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24話

望んでいない胸アツ展開あり。

扉の先は、広大な平原だった。

ただし、先程まで登っていた『大霊峰』の姿はなく、ただ広い地平線が見えるだけ。


「広っ……」

「き、綺麗な場所ですね……」

「ここ、ホントにボス戦のフィールドですか?」

「そのはずなんだけどね……」


困惑しつつも先に進む。

何しろ周りに草以外なにもないので、まっすぐ進むのに苦労しながら、やっと1つの岩が目に入った。


高さ1メートル程の岩の上には、薄い青のワンピースを着た少女が片膝を抱えて座り込んでいる。


「まさか、あれ?」

「多分……」


予想外の相手に、思わずたじろいでしまう。

しかし、見た目はただの少女でも、確かにボスだ。

しっかりとカーソルは現れていて、名前の下には冗談のように長いHPゲージが表示されている。


Boss『薄幸の少女』


彼女は私たちを視界に捕らえると、全てを諦めたような儚い笑みを浮かべ、こちらに歩み寄ってきた。


「皆、さっきと一緒。私が『地砕斬』でダメージ与えてくから、ちょっと時間稼いで」

「はいっ!」

「がんばりますっ……」


ハルナさんの言葉を聞き、私は真っ先に突っ込んでいった。

防御が一番高いのは私だ。ここは私が様子を見るべきだろう。


私は、レベルアップによりBランクに乗った俊敏にものをいわせて少女に猛接近する。

走りつつ腰の刀を抜き、勢いそのままに突きを繰り出した。


少女は僅かに体を揺らしそれを避けると、手に風を創造し始めた。


『風魔法lv80』、『風神の勾玉』。


発動が恐ろしく早く、既に魔法が完成している。間に合わない。


そう思った瞬間、少女の腕にあった『風神の勾玉』が四散した。


ミミルさんを見ると、大杖(ワンド)をこちらに向けていた。


恐らく、今のは『補助魔法lvMax』で覚える『魔法解除(ディスペル)』。

いや、そんな魔法持ってたんだ。


とにかく助かった。


私は再び接近し、少女の腹部を切る。赤いポリゴンが宙に舞い、少女の長いHPが数ドット減る。


そこで、ハルナさんが少女の背後に現れた。


「『地砕斬』」


ようやく、目に見えてゲージが減少する。

しかし、削りきるにはあと七回はこれを当てなくてはならないだろう。


『地砕斬』の効果である一時スタンにより、今少女は行動不能(スタン)状態だ。


私は、『刀術lv3』の攻撃スキル、『居合・痺』を発動させる。

これは凄く単純で、lv1で覚える『居合い』に麻痺(パラライズ)を付加させただけの技だ。


うまくいけば、『拘束』というコンボができる。


「ナイス、アイナちゃん!『巨竜落とし』」


運よく麻痺状態になり、ハルナさんの硬直時間が解けたようだ。

ハルナさんは、『地砕斬』の時よりも長く力を溜め始めた。


「今っ……『熱線』っ」


出来た攻撃の隙間に、上手くミミルさんが魔法を放つ。『薄幸の少女』の体を熱線が貫き、赤い直撃エフェクトと共に、ゲージが数ドット減る。


「いくよっ」


そこで、目映いエフェクト光と共にハルナさんの特大剣が地面に叩きつけられた。


グッと、大きく体力が減り、ついに半分をきった。


その時。


『薄幸の少女』を中心に碧風が突然発生し、私たちを吹き飛ばした。

同時に体が切り裂かれていく。今度は視界の端のHPゲージが急減少し、レッドゾーンに突入した。


皆は?


どうやら、一時待避していた鈴崎君とミミルさんは被害が少ないようだ。

ハルナさんは、レベル800の体力に物をいわせ、直撃にも関わらず体力の減少は半分で住んでいる。


「アイナちゃん!」


体力がレッドゾーンに達すると、仕様で視界がぼやける。


すると、朦朧とした意識の中で、やけに機械的な声が響いた。


固有スキル『解放』が発動可能になりました。


あ、『解放』使えるようになったんだ。あの謎スキル、どんな発動条件なんだ?


色々と言いたいことはあるが、とりあえず発動してみよう。


固有スキル『解放』、発動。


すると一気に視界が晴れ、身体中からパキパキと聞き覚えのある音が聞こえる。


とりあえず、視線を右腕に滑らせると、腕にはびっしり白い鱗が敷き詰められ、指からは爪が生え始めていた。


視界の中に垂れ下がっている髪は白。恐らく、私は全身白なのだろう。


「…………」


なんとなく、ステータスを確認した。



アイナ


レベル23/40


種族 祖の龍神


HP 30/430



筋力A+

技量SS-

俊敏S-

持久力A+

魔力S-

知力B+

適応力A+

精神力B+

運F+



スキル


『体当たりlv2(7)』

『闇魔法lv4(9)』

『竜闘技lv--』


固有スキル


『解放』発動中

『進化』




私は、驚愕よりも羞恥が先に出た。


白とかめっちゃ恥ずかしい。しかも龍神って……竜人じゃないよ。


ちらりと、皆の方に目を向けた。


「アイナちゃんかわいー! 白似合うー!」

「ちょっ、ヤバい……」

「……凄い似合います!」

「何これ。これボス戦佳境の雰囲気?」



思わず柄にもなく突っ込んでしまったが、敵は待ってくれない。

碧風が既に目の前に来ている。


『解放』により2ランク上がった俊敏で一瞬で背後へ。

さっき見ておいた『竜闘技』のなかで、使えそうなものをピックアップ、発動。


「『滅竜脚』」


白いライトエフェクトを纏う回し蹴りが、残照を残して少女に直撃。強烈なノックバックと共に、グィッとゲージが減る。『地砕斬』ほどだろうか。


「凄っ。アイナちゃん何使った?」

「『解放』です。なんか、さっきの攻撃食らったら使えるようになりまして」

「なにその胸アツ展開」

「知りません、作者に聞いてくだ……っと」


ノックバックから復帰した『薄幸の少女』が、風の刃を放ってきていた。

それをバックステップで避けると、再び『竜滅脚』を放つが、流石に二度目は見切られ避けられた。


だが、私はすかさず次のスキルを発動。


通常スキルには使用後硬直するのだが、スキルの組み合わせによっては連続で発動させることができる。


『竜滅爪』。まぁ、ただのパンチに見えるのだが、直撃してみるとものすごい。パンチなので『地砕斬』ほとでは無いが、一人で与えるダメージとしては異常だ。


それはともかく、ついにHPバーは3割をきった。


すると、『薄幸の少女』の様子が変わった。

常に風を体に纏い、手には風の鎌。

巻き上げられた草葉が体に触れると、まるでカミソリで切った様に鋭く切断されていった。


「あれ、多分『桜花の狂姫』と同じやつだよ。もっと広範囲かつ高威力になってるけど」

「私、『解放』使っても体力だけは増えてないので、一撃加えた瞬間乙りますよ」

「私がやりたいとこなんだけど、持久力が限界来ちゃってさぁ…暫く戦えないんだよね。アイナちゃん、回復しちゃダメなの?」

「多分、体力が三割以下じゃないとこの発動が切れます」

「……私も無理です。流石にそこまで高威力の魔法は持ってません。それに、多分魔法弾かれると思います」


そう言って先程の熱線を放つが、確かに風の鎧に弾かれてしまった。


「マジかー、ユーキ君は論外として、どうしよっか……」

「その通りですけど凹むんでやめてください」


そうなると、私が自爆覚悟で最大の攻撃叩き込むしかないのか……

基本的にほぼ最強なカウンターには、1つだけ弱点がある。


それは、強すぎる攻撃を受けると反撃が弱まること。


ーー例えば、100まで攻撃を跳ね返すカウンターに、十の攻撃を与えると50返ってくるとする。

そこに120の攻撃を与えると、返ってくるのは30のみとなるのだ。



だから、あそこに私の最大の攻撃を叩き込めば、もしかしたら乙らずにすむかもしれない。

他には策はないし、こうするしかないよね。


その(むね)を伝える。


「まぁ、私が居ない以上、ダメージ与えられるのはアイナちゃんしか居ないしね。反対はしないよ」

「じゃあ、僕がヘイト集めて隙を作るよ」

「……では、私が妨害魔法で動きを阻害します」

「ん、ありがと」


どうやら、みんなも策が浮かばないようだ。

この技は長いチャージが必要だから、鈴崎君の協力は嬉しい。


「『スラッシュ』っ!」

「『クレイ』」

「頑張れー♪」

「ハルナさんももなんかしましょうよ!」


なにか喧騒が聞こえるが、気にしない。


目を閉じ集中、集中。


私の体全体に白い光が纏う。それはだんだんと形を成していき、巨大な竜へと姿を変えた。


「『憑依・祖龍神』」


これによりさらにステータスがワンランクアップ。

そして、この状態でしか使えない『竜闘技』を発動。


「『祖龍神の滅竜炎』」


私が手をかざすと、白竜を模した光が首を引き、ブレスの予備動作に入る


『薄幸の少女』は動かない。また弾けると思っているのだろうか。


次の瞬間、白炎が少女を包んだ。弾かれない。

HPゲージが一瞬にして0になり、右端から崩れていく。


それに伴い、『薄幸の少女』の体も無数のポリゴンに姿を変えていった。


当たり前だが『薄幸の少女』に表情の変化は無く、未だに何もかも諦めたようなの笑みを浮かべている。


なのに、戦闘開始前よりもなんとなく嬉しそうに見えたのは、私の気のせいだろうか。


「…………」


HPゲージを確認。ほんの数ドット、数値にして3残っていた。

とりあえず一安心。


先程まで『薄幸の少女』がいた場所を見ると、可愛らしい虹色の花の髪飾りが落ちていた。

ドロップ品だろう。


それを拾い、詳細を見る。

水晶花の髪飾り


要求能力値…無し


思い出の草原に1輪だけ咲く、『水晶花』を使用した美しい髪飾り。


『薄幸の少女』が愛用していた。


『薄幸の少女』は幼い頃に親に捨てられ、行く先々で暴行や罵倒を受ける、幸薄い少女だった。


彼女は絶望し自ら命を絶とうとするが、風がそれを許さず、誰かに殺されようとしても風の刃が自分を守る。


彼女は全てを諦め、思い出の草原で自らの死を待ち続ける……ずっと独りで……



……私と、同じだ。

同じように親の愛情を受けず、感情が壊れてしまった。


最後、彼女が私に殺される刹那、諦めを含んだ微笑が嬉しそうな笑みに変わった意味、すべてわかったよ。


自分と同じ境遇の人物に殺される、いや、彼女からしたら救われる。それが嬉しかったんだと思う。


ーーでも1つ、違うことがあるとしたら……


不意に、腹部に強い衝撃を感じた。

一瞬息がつまる。


見ると、


「ハルナさん……」


ハルナさんが抱きついて(タックルして)いたのだ。


「やったねアイナちゃん! 『大霊峰』のボス、倒しちゃったよ!」


すると、その後を追うように、鈴崎君、ミミルさんの順にこちらへ駆け寄ってきた。


「凄いじゃんアイナさん! 最後の何あれ!」

「……お、おめでとうございますっ!」

「ホント、凄いよ!」

「…………」

「? どうしたの?」

「あっ、いえ。なんでも……」


なんだろう、胸がムズムズして、鼓動が高鳴る。

私はこの気持ちの名前が、まだ分からなかった。

『解放』……ボスフィールドかつ、HPが三割を切った場合のみ発動可能。


3分間、運以外のステータスが4ランク上がり、スキルレベルが5上がる他、『竜闘技』スキルを取得する。


死亡、またはHPが三割以上になった瞬間効果が消え、全てのステータスがF-になる。

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