ『竜人』が強かったということなのだろう。運営はゲームバランスを考えた方が良いと思う。

あと、『竜人』が私しかいないなら、白竜じゃなくて黒龍にしてほしい。


「あ、じゃあ、今日私達で大霊峰再チャレンジしない!?」

「え"」

「いけます……か?」

「大丈夫! なんたってうちには会奈ちゃんが……」

「白竜にはなりませんよ?」

「えー、なんでー。可愛かったのにぃ」

「絶対嫌です」


あ、桐菜ちゃん、頷かないで。

本当に白は嫌だ。似合わないし。進化先に黒龍を選んだのも、そういう意味でだから。


「ま、それはともかく、私は本気でいけると思うよ。あれから、みんな結構レベル上がったでしょ? 鈴崎君ですら……何レベルだっけ」

「78レベルです!」

「わ、私も89まで上がりました」

「ほら、大丈夫だよ。じゃあ、今日18:00に私の店集合ね!」

「は、はい……」

「はぁ……」


私達って、本当に晴さんに振り回されてばかりだよね……










「キター!」

「大分久しぶりですね、ここ」

「いつ見ても、きれいですね……」

「…………」


私達は今、思い出の草原にいた。もう現れない、『薄幸の少女』と戦った場所だ。


たかがゲーム内の中ボスの設定。作られた存在。それに自らを重ねるのはおかしいのかもしれない。


でも、そう考えるには、あまりに私と似すぎていて……


「…………」


薄幸の少女が座っていた岩に、静かに腰かける。そして、雲1つない青空を見上げた。



──1つ……私と貴女は違うことがある。


私には、私を愛してくれる人がいた。優しく、親しく、接してくれる人がいた。


ただ……それだけ。


「会奈ちゃーん!」

「渡里さん!」

「あ、会奈さん」

「え?」

「何してるの! 早くいこ!」

「晩御飯に間に合わなくなるよ!」

「い、行きましょう?」

「…………」


……いつか言おう。ありがとうって。

私の感情を取り戻してくれて、私に勇気をくれて、私を救ってくれて、ありがとうって。


「……うん!」


今はまだ、照れくさいから……代わりに、取り戻してくれた笑顔を見せて。










私は、乗り越えられたのだろうか。時たま、そう考えることがある。


考えて、気づいた事がある。


両親が居て、家族の温もりがあったかくて。


みんなと会えて、みんなと話して、みんなと笑って。





──この時間が、何よりも大好き。

ご清聴ならぬ、ご清読ありがとうございました!



もしかしたら、会奈の学校生活なんかを書くかもしれません。

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